分るところと、分らないところのバランスを取ること、かな。
よくないタイトルの例を考えるとわかる。
「秋の遠足」という作文は、
内容はみんな知っているから、よくないタイトルだ。
100%ネタバレということだ。
逆の0%の情報量のタイトルは、
案外映画にも多い。
es、THX1138、ガタカは、
よくないタイトルの典型例。
最近のカタカナ英語そのままのタイトルもよくない。
エクスペンダブルズとか情報量0だ。
まだ「特攻野郎Eチーム」とかのほうが分かるわ。
よいタイトルは、
ほどよい謎を残して、
想像の余地があること。
「風の谷のナウシカ」はちょうどいい。
ビジュアルも浮かぶし、
「ナウシカ」という異国の響きに謎がある。
「ロッキー」はよくない。
ボクシングのビジュアルを伴って、
岩のような意思の男、岩のような筋肉の男、
まで含めればいいが、
文字情報だけだと情報量が0に近いだろう。
とくにrockey=rockの連想が効きにくい、
カタカナ表記の「ロッキー」は情報量0に近い。
「ルパン三世・カリオストロの城」はちょうどいい。
ルパンのよく知っている安心感、
カリオストロの城という謎めいた感じのバランスがよい。
「トップガン・マーヴェリック」はよくない。
トップガンを知っている人はちょうどいいかもだけど、
知らない人は情報量0だ。
「トップガン」もあまりよくないタイトルだ。
「海兵隊の戦闘機乗りのエリート養成学校を、トップガンと呼ぶ」
という予備知識があると、「かっこええー」ってなるけどね。
つまり、相手の知識の量を測ることだ。
足りないなら、予備知識をうまく与えてやることだ。
与えるチャンスがない場合、
タイトルだけの勝負で、
結構不利だぞ。
映画.comから、2024年のベスト映画10を引っ張ってきて、
検討しようか。
「ミッシング」
クリントイーストウッドの「ミッシング」を知ってれば、
子供が行方不明になっていた親の話だろう、
と想像がつくが、なんで同じタイトルやねん。
「正体」
何かの正体がラストに分る話なんだろうけど、
何の正体か興味が持てないので、
情報量の小さなよくないタイトル。
「ジガルタンダ・ダブルX」
なんやこれ。情報量0。
B級のとてつもない変な映画なのだろう。
B級好きの僕はちょっと気になるが、そういうマーケティング?
「インサイドヘッド2」
頭の中で起こること、そのビジュアルを知っていれば、
感情の擬人化されたストーリーということで、
何が起こるのだろうか、という興味がちょうどよい。
まあまあいいタイトル。
「オッペンハイマー」
これが原爆製造者の人の名前だと知らなければ情報量0の、
悪いタイトルの見本。
「原爆の父」でなぜダメだったのか、というと、
そこまでドラマがなかったからだね。
「エイリアン ロムルス」
ロムルスってなんやねん。
もうエイリアンシリーズは新規性がないのかね。
見る気もしなかった。
ちなみにロムルスは宇宙ステーションの名前。
それも興味0。
「デューン 砂の惑星part2」
「デューン 砂の惑星」はとてもよいタイトルのつけ方。
原題が「デューン」で、サブタイがそれを説明している。
砂の惑星で何かが起こる、サバイバル的なSFを想起させる。
ただpart2はお腹いっぱい過ぎてみる気もしない。
「グラディエーター2 英雄を呼ぶ声」
ちょっとよくわからない。
そもそも1で完結していたものの続編、
という企画が安易なので、興味が持てない。
英雄を呼ぶ声? 誰が? 大衆?
もう少しストーリーの謎に興味を持たせるタイトルはなかったのか?
悪いタイトル。
「関心領域」
これ、相当気になったんよな。
まずよくわからないものね。
僕はスカートの中のことかと思ったよ。
アウシュビッツ周辺エリアのことらしい。
しかもナチスがなぜそう呼んでいたのか分からないんだって。
まあ分からないものは強烈に吸引力があるが、
分らなすぎるとまあいいや、ってなってしまう。
センスのあるタイトルだと思う。
「ルックバック」
これも悪いタイトル。
同名の漫画のアニメ映画化だが、
ストーリーが想像できない悪いタイトル。
青春を振り返る話なんだっけ。
じゃあノスタルジー以外の感情なくない?
という時点で、悪いタイトルだ。
全体的に悪いタイトルが多かったね。
知ってる人しか見に行かないという、
大衆に開いたタイトルになっていない。
それはマーケティングをやりすぎて、
映画が誰のものかわからなくなっている、という行き詰まりを感じるね。
分るタイトルで、
分らない部分をうまくつくること。
それはキャラクターの造形と同じだよな。
インパクトがありながら、
薄っぺらくならないように、
その先の謎を想起させるように。
分からない単語でコミュニケーションを拒否せず、
ひらいた態度の意味に。
それでいて謎めいて全貌を開陳せず。
それが理想のタイトルだと思う。
2025年04月09日
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