2025年01月12日

【薙刀式】設計の条件

ラクダエンさん
> 論理配列ってどれもそんなもんかもしらんが、特に薙刀式は部分的改修ってのが難しいんだよな。

はい。

薙刀式の排他的配置は、
どの配列でもなし得てない、
特別厳しい条件だと思う。


薙刀式の「全てに関する排他的配置」は、

1. 濁音になるカナ、半濁音になるカナ、小書きになるカナ、
 拗音カナになるイ段とヤユヨ、外来音になるカナと小書きになるカナを、
 表裏にダブらせない

2. 濁音同時押し、半濁音同時押し、小書き同時押しのシフトキーがある

3. 拗音同時押し、外来音同時押しは、
 出てくるカナを同時押し

の条件を満たす必要がある。

1を満たしても、たとえばFJを濁音シフトキーとしたときには、
「FJのうちひとつしか濁音になるカナをおけない」
という2の条件が加わったりする。

3はとても使い勝手が良い(別置の記憶が必要なく、
その場でつくれる。ただし外来音はめっちゃややこしい)
ので、2もそれに準じて同時押しにしたくなる。
しかし原理上は濁点後押しスタイルでもよい。
気持ち良さで同時押しにしたいよね。


で、同時押しには条件が隠れていて、

4. 同時押しと順押しの混同をしにくいように、
 よくある2連接は同時シフトキーを使った左右交互にしないこと
 (アルペジオはOK)

がある。昨日取り上げた同時押しの違和感は、
4を徹底できていないことが原因だ。
(原理上無理。なぜならカナ同士は全部連接するから。
打ち手側で化けが起こる連接に注意するという、
打ち手側の微調整が必要になる)

この4の条件は文字キーを同時シフトキーに使う以上必ず起こることで、
新下駄、下駄、シン蜂蜜小梅、その他左右同時系の配列はすべて宿命になる。
1アクションで済む「認識の気楽さ」のメリットと、
指先は一部繊細な操作が必要というデメリットだ。
僕はメリットの方がはるかに大きいと評価する。



さて、薙刀式には、
この「すべて排他」に加えて、
以下のような条件がある。

・BS、エンター、IMEオンオフ、カーソル、シフトカーソルが、
 30+1キー内で完結すること
 (一部は編集モードに逃しても良い)

・QTYPの打ちにくいキーにカナを置かないこと
 (現状Pは使うことになっている)

・アルペジオを中心に、日本語の中核となるカナを連接させること
 統計的二連接も同様

・ヒートマップを理想的にすること
 (右手>左手、人差し指>中指>薬指>小指、中段多め。
 比率は色々ありえる。
 僕の解は、左:右=45:55、人:中:薬:小=25:15:5:2くらい、
 ただし右薬指、小指はもう少し負荷が高め。
 普通の配列は中段>上段>下段が多いが、
 薙刀式は親指キーをたくさん使うので、
 中段>下段>上段のバランスになっている。
 ただし薬指、小指は例外)

・親指の使用率は、全カナに対して左右12%ずつにしないと痛める
 (親指シフト系は3〜4割は使う。ここがしんどいと思った)

・面は2面。3面以上は排他的配置が難しいし、
 記憶も難しくなるため

・裏面に何も置かないキーは表面と同じ。
 つまり連続シフト可能。

・編集モードとの同時押しの競合や化けにも気をつけること。
 (実質編集モードが譲っている)


えー、これを全部満たす素晴らしい配列が、
存在するかどうかもわからんまま、6年やってます…


これらの条件は、
他のカナ配列にくらべて、
かなり厳しいと考えている。
「すべて排他」がとくに厳しいね。

TRONカナ配列は、濁音に関する排他的配置のみだし、
シン蜂蜜小梅配列は、それに加えて半濁音に関する排他的配置、
拗音に関する排他的配置(薙刀式とは異なる、8×3マトリクス条件)、
が必要だ。

ただこの二つは、「日本語の中核となる連接をアルペジオに」
を設計条件には入れていない。

飛鳥はこれを入れてるが、
清濁別置で、拗音は2打で、親指2キーのシフトと、
解く条件としては緩めになっている。

新下駄も中核連接をアルペジオに置くが、
清濁別置、拗音は別マトリクスをつくる、
数字段左手側も使う、ただし親指は使わない、
などのように、
条件緩めになってると思う。

濁点後置に割り切れば、
月や新JIS、なんならJISカナまで、
条件を緩められるのよね。



厳しそうな条件だけを抽出すると、
親指シフト+清濁同置かつ同時シフト+拗音同時
まで煮詰められるか。
ここがまず厳しいんだろう。

ということで、
薙刀式は、「カナ配列の条件の厳しさの進化」の、
頂点(または進化の袋小路。どちらかは後続が決める)
にいるのだ…


その厳しい条件の代わりに、
何を手に入れたかが重要で、

・覚えやすい。清音さえ覚えればあとは応用が効く
 つまりすぐに実戦に出れて、実戦で鍛えれば良い

・運指が気持ちいい

・操作系とシームレス

・キーボードを選ばない
 (押下圧軽め、親指キーが丸いのは推奨だが)

あたりがいいところだね。

もちろん裏方は、「実装が困難」というハードな条件が課されて、
メンテが大変にはなるだろう。
設計側の困難さもあるけど、まあそれは俺が引き受けるってことで。


つまり、使用者になるべくストレスがかからないように、
裏方が大変なわけだ。
でもそれはメリットの裏表だからやるしかないのよねー。


なので薙刀式は、
厳しい条件のもとに成立している、
危ういバランスの配列でもある。

うーんここが気に食わんなーと改造すると、
だいぶ改変しなきゃいけない羽目になる。

他の配列だと微改修で済むんだけど、
薙刀式改造配列は、
大体原型を留めてない感じになってるね。笑



自分がつくりはじめたときは、
直感でやってたので、
こんなに難しいことやってたんか、
と途中で気づくことになった。
だがこのまま走るしかない。だって便利なんだもの。


あと実は隠れ条件がもうひとつあって、

・僕の指の共感覚にあうカナの配置

になってること。
実のところ、薙刀式をつくる第一条件はこれで、
あとの条件はそれを具体化してったらそうなっただけなのよね。

「この言葉はこの指をもちいてこんなふうに書きたい」
という書道的な感覚が薙刀式の第一条件で、
だから筆を振るうような、
という意味での武器の薙刀を名前に冠している。
(武器の方がカッコイイという中2センスです)




薙刀式の構造に触れて理解しないとわからない話なのだが、
薙刀式の改造したい人(そんなにいるとは思えないが)は、
参考にされたい。

僕が時々いうのはこれらの部分集合しか話さない。
だって全部いうのめんどくさいんですもの…
posted by おおおかとしひこ at 11:14| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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