たとえば、
「かの怪盗アルセーヌルパンの孫」という設定で、
あなたはどんなキャラをつくるだろう?
ルパン三世みたいな飄々とした憎めない女好きをつくれるか?
つまり、生まれや出自は、
キャラクターの「いま」をつくらない。
ルパン三世の性格は、
生まれ持った性格もあるだろうが、
それまでの人生で経験したことの影響もあろう。
不二子ちゃんとなんかあったんだろう、
的な大人の感じもいいよね。
で、
「怪盗アルセーヌルパンの孫」という設定が効くのは、
「スキル」なんだよね。
盗みの技術や大胆な計画など、
泥棒としての天性が設定なのだ。
だからキャラクターに、
性格とスキルがあるとしたら、
スキルしか大元の設定が効いていないことに注意。
つまり、
どういう性格で、
どういう喋り方で、
どういう今の感じかは、
設定からは生まれない。
動かしていく時にきまる。
多分だけどモデルがいたはず。
ジャンポールベルモンド的な人だったはず。
同様に、
「銭形平次の○代目」という設定からも、
銭形のようなうるさい、
いつも怒ってるように見える実直な昭和親父は出てこない。
(僕はいつもいかりや長介を思い出す。
実写版があればやってほしかったくらいだけど、
うまく踊る大捜査線でやってくれたね)
ここでも「目を引く設定」と、
キャラクター性は関係をなくしている。
これはとてもおもしろい例だ。
出自と立場から想像されるキャラクター像と、
実際のキャラクター像を、
全然変えているわけだ。
アルセーヌルパンの性格はよく知らない。
原作を読んでないこともあるが、
きっと冷静沈着で大胆で綿密な人なんだろう。
それを期待していると、
ルパン三世の真逆の剽軽さに裏切られる。
銭形平次の性格はよく知らないが、
きっと真面目なのだろう。
銭形警部は少しそれを引き継ぎながらも、
「ルパーン!」と大声を出すキャラクターへと強化されている。
初代石川五右衛門がどういう性格かも不明だから、
五右衛門の性格は新しく作れただろう。
寡黙でまたつまらぬ物を切ってしまったという、
よく考えてみるとど変態の侍は、
泥棒で釜茹でされた石川五右衛門の性格ではない。
人間性と出自を異らせるとおもしろい、
ということがここから理解できよう。
社長だからといって、
偉そうにしてる太った人ではなくて、
腰の低い痩せた面白い人だったり、
筋肉を鍛えるのが趣味のニコニコしてる人だったり、
TシャツGパンの普通の若者だったり、
色々と変えていいんだよ。
典型的な「○○」という設定をつくってみて、
典型的な○○像をつくってみて、
それを逸脱した別の人間性をつけてみると、
面白くなるに違いない。
設定だけつくってもキャラが動かないのは、
人間性を考えていないからだ。
設定と人間性をつくってもキャラが動かないのは、
目的と動機がないからだ。
そして物語に出てくるキャラは、
必ず目的のために行動する。
行動した先の成果を求める強烈な動機があり、
失敗した時のリスクはとんでもないものがある。
そのエッジにいつも立っていて、
人間性で人とやり取りしながら、
出自のスキルを使うのだ。
つまり、キャラクター造形の順番と、
観客が触れているものは、逆の順なんだね。
僕は大体観客が触れる部分、
目的と動機と行動からつくる。
そして人間性をつくり、
最後に出自設定を考える。
過去や経験などをね。
これをボトムアップと考えると、
下手な人はトップダウンで作ってしまうのだろう。
だからキャラクターが生き生きする前に、
うまくいかないのではないか。
キャラクターはもっと柔軟につくってよい。
面白い外枠(出自)がつくれたら、
そこからルパン三世を思い出せばいい。
大抵出自と真逆の人間性があるとおもしろくなるよね。
2025年04月04日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック