2024年12月13日

【薙刀式】カナの構造

左右母子分離型ローマ字に比べて、
カナ配列はパッと見構造が分かりにくい。

一見ランダムにカナが並んでて、
qwertyみたいに見えちゃうのかも知れない。
だから行段系に比べてとっつきにくい可能性がある。

慣れた人なら見ればわかるんだけど、
パッと見で分からない人に、
薙刀式の「構造」を示そう。


ローマ字は、
母音/子音に大きくわかれる。
そして子音は、
清音/濁音/半濁音にわかれる。

半母音Yを、子音に入れるか母音に入れるかは、
配列によって異なる。

あと、長音と句読点ね。

この辺のパーツを見れば、
ローマ字配列は大体構造を解読できる。

たとえば大西配列は、
左手に母音、句読点、長音を置き、
右手に子音を並べる。
そして清音の下に濁音があり、清音の上に半濁音がある、
大変美しい構造をしている。


他の配列がなぜ視覚的に美しい構造にしないか?
にはさまざまな主張があって、
最も大きな理由は、
「指によって器用度や耐久力のバラツキがあるから」だ。

美しい構造の配列は、せいぜいそれを保ったまま、
中央指に頻度の高いものを寄せる、
という程度しかできないが、
もっと効率化するなら、その構造をバラしてまで、
指に応じた配置にするべきだよね。
多くの行段系はそうしている。

逆に、大西配列は、構造の美しさでアイデンティティを保っている。
強い構造は美しいという、デザイナーらしい発想だ。

(逆に現実の指は、思想ほど美しくない、
と考えるのが泥臭い派の思想だね)



さて本題のカナ配列である。

カナに構造があるか?という話だ。
母音や子音のような、分かりやすい構造はない。
だからランダムに見えるんだろうね。

あいうえお順で並べるのは、
ローマ字をアルファベット順に並べるくらい意味がない。
だからナンセンスである。
(そのナンセンスさがJISカナだ)


第一の構造が「頻度」だ。
これは直感にかなり反する。

 いうんしかとのたてな

がトップ10だが、
この順でどこにどんなカナがあるかなー?
と探してもなかなか構造を見つけられない。


カナ配列の構造を読むには、
第二の構造「連接」を見るのが良い。

二連接頻度トップ10は、

 ょう、てい、しょ、って、ゅう
 して、ない、かい、よう、こう

である。拗音系が多いんだねえ。
これも直感にかなり反する。

これを順に良運指に埋め込んだのが新下駄なのは有名だ。
だから新下駄は「頻度順二連接配列」の完成形である、
と僕は考えている。
パッと見の構造はよくわからんが、
よく二連接構造を調べるとオオッてなると。



で、ようやく薙刀式の構造だ。

薙刀式は二連接をアルペジオ(隣の指で連続して打ちやすい同手二連)に、
織り込む。
そしてその二連接とは、
頻度順ではなく、
「よく使う言葉のフレーズ」だ。

左右の手を見てみる。

・・てし・ ・・るす・
・・と・・ ・あいう・
・・・こ・ ・な・・・

右手に「ある」「ない」「する」「いう」がいる。「なる」もね。
左手に「して」「こと」がいる。
頻度を考慮にいれつつも、
分かりやすい「日本語のパーツ」があることに気づく。

もう少しカナを増やしてみよう。

・きてし・ ・・るす・
・けと・っ くあいう・
・ひ・こ・ たなんられ

右手は「くる」「たい」「なん」「られ」が増えた。
「たら」「だれ」「あれ」「れる」「られる」もだね。
(濁音同置なので「た」「だ」は同じ運指)

左手は「てき」「きて」「とき」「けど」「ひと」「って」
が増えた。
左右は残念ながら非対称だ。
日本語は左右対称に打てるようになってないからだ。
(これを左右対称になるようにする新配列も、
構造としてはありえるね)


第三段階までいくと、薙刀式の基本構造がわかるかな。

・きてし・ ・削るす・
・けとかっ くあいうー
・ひはこそ たなんられ

右手は「削」(BS)がある。
ホームキーを「あ」という第一音にして、
その隣に削除を置くのは僕の強いこだわりだ。
鉛筆と消しゴムを隣に置くのである。
書くことと直すこと(ミスの修正ではなく消すことで言い換えること)は、
同一で並行するべき、という思想だ。

また「ー」は全カナ頻度では下位なのだが、
カタカナ語に限れば最頻出という変わった性質がある。
なので頻度的には小指でよく、
しかし打ちやすい場所にあるのも薙刀式の特徴。

左手を見てみよう。
か、が、て、で、と、は、ば
と重要な助詞が左手にある。
これは、薙刀式が「左手で繋ぎ、右手で語尾を書く」
構造になっているから。
「左の前手で相手の武器を捌き、
右の後ろ手で突いたり斬ったりしてトドメをさす」
という薙刀の武術的な術理と一致する。

なので、左手につなぎの助詞が多く、
右手に語尾のためのウ段カナ(動詞終止形)がある、
という構造になっている。

あと、「そ」が増えたが、
指示代名詞、これ、それ、あれ、どれ、だれ、
あたりがシフトカナを使わないのも薙刀式の特徴だね。


これらのパーツは、
よく使うものではあるが、
頻度とは厳密には関係ない。
僕が恣意的に選んだものである。
ほかのパーツで組むことも可能だと思う。

だけど「日本語でよく使うパーツをアルペジオで組み合わせて、
その他便利パーツの運指を使いやすくする」
ように考えたカナ配列は、
今の所薙刀式だけなんよね。

(大元は飛鳥配列にその思想があるけど、
飛鳥は複雑すぎて全貌が把握できない、
ミノタウロスの迷路みたいになっている)


このへんが、
ただ頻度順に設計した先行するカナ配列に比べた、
薙刀式の優位点だ。
書くときに書きやすいのだ。
あのパーツどこにあったっけ、ああここだ、
とフレーズごとに取り出しやすくなってるんだね。

もちろん、
このせいで100%の効率性からは落ちている。
また、パーツ選定に恣意性があり、
別の選定パターンもあり得る。
別のボキャブラリーで書く人もいるだろうし。

だけどかなりの部分をカバーしてるから、
僕の文章は読みやすいはずだ。

そこは配列の個性として認めるとして、
大西配列のような数学的な解ではないものの、
現実的な美しさを備えてることが、
見えてくるのではなかろうか。



実は、
薙刀式の構造として最も美しいのが、
清濁小拗外の「全て同置」であり、
これは薙刀式しか実現してないのだが、
カナ配列の深いところに入るのがこの項の目的ではないので、
省略する。

大西さんは、
数学的な整理を用いて世の中を整理するのが好きなデザイナー、
という感じがする。
大西配列もその特徴がよく出ている。

僕は、
日本語というのはもっとカオスな言語だと考えていて、
料理みたいなぐちゃぐちゃだけど秩序のあるもの、
のように考えている。
だから、
それを切り分けたり煮込んだりするときの、
道具が取り出しやすいように、
整理したのが薙刀式(武器の中で最強)、
という風に考えている。
posted by おおおかとしひこ at 18:36| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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