2024年12月11日

【薙刀式】左右交互打鍵は最善運指ではない

Dvorakや左右母子分離行段系は、
基本左右交互打鍵だ。

例の動画以来、
「左右交互こそ速いのだ」と誤解してる人が散見されるので、
それは次善策だぞ、
という話をしておく。


打鍵には大きく二つある。
同手連続と左右交互である。

そして同手連続の中には、
良運指と悪運指がある。

左右交互の中には、
良運指と悪運指があまり差がない。
(でもたとえば右小指→左小指なんかは、
左人差し指→右人差し指より遅いだろう)

なので、大雑把にいうと、

同手連続の良運指
>左右交互
>同手連続の悪運指

という関係性が成り立つ。


で、Dvorakや行段系は、
「左右交互をメインにすることで、
同手連続の悪運指を回避した」配列である、
といえる。

同手連続の良運指を使えてないのだ。
その代わり悪運指も使う必要がない、
という、いわば「丸い」方式なのよね。


それをわかっている配列設計者は、
「左右交互はリズミカルに打てる」から良いとする。
決して「速い」とは言わない。

ここを短絡してしまう人が、
「左右交互は速い!」となってしまうのだろう。



同手連続のうち良運指は、
アルペジオ運指である。
JK、JI、JO、IJ、HI、.,などなどだ。

右手の例を挙げたが、左手も同様だ。
片手連続のうち、隣り合う指(など)で、
隣り合う(とは限らないが)キーをタランと打てるもの、
くらいのゆるい定義である。

僕の手による900連接(30キー×30キー)によれば、

右手アルペジオ>左手のごく一部のアルペジオ
>左右交互>片手連続の悪運指

のような関係性が成り立つ。

片手連続は、
良運指と悪運指でバラツキが大きい。

なので、
悪運指を追放するために、
平均的な左右交互をメインにして、
その代わり結果的に良運指は使わない、
というのが、
Dvorakや左右分離行段系の設計思想なわけだ。


Dvorakはタイプライターの為に生まれた配列だ。
物理ハンマーを叩きつけて印字しなければならないので、
その押下圧はピアノ程度には重かったと想像される。
ピアノは55〜60gあたりらしいが、
映像で見る限りガシャガシャとやるタイプライターは、
もう少し重めに見える(僕は打ったことない)。

なので、アルペジオ打鍵は重たいキーでは難しく、
左右交互の方が体重移動がやりやすかったのでは?
と予想している。

アメリカ海軍の調査では、
熟練したqwertyとDvorakでは速度に大差がなかった、
となっているが、
Dvorakが主張すべきは、
微分的な速度ではなく、
積分的な疲労蓄積のなさとか、
習得難易度であるべきだったと考える。
熟練者ならなんでも終端速度になるしね。


だがこの左右交互打鍵は神話的になり、
JISカナでも意識された
(濁点が右側に、濁音になるカナは左側に多い)
経緯がある。
新JISでも同様だ。

もっとも、設計時の重たいキーのキーボードでは、
アルペジオより左右交互の方が楽だったかも知れない。


さて現代だ。
HHKBは45gだし、Nizは35gだし、
僕の自作キーボードは15g(アクチュエーション比較)だ。

こうなったら体重をかけることは関係なく、
チャラっと撫でればよいので、
アルペジオの方が速くて楽だろう。

実際の僕の測定でもそのような結果が出た。

勿論、打ち手の癖や得意は大分異なる可能性があるが。



アルペジオ打鍵を利用するのは、
新配列では比較的最近の出来事のように思う。

飛鳥配列、新下駄配列、薙刀式が、
アルペジオを主張しているくらい?

もちろん、
アルペジオを重視すると、
同手連続の悪運指が増える可能性もあるため、
注意深くカナ並べをしなければならない。

なので、
実は左右交互打鍵は、
「設計者に楽させる」でもあるんよね。


新JIS設計時は、
連続しにくいカナ同士にグループ分けして、
第一を右手に、第二を左手にならべれば、
同手連続をなるべく回避して、
左右交互打鍵をなるべく増やせる、
という設計手法であった。

たしかに平板的に新JISは打てる。
同手連続による上振れも下振れもない、
良質な配列と言える。

だけどね、
それじゃアルペジオをドブに捨ててるよね、
と僕は思うわけだ。



ローマ字を母音と子音にわけ、
左右に分離すれば、
ほとんど左右交互になる、
と考えるのは、これまでの行段系の主たるアイデアだ。
韓国語の2ボル方式もそうらしい。
Dvorakの子孫は沢山いるわけで、
左右母子分離は、普遍的なアイデアだとすらいえる。

だけどqwertyも全然負けてなくて、
じゃあ何がqwertyの優位性なのよ、
と考えた時に、アルペジオがあるから、
というのは一つの仮説になっている。

それを鑑みて、母子を左右分離しない、
混在型のローマ字配列「とかげ配列」なるものも生まれたが、
その後を聞かないので、
これがどんだけやるのか知りたいのよねー。


アルペジオを重視する流れは英語配列にもあって、
Arensitoなんかはそうなんだけど、
誰かやってないのかなー。



というわけで、
左右交互打鍵とアルペジオは対立概念になっている。

「大西配列は左右交互だから速い!」
なんていう早合点が結構見られるので、
いやいや大西配列の専売特許でもなく、
左右交互だから速いはないよ、
ということをここに記しておきたい。
posted by おおおかとしひこ at 19:58| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック