大西配列をたくさんの人がチャレンジしているので、
色んなつまづきが各所で散見される。
最近よく見るのは、
「qwertyが余りにも自分の中に残っているから、
母音はqwertyの並びにしようかな」
というやつだ。
絶対やめた方が良い。
母音はローマ字配列の骨格であり、
そここそqwertyの欠点で、
それを温存することは「改良」にならないからだ。
ローマ字で最も使うキーはなにか?
Aだ。
12%も使う。
10本指の1/10を超えて使う。
これを最弱の左小指に当てているところが、
qwertyの最大の欠点だと僕は考えている。
なので、ローマ字系新配列において、
Aを左小指に置いている配列は、
僕はあまり評価していない。
ColemakもEucalynもonikもね。
タイピングゲームでスコアは出しても、
長文で左小指を壊すだろう。
日英共用といえど、
英語でもAは三番目に使う母音。
微妙なラインだ。
たとえばDvorakはA小指で、
日本語にはツラいと考える。
実際、ATCで優勝したnaoさんのDvorak改は、
左小指のAを最強の中指に置いていて、
だから速くスムーズで楽なわけ。
長文においても疲労を避けられるから、
長いこと使えるのだ。
この、
「強い指によく使うキーを、
弱い指にあまり使わないキーを」
こそが、
新配列の工夫の初手であり、
qwertyの母音温存は、
その初手ごと無視しているのだ。
それは、「qwertyの慣れから抜け出す苦痛を和らげたい」
という麻薬に負けているのだね。
それほどに、
「慣れたものを変えるのはツラい」ということだ。
猫は周囲の環境に慣れているため、
引越しが最も猫にストレスになるという。
皆さんも猫と暮らすときは引越しを避けましょう。
だけどこの苦痛は、
抜けなければならない試練と考えるべきだ。
具体的な、
qwertyの抜けを加速するライフハックはない。
抜ける力は根性のみである。
つまり、
「左小指Aを抜けて、もっと良い位置にAを置く」
ことの合理性を、納得するしかないのだ。
納得して、手が動くまで練習するしかない。
ここの「精神で肉体を越える」ことを、
昭和が終わってやめたので、
令和の子達はあまり接したことがなく、
人生で初めてくらいに直面してるかもしれないのよね。
根性論は古いけど、
根性でしか超えられない領域がある。
たとえば麻薬のフラッシュバックを耐えて、
麻薬を抜くのは相当大変らしい
(だから再犯しやすく、再犯率はわりと高い)。
タバコを止めるのも似た感じだ。
僕は一時期コーヒー中毒で、
いったんそれを抜こうとしたとき、
一週間激しい頭痛に耐える必要があった。
これらは、根性で抜けるしかない。
「精神でその正しさを理解した上で、
肉体の拒絶反応をコントロールして、
より良き肉体の反応に組み替えていくことを、
持続的に長期的にやる」
しかないんだよね。
これは根性以外で克服する手段がない。
根性を維持する力は「正しさというモチベ」
しかないのよ。
スポーツとかコーチがいて、
コーチがある程度できる人で、
それしか方法論がなくて、
でもコツコツやって結果が出れば、
なるほどと思えてやれるようになる。
だけど配列を変える時はコーチがいないのよね。
だから監視の目(客観的な目)がないときは、
つい「自分流で楽をしようとする」のよ。
ニコチン断ち、薬断ち、コーヒー断ちをするときに、
「一回だけやってもいいでしょ」と、
たった一回でこれまでの苦労をフル台無しにするのは、
よくあることなんだよね。
コーヒーは一週間でいいけど、
麻薬は何年もかかるらしい。
離脱症状、禁断症状に耐えなきゃならない。
そんなに根性が持たないから、再犯率が高い。
qwertyが厄介なのは、
新配列を習得しようとするときに、
他の業務でもqwertyを併用する必要があることだ。
僕はqwerty断ちを最低3日、
できれば2週間して欲しいと考えている。
2週間qwerty断ちをできたら、
必ずqwertyの母音は忘れられる。
2週間を13日にしていい?12日でもいい?
7日でもいい?と、少しずつ言い訳をしていくと、
その分2週間で出る効果が遅れていく。
そうすると「大変だった」「できなかった」
になりがちなんだよね。
学生なら2週間は余裕。
社会人は無理。
だから社会人ほど新配列を使わなくなる。
そして社会人は会社で使うPCを会社で使うので、
会社で使うのはqwertyになるという、
悪循環は切れないんだよ。
だから、会社に行かない、
自宅PCのみの2週間を作ってください。
在宅できる人、休暇を取れる人が、
新配列に近づけます。
今年の年末年始は、それをやりやすいスケジュールになっている。
わりと狙い目です。
ただねー、例の動画の興奮が、
そこまで持続するかなーって思うのよね。
わーっとやれるのがいいからねー。
なので、
「興奮を使うのではなく、
正しいという信念でやる」のがいいです。
痩せた方が正しいのはわかってるので、
ダイエットは信念を持たないとできないです。
興奮だけで持つのは3日とか1週間くらいだし。
もう一つ注意することは、
習得期間のあとに、混乱期がやってくることを、
覚悟した方がいいこと。
つまり、新配列を習得するのがゴールではなくて、
qwertyが激落ちしたのを、
ある程度リハビリしなければならないということ。
(マッスルメモリーが残ってるので、復活はします)
このリハビリが結構しんどくて、
新配列とqwertyが混ざるのよね。
でも安心して。これはいずれ分離できる。
この混乱期も、ある程度したら抜けられます。
人によるけど、+2週間はあると思って。
そして、
ここまで耐えた人にご褒美があります。
これを一回通過した人は、
「別の配列の習得が、倍くらい楽になる」
という経験則が知られているのだ!
つまり、
「旧配列の癖を抜き、
新配列をマスターし、
旧配列と併存する」
という行為自体をマスターしたことになるのだ!!!
だから、次やるときは2週間もいらなくて、
1週間でいけるよ。
僕が配列沼を彷徨っていたとき、
何配列もマスターしては変えてたんだけど、
最後の方は新JISを3日で打てるようになった。
それくらい、
「新配列をマスターする能力」が、
上がるんだよね。
人付き合いの上手い人が、
ますます人付き合いが上手くなっていく、
みたいなことに似ている。
自分にない能力を0→1で作ることは難しいが、
1→100は簡単になることに似ている。
なので、
「qwertyを抜く」という苦痛は、
0→1の苦痛だと思ってください。
qwertyは麻薬なのだ。
離脱症状が強く、
元に戻す吸引力がある。
(社会的要請も含めて)
「なにやってんの」と、
周囲に理解されない辛さも、
離脱症状のひとつに数えられる。
例の動画が出る前は、
隠れキリシタン並みに辛かったろう。
僕がコーヒー断ちをしたときは、
3日は強烈な頭痛がして、
1週間くらいは頭の働きが鈍かった。
その間ずっと強炭酸水を飲んでごまかしていた。
その後コーヒー一杯飲んだ時の、
覚醒力のすごさにびっくりした記憶がある。
こりゃ麻薬なんだな、
利休が茶道とか言ってたのは、
コーヒーのない世界に抹茶のカフェイン中毒を増やす作法だったんだな、
と理解できた。
麻薬の強さを知ろう。
麻薬とは、qwertyで覆われた社会そのものだ。
麻薬は良くない。だからqwertyもダメ絶対。
麻薬はあなたを破壊する。
qwertyもあなたの左小指を破壊する。
僕は破壊されたことがあり、qwertyに恨みを持っている。
そういう意味でいうと、
僕らは麻薬を抜く施設(ダルク)の人たち、
ということもできるね。
ちなみにダルクのスタッフは、
ほとんどの人が元麻薬中毒者で、
抜けた経験を持つ人たちなんだってさ。
へえ。
オウムの洗脳を抜けるための施設、
マッサージ師やインチキ気功師の洗脳を抜ける為の施設、
抜け忍の為の施設、
なんかもあるかも知れない。
アルコール依存症を抜ける為の施設はある。
ホームレスという悪循環を救う宿泊所もある。
だから本気で、
qwertyダルクを作ってもいいかも知れないくらいさ。
入院期間は一ヶ月。
前半の2週間はqwerty断ちと新配列マスター。
後半の2週間は、新配列とqwertyの併存。
毎晩集まって飲み会や愚痴会やれば楽しいかもね。
まあ2週間qwerty断ちできれば、
誰でもダルクだ。
その環境をつくれるかが、
qwertyを抜けられるかの分水嶺になるだろう。
qwertyは合理的ではない。
最も使うAを最弱の左小指で取る。
同程度に使うBSとエンターが遠く、これも準最弱の右小指。
その右小指で、はるか離れた「ー」を取る。
(「ー」は外来語で最頻出文字)
ホームポジションFJはほとんど使わない。
N、NN、NNNの使い分けが必要。
ちなみに母音の頻度はAIO、子音の頻度はTKNがトップ3。
(この6がどこにあるか、qwertyと新配列で比べてみたまえ)
日本語でよく使う言葉がqwertyで打ちやすいわけではなく、
(たとえば「わたし」)
日本語であまり使わない言葉がqwertyで打ちやすいことがある。
(たとえば「じじ」「じょじょ」)
スムーズに打つためには、標準運指を離れて改良する必要がある。
これらを、
理屈でダメだと理解して、
新配列のよさを理屈で正しいと思えたら、
2週間のqwerty抜きは、
根性で突破できる。
ブラインドタッチとは神経系統に運動を覚えさせることで、
これは回数に比例することが知られている。
結局「最近の回数の多い方」が身に染みつくのだ。
回数を増やすには、結局は根性しかない。
どんなに分析しても、継続は意思でしか維持できない。
維持しやすいライフハックは多少あるけど、
大部分は継続する意思でしか引っ張れない。
なぜならライフハックは受動的怠惰であるが、
継続する意思は主体的能動的だからだ。
神経は、主体的能動的運動を、最適化するように再編成される。
それを日本語で根性というのさ。
根性を保つのは、信念や正しさだ。
まあ、麻薬を抜いたり天皇崇拝を抜くよりは、
簡単じゃないかね。
2024年12月04日
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