2025年01月06日

【薙刀式】「ローマ字」を整理しておく

ローマ字といってもいろいろある。
訓令式、ヘボン式、デジタル入力ローマ字の、
三種が混在してるのよね。


【訓令式】本来こうしようとしたローマ字。

   A I U E O
K KAKIKUKEKO
S SASISUSESO
T TATITUTETO
N NANINUNENO
H HAHIHUHEHO
M MAMIMUMEMO
Y YA  YU  YO
R RARIRURERO
W WA       O

「ん」はN、母音とナ行が来る時はVをつける
「っ」は子音二つ重ね
「ー」は母音に^を

SI、TI、TU、HUあたりがキモい、
完全マトリクス定義。
ただ「を」はOなんよなー。変よね。
また、省略したがジャ行はZY表記。

とにかく行×段で整理しようとした方式。
でも、SIはスィだしTIはティだしTUはトゥだし。
(ここは本来の50音がねじれているのだが)


【ヘボン式】現状にあわせたローマ字。

しちつは、SHI、CHI、TSU表記。
ねじれをねじれたまま表記する。
をはWO表記。
ジャ行はJ表記。ふはFU表記。

新橋など「ん」にMを使う例もある。
「ー」はしばしば無視されるか、
「おー」をOU表記するなど定まっていない。

ちなみに「おおおか」はヘボン式で定義できないため、
僕のパスポートはOOKA表記にさせられてます。むかつく。


【デジタルローマ字入力】

訓令式を基本にして、ヘボン式も許容したキメラ入力。
Vは不使用。代わりに、
「ん」はN表記で、
のちに母音とナ行が来るときに限りNN、
という例外ルールを設ける。
実用上XNも許可。

長音は「ー」を使用。
小書きにX、Lを両方認める。

一部外来語において、本来の表記とは異なる例外を設ける。
ティDHI、ディTHIなど。

例外多すぎやろ。



原則訓令式、現状に応じてヘボン式という、
両論併記に加えて、
デジタルローマ字が輪をかけてキメラ化した。

どれを「ローマ字」と呼んでいいものか、
現在では一定していない、
というのが事実だね。


今小学校で教えてるのは訓令式で、
追加でヘボン式があるはず。
駅など公共の場はヘボン式だよね。
訓令式はめったに見ない。

もちろん公共の看板でデジタルローマ字を見ることはない。
あくまでデジタル入力時の符号にすぎない。

「ローマ字」と呼ぶ場合、これだけの差分がある。
そもそもアルファベットの行×段表記で50音を指定しきれない、
日本語がわるい。


で、配列界隈の文脈で「行段系」と呼ぶ場合、
これを全部包括することが多いね。

まあそもそも、
カナ配列の対義語で、qwertyじゃない配列を、
行段系ローマ字と呼んだ経緯があり、
例外なく左右に母子分離型だったから、
左右に母子分離してればなんでも行段系、
なのかもしれないが。

(ちなみに行段系ローマ字配列の例:
SKY、きゅうり、けいならべ、和ならべ、市式、Km式などなど)


なので、
行段系には、
行段系ローマ字(左右母子分離型が主)、
行段系カナ(カナ表記で左右行段分離型が主)、
があると考えると、
分かりやすい?

フリックは行段系カナで、かつ面遷移型ということかな。
ガラケーのトグル入力も、
行段系カナではある。


まあこんな分類を真剣に誰も考えてはいないだろうなあ。
文系の学者、興味ないだろうし。

新配列の悲劇は、M式や親指シフトの時代から、
エンジニアによって作られたものであり、
国語学者が噛んでないことよね。
エンジニアの考える「ぼくのおもうにほんご」が、
実装されてしまう危険性をはらんでいる。

統計主義による効率最適化は、
ともすると国語の形を壊して配置するが、
それはそれでキモイなあというのが、
多くの人の無意識なのではないかと思う。

じゃあどう整理すんのよ、
なんだけど、
そもそもローマ字すらちゃんと整備されてないのかよ!
って憤ることになるわけさ。

理系から見たら単位系の定義ねえのかよ!って驚きだ。
メートル原器の話するか?ってことなのよ。
文系いい加減すぎるだろ。



あ、あと前に調べたんだけど、
ヴはワ行ウなんですよ。
V行をワ゛ヰ゛ヴヱ゛ヲ゛
表記しようとした一派があり、ヴだけ生き残ったのよね。

それを加味して、薙刀式ではヴァ行をワ濁点にしようとしたんだけど、
あまりにも直感に反するのでやめた経緯がある。笑

これらを全部統一しようとして、
99式ローマ字とかあるんだけど、
まあ市民権は得てないですわな。



というわけで、結論は自由にしていい、と僕は考えております。
勝つやつが勝つでしょう。
posted by おおおかとしひこ at 20:05| Comment(4) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ヘボン式でも「を」は「o」です

「を」もそうですが、訓令式・ヘボン式は助詞の「は・へ」(「ワ・エ」と発音する)を、かな文字ではなく発音に合わせて「wa・e」と書きます
他にも「ぢ・づ」は「zi/ji・zu」と書くなど、
訓令式・ヘボン式共に、かな文字を翻字するのではなく発音を転写する、というコンセプトなので、かな文字を翻字するワープロ式(デジタルローマ字)とは根本的な思想が異なりますね

「いやいや、時代に合わせてかな文字を翻字するコンセプトにしようぜ!」をやろうとした99式にはもっと頑張ってほしかった・・・

ちなみに現在進行形でローマ字の在り方の見直しが文化庁で審議されており
パブリックコメントも受け付けています
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001404&Mode=0
Posted by あす at 2025年01月07日 08:57
>あすさん

細かい情報ありがとうございます。

そもそもローマ字の存在が、
日本語廃止のための中間的暫定措置であったことを考えると、
なんでそんなものが外国人のための地名表示に使われたりしてるのか、
よく分からなくなってきますね。
まあそのキメラさが日本そのものだなあと。
Posted by おおおかとしひこ at 2025年01月07日 09:37
ローマ字が日本語廃止のための中間的暫定措置というのは本当ですか?
自分はそんな説など聞いた事がありませんが……

過去に日本語廃止を唱えたのは明治初期の森有礼ですが、これはまだ全国の言葉がバラバラだった時代に英語を公用語にすることで言語を統一しようという考えでした(結局この案は採用されず日本語の標準語が作られることになりましたが)。

また戦後日本を占領したGHQも別に日本語を廃止する考えを持っていた訳ではありません。
漢字を減らすようには指示しましたが、あくまでその程度です。

結局のところはローマ字を嫌う保守派あたりがイメージを貶めるために流したデマに過ぎないのではないでしょうか。
Posted by とと at 2025年01月08日 09:28
>ととさん

あーまたデマに引っかかったかもですねー。
一応wiki「ローマ字」から転送。

明治6年(1873年)、文部省雇になり史略編集を命ぜられていた黒川真頼(のち東京帝国大学教授・文学博士)はローマ字での国語綴輯兼務を命ぜられ、この年の3月にローマ字綴りの『横文字百人一首』を刊行している[34][35]。この著作はローマ字書きによって日本語の本質を明らかにしようとすることが目的であった[36]。明治の一部の学者たちは、日本語に使用される文字(いわゆる漢字)の数を大幅に減らして習得を容易にするとの名目で、日本語の主たる表記をローマ字とすべきという主張(ローマ字論)を展開した。


もともとは英和辞書をつくる目的で、
ローマ字を制定→ヘボン式の流れのようです。
で今また学校で何教えるか議論が再燃してると。

オランダ宣教師(ローマ字のルーツ)の表記だと、
サ行がSA XI SU XE SOだったのがおもしろい。
耳で聞いたらそう聞こえたんだろうなあ。
Posted by おおおかとしひこ at 2025年01月08日 13:08
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