2025年04月27日

90分シナリオを考えよう

80年代くらいまでは、90分台の映画とか、
結構あったと思う。
いつから120分弱が映画の基本になってしまったんだろう。


昔は2本立て興行というのがあった。
90分程度の映画を2本流す興行だ。
チケットは一枚でよくて、
自由席で、なんなら一日中いれた。
今思えば、歌舞伎のチケットと同じ考えかたで、
日本の伝統的な小屋の料金なのかもね。
〇分制とか野暮なのさ。


そういう気軽な楽しみ方のものだと、
小さい作品が多かった気がする。
アイドル主演ものとか、
本格的じゃないやつ。

本格的な120分くらいのやつは、
ちゃんと1本興行をしていたと思う。

2本立てがなくなったのは、
90分の映画が消えたからか、
それとも儲からなくなったからか。

客からしたら、
外れが一本あっても、あたりが一本あればいいや、
とリスク分散できていたし、
120分で当たりを引かないと劇場がつぶれる、
という劇場側のプレッシャーもなかっただろうから、
気楽な興行だったんじゃないかなあと思う。
人気のあるやつはロングランして、
もう一本を交換すればいいしね。

120分2本立てはしんどいだろうね。
内容的に濃くて疲れちゃう。
90分くらいのちょうどいいやつを、
適当に流し見するのが、
一番娯楽になるんじゃないかなあ。

120分と90分は何が違うだろう。
長さが違うだけではないよ。
問題の濃さや深さが異なると思う。
90分はライトだ。
テレビドラマに近いとも言える。
120分はディープだ。
これは、120分映画と180分映画の違いにも似ている。
1・5倍だし。

120分のシナリオを書くのは、
大変疲れる。
準備や取材も沢山しなければならない。
だけど90分の映画なら?
2/3で済むよりも、
もっと少なくて済むと思う。

深さの2乗くらい準備が必要としたら、
2/3の2乗、44%程度の準備で済むことになる。
つまり、120分1本書く手間で、
90分2本書ける計算だ。
そこまでは無理かもしれないが、
それくらいの感覚、
というのは肌感覚で理解できるかもしれない。

90分映画だと、
20〜25分くらいで第一ターニングポイント、
40〜60分くらいでミッドポイント、
75〜80分くらいで第二ターニングポイント、
くらいになるのかな。
苦しい中盤をかなりはしょれて、
クライマックスの尺も短いから予算にも優しいし、
そもそも90分なんだから、
そんなに大それたクライマックスを観客が期待してない。

うーむ。これが不景気時代の映画を、
うまく回転させる方法論なんじゃないか?
120分は本格派にやらせればよくて、
90分の2本立てとかに、
新人のオリジナルとかをやらせるチャンスが与えられるのでは?
制作費も大したことないし、回収額も大したことはないが、
大プロジェクトにならなくてよいから、
もっと気軽に出来るような気がする。
好評なら追加撮影したり、パート2をつくればいいんじゃないか。


映画の難しさは、
出来るまでそれが名作かうんこか判断できないことだ。

うんこが出来上がるリスクを極限まで減らした結果、
安パイしかなくなり、名作が生まれにくくなっている。
多産多死しないと名作の出る確率は減る。
にも拘わらず、少産少死に戦略が切られているわけ。
多産多死しているジャンルはいまやYouTubeとかになり、
それってバラエティの方法論しかなくなり、
劇映画じゃないよね、ということになるわけだ。

45分映画の4本立てじゃあ、
満足感は少なさそうだから、
90分くらいがちょうどいいんじゃないかなあ。

そういうシナリオを一度書いてみてはどうだろう。
数本書いたら、
どれかは出来が良くて、
120分に練り直せるかもしれないよ。
90分で勝負するホンだったら、
案外90分の名作になる可能性だってあるわけだ。

「ルパン三世・カリオストロの城」は100分と、
90分映画に毛が生えたような規模だ。
この感じがいいんじゃないかなあ。
(実はその後、遺跡都市で壮大なチェイスが計画されていたのだが、
予算の関係で10分カットされたって。
そのことによって、「手軽な楽しみ」になってることは事実だ)
posted by おおおかとしひこ at 07:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック