2025年04月18日

唐突か、滑らかか

繋ぎを考えるときに、二種類のものを考えるとよい。
唐突な繋ぎか、滑らかな繋ぎか、ということだ。


唐突なほうがびっくりして、
ギャップを感じる。
それがショックな場合は有効で、
唐突すぎるのは逆効果だ。
サプライズが適切か、適切じゃないか、
みたいなことになる。

滑らかなものは、ギャップのショックはない。
そうだろうなあ、という流れに乗っかっている。
だが予測の範囲内であり、
詰まらないときもある。
逆にこうしてほしいという期待に見事答えるので、
「キター」という感覚にもなる。

唐突がよい、だめ、滑らかがよい、だめ、
なのではなくて、
前後や内容によって変わりえる、ということだ。


滑らかにするには、
伏線や前振りをしておくことだ。

「この6人の中の1人が死ぬ」
と前振っておけば、
恐怖を味わったのちに、
突然誰かが死ぬのは滑らかな繋ぎだ。
それがなくて、
6人が何かをしているときに、
唐突に死ぬと、唐突になるわけ。

唐突にはテクニックがあって、
「別のものに目を逸らせる」というものだ。
一般にミスリードと呼ばれる。
6人の1人が突然死ぬ直前に、
たとえば友情のいい感じのエピソードがはさみ、
エモい話だと誤解させるとよい。
その次の瞬間に1人死ぬと、
「なんということだ」というショックが増幅されるわけだね。

マジックは、こうした目線の誘導をうまくやって、
なるべくネタを唐突に出現させることをよくやっている。
予測できないから、驚くわけで。


もし「ここは予測しえないほうがよい」
と思うならば、
関連する情報をすべて秘匿しておくといいだろう。
予兆はなく、突然何かが起こったほうがおもしろい、
と思うならば、
なるべく隠しておくことだ。
そして、なんなら、別の方向にミスリードしたうえで、
突然唐突につなぐとショックが大きいだろう。
ショックが大きすぎると、
突然すぎてリアクションできない、
ということもある。
それも唐突の繋ぎのうちだ。

もし滑らかに繋ぎたいならば、
伏線や前振りをしておくことだ。
「この会社は最近業績が悪化している」とか、
「世間ではリストラが流行っている」とか、
「転職や第二の人生という手がある」などを、
前振っておいて、
営業成績がずっと悪い主人公を描いておくと、
ある日リストラ勧告をうけても、
「だろうな」というリアクションになるわけだ。

これを唐突につなぐならば、
前振りなく、なんなら客先とうまく行っている場面をえがき、
次の大型案件を考えているんだ、という所まで引き出して、
順調、と思っている矢先に、
リストラを受ける、という展開にするわけだね。


この、つなぎ方は、脚本家が選べる。

どちらにするべきかを、
常に考えておくことだ。


ストーリーが繋がらない、
と悩む人は、
そもそも何をどう繋ぐべきかすら、
考えていないのだ。

唐突のほうがおもしろい、
滑らかのほうがおもしろい、
唐突に変えたほうがよくなりそう、
滑らかに変えたほうがよくなりそう、
唐突だからよくない、
滑らかだからよくない、
唐突に変えるとよくなくなる、
滑らかに変えるとよくなくなる、
などを考えていないということだ。

もちろん、
「ものすごく唐突」とか、
「結構な突然感」とか、
「ちょっとしたサプライズ」とか、
唐突にもグラデーションがある。
「気づいたら進んでいた」とか、
「あー、こういう流れかーと意識できる」とか、
「繋がっていないようで繋がるなー」とか、
滑らかにもグラデーションがある。

それをコントロールするのは、
脚本家の仕事だね。


第一稿では狙いのものになると思うけど、
問題はリライトのときだ。

滑らかだったものが、
何かを切ったことで突然の唐突になってしまうとか、
滑らかだったものが、間に挿入したことで唐突になってしまうとか、
あるものを加えたことで、
唐突感がなめらかになってしまったとか、
あるものを切ったことで唐突、唐突、と繰り返して、
今何が起こっているのか、よくわからなくなってしまうとか、
それを説明したら滑らかにはなるんだが詰まらなくなるとか、
繋ぎが狂うことがまれによくあるんだよね。

なので、流れをつなぐにはどうしたらいいか、
ということを俯瞰して観察していくと、
ストーリー自体ではなくて、
俯瞰した流れが見えてくるのではないかと思う。

ここは唐突につなぐべきである、
ここは滑らかにつなぐべきである、
ここを滑らかにすると唐突が生きなくなるから、
場所を動かすべきである、
などのような、
繋ぎによってコントロールしなおすべきなのだ。

それは演出や編集でも可能だけど、
もっとも自由度が高いのは脚本段階なんだよね。


その、流れさえできていれば、
どうリライトしても強固な構造は維持されるだろう。
しかし唐突や滑らかを切ってしまうリライトは、
繋ぎなおすまでに大変な手術が必要になることが、
経験的に多いと思う。


今、どういう流れか?
それを把握するのは、
焦点の行方だけではない。
それが唐突であるとか、滑らかであるとかの、
心理的なリズムが関係していると思うよ。
posted by おおおかとしひこ at 07:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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