2025年04月04日

設定とキャラは違う

たとえば、
「かの怪盗アルセーヌルパンの孫」という設定で、
あなたはどんなキャラをつくるだろう?
ルパン三世みたいな飄々とした憎めない女好きをつくれるか?


つまり、生まれや出自は、
キャラクターの「いま」をつくらない。

ルパン三世の性格は、
生まれ持った性格もあるだろうが、
それまでの人生で経験したことの影響もあろう。
不二子ちゃんとなんかあったんだろう、
的な大人の感じもいいよね。

で、
「怪盗アルセーヌルパンの孫」という設定が効くのは、
「スキル」なんだよね。
盗みの技術や大胆な計画など、
泥棒としての天性が設定なのだ。

だからキャラクターに、
性格とスキルがあるとしたら、
スキルしか大元の設定が効いていないことに注意。

つまり、
どういう性格で、
どういう喋り方で、
どういう今の感じかは、
設定からは生まれない。

動かしていく時にきまる。

多分だけどモデルがいたはず。
ジャンポールベルモンド的な人だったはず。

同様に、
「銭形平次の○代目」という設定からも、
銭形のようなうるさい、
いつも怒ってるように見える実直な昭和親父は出てこない。
(僕はいつもいかりや長介を思い出す。
実写版があればやってほしかったくらいだけど、
うまく踊る大捜査線でやってくれたね)

ここでも「目を引く設定」と、
キャラクター性は関係をなくしている。


これはとてもおもしろい例だ。

出自と立場から想像されるキャラクター像と、
実際のキャラクター像を、
全然変えているわけだ。

アルセーヌルパンの性格はよく知らない。
原作を読んでないこともあるが、
きっと冷静沈着で大胆で綿密な人なんだろう。
それを期待していると、
ルパン三世の真逆の剽軽さに裏切られる。

銭形平次の性格はよく知らないが、
きっと真面目なのだろう。
銭形警部は少しそれを引き継ぎながらも、
「ルパーン!」と大声を出すキャラクターへと強化されている。

初代石川五右衛門がどういう性格かも不明だから、
五右衛門の性格は新しく作れただろう。
寡黙でまたつまらぬ物を切ってしまったという、
よく考えてみるとど変態の侍は、
泥棒で釜茹でされた石川五右衛門の性格ではない。


人間性と出自を異らせるとおもしろい、
ということがここから理解できよう。

社長だからといって、
偉そうにしてる太った人ではなくて、
腰の低い痩せた面白い人だったり、
筋肉を鍛えるのが趣味のニコニコしてる人だったり、
TシャツGパンの普通の若者だったり、
色々と変えていいんだよ。

典型的な「○○」という設定をつくってみて、
典型的な○○像をつくってみて、
それを逸脱した別の人間性をつけてみると、
面白くなるに違いない。


設定だけつくってもキャラが動かないのは、
人間性を考えていないからだ。

設定と人間性をつくってもキャラが動かないのは、
目的と動機がないからだ。

そして物語に出てくるキャラは、
必ず目的のために行動する。
行動した先の成果を求める強烈な動機があり、
失敗した時のリスクはとんでもないものがある。
そのエッジにいつも立っていて、
人間性で人とやり取りしながら、
出自のスキルを使うのだ。


つまり、キャラクター造形の順番と、
観客が触れているものは、逆の順なんだね。


僕は大体観客が触れる部分、
目的と動機と行動からつくる。
そして人間性をつくり、
最後に出自設定を考える。
過去や経験などをね。

これをボトムアップと考えると、
下手な人はトップダウンで作ってしまうのだろう。
だからキャラクターが生き生きする前に、
うまくいかないのではないか。


キャラクターはもっと柔軟につくってよい。
面白い外枠(出自)がつくれたら、
そこからルパン三世を思い出せばいい。
大抵出自と真逆の人間性があるとおもしろくなるよね。
posted by おおおかとしひこ at 09:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック