繋ぎを考えるときに、二種類のものを考えるとよい。
唐突な繋ぎか、滑らかな繋ぎか、ということだ。
唐突なほうがびっくりして、
ギャップを感じる。
それがショックな場合は有効で、
唐突すぎるのは逆効果だ。
サプライズが適切か、適切じゃないか、
みたいなことになる。
滑らかなものは、ギャップのショックはない。
そうだろうなあ、という流れに乗っかっている。
だが予測の範囲内であり、
詰まらないときもある。
逆にこうしてほしいという期待に見事答えるので、
「キター」という感覚にもなる。
唐突がよい、だめ、滑らかがよい、だめ、
なのではなくて、
前後や内容によって変わりえる、ということだ。
滑らかにするには、
伏線や前振りをしておくことだ。
「この6人の中の1人が死ぬ」
と前振っておけば、
恐怖を味わったのちに、
突然誰かが死ぬのは滑らかな繋ぎだ。
それがなくて、
6人が何かをしているときに、
唐突に死ぬと、唐突になるわけ。
唐突にはテクニックがあって、
「別のものに目を逸らせる」というものだ。
一般にミスリードと呼ばれる。
6人の1人が突然死ぬ直前に、
たとえば友情のいい感じのエピソードがはさみ、
エモい話だと誤解させるとよい。
その次の瞬間に1人死ぬと、
「なんということだ」というショックが増幅されるわけだね。
マジックは、こうした目線の誘導をうまくやって、
なるべくネタを唐突に出現させることをよくやっている。
予測できないから、驚くわけで。
もし「ここは予測しえないほうがよい」
と思うならば、
関連する情報をすべて秘匿しておくといいだろう。
予兆はなく、突然何かが起こったほうがおもしろい、
と思うならば、
なるべく隠しておくことだ。
そして、なんなら、別の方向にミスリードしたうえで、
突然唐突につなぐとショックが大きいだろう。
ショックが大きすぎると、
突然すぎてリアクションできない、
ということもある。
それも唐突の繋ぎのうちだ。
もし滑らかに繋ぎたいならば、
伏線や前振りをしておくことだ。
「この会社は最近業績が悪化している」とか、
「世間ではリストラが流行っている」とか、
「転職や第二の人生という手がある」などを、
前振っておいて、
営業成績がずっと悪い主人公を描いておくと、
ある日リストラ勧告をうけても、
「だろうな」というリアクションになるわけだ。
これを唐突につなぐならば、
前振りなく、なんなら客先とうまく行っている場面をえがき、
次の大型案件を考えているんだ、という所まで引き出して、
順調、と思っている矢先に、
リストラを受ける、という展開にするわけだね。
この、つなぎ方は、脚本家が選べる。
どちらにするべきかを、
常に考えておくことだ。
ストーリーが繋がらない、
と悩む人は、
そもそも何をどう繋ぐべきかすら、
考えていないのだ。
唐突のほうがおもしろい、
滑らかのほうがおもしろい、
唐突に変えたほうがよくなりそう、
滑らかに変えたほうがよくなりそう、
唐突だからよくない、
滑らかだからよくない、
唐突に変えるとよくなくなる、
滑らかに変えるとよくなくなる、
などを考えていないということだ。
もちろん、
「ものすごく唐突」とか、
「結構な突然感」とか、
「ちょっとしたサプライズ」とか、
唐突にもグラデーションがある。
「気づいたら進んでいた」とか、
「あー、こういう流れかーと意識できる」とか、
「繋がっていないようで繋がるなー」とか、
滑らかにもグラデーションがある。
それをコントロールするのは、
脚本家の仕事だね。
第一稿では狙いのものになると思うけど、
問題はリライトのときだ。
滑らかだったものが、
何かを切ったことで突然の唐突になってしまうとか、
滑らかだったものが、間に挿入したことで唐突になってしまうとか、
あるものを加えたことで、
唐突感がなめらかになってしまったとか、
あるものを切ったことで唐突、唐突、と繰り返して、
今何が起こっているのか、よくわからなくなってしまうとか、
それを説明したら滑らかにはなるんだが詰まらなくなるとか、
繋ぎが狂うことがまれによくあるんだよね。
なので、流れをつなぐにはどうしたらいいか、
ということを俯瞰して観察していくと、
ストーリー自体ではなくて、
俯瞰した流れが見えてくるのではないかと思う。
ここは唐突につなぐべきである、
ここは滑らかにつなぐべきである、
ここを滑らかにすると唐突が生きなくなるから、
場所を動かすべきである、
などのような、
繋ぎによってコントロールしなおすべきなのだ。
それは演出や編集でも可能だけど、
もっとも自由度が高いのは脚本段階なんだよね。
その、流れさえできていれば、
どうリライトしても強固な構造は維持されるだろう。
しかし唐突や滑らかを切ってしまうリライトは、
繋ぎなおすまでに大変な手術が必要になることが、
経験的に多いと思う。
今、どういう流れか?
それを把握するのは、
焦点の行方だけではない。
それが唐突であるとか、滑らかであるとかの、
心理的なリズムが関係していると思うよ。
2025年04月18日
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