2025年04月28日

答え合わせ

最近よく聞く言葉。

なんか変だなー、と引っ掛かることがあって、
あとで何かが発覚したときに、
あー、あれはあれの伏線回収だったのかー、
答え合わせができたわー、
というやつ。


基本的には伏線が回収された瞬間、
「あれだったのか!」と驚き、
その仕掛けの見事さにうなりたいわけだ。
だけど、そんなに上手な伏線とその回収がないので、
下手なそれが乱立することになる。

結果、
「答え合わせができてよかった」
という言い方になるんじゃないか。

下手な伏線は、「なんか違和感を持たせる」だと思う。
つまり、
変だなーと思わせておいて、
あとで「あの変な奴は伏線だったのか」と納得させる仕掛けだ。
これだと、「あー、これはあとで回収されるな」
という感覚でものを見ることになる。
違和感を探すようになるわけだね。

それは伏線と回収を楽しむことにならない。

よくできた伏線というものは、
伏線であることに気づかれないものだ。
あとあとそれを回収して、
「あれ、伏線だったのかよ!」が良い伏線と回収だ。
しかし、
あとで思い出せない伏線になると困るので、
「めだつもの」として伏線を用意しておかなければならない。
結果として、
単に目立つだけで、今ここにあるには違和感があるもの、
が出来上がってしまう。
それは下手な伏線になるわけ。

上手な伏線は、
「目立つもので、かつ自然な進行」で行われる。
僕は、コツとしては、Aとして目立ったものを、
Bとして意味を変えてあとで使え、
という風にまとめている。

記憶に残る、あー、あれよかったよね、
という感覚を、
それ、伏線にも使うの?
という驚きに変えていくとよいわけ。

それが下手だと、
単に目立つが違和感があるものしか描けずに、
「あのへんなやつの答え合わせができた」
になるんだろうなあ、ということ。


もちろん、フィクションにもそれはたくさんあるし、
伏線と回収が上手ではない、
現実のほうにもっと多いかもしれない。

たとえば、アイドルが変な写真を上げてて、
実は〇〇と付き合っているという匂わせで、
あとでそれが発覚たしときに、
その写真の答え合わせができた、
というやつはよくあるだろう。

下手な伏線回収は、違和感を使うんだな。
上手な伏線回収は、強い印象を塗り替える。

「答え合わせ」が最近よく使われるのは、
ネットが発達して、
なにか事件が起きたときに、
過去のツイッターやインスタを漁って、
伏線回収になるようなものを見つけたときだね。

今もあるか分からないが、昔は「卒業文集」がよく使われた。
あの事件を起こした人は、
小学校の頃、高校生の頃、こんな文章を書いている人で、
事件を起こしかねない人だったのだ……
なんて答え合わせに使われた。
(卒業文集は沢山あり、誰かは保存しているから、
金を積めば手に入れやすかったのもあるだろう)


この根底にある心理は、
「人は、突然のことに対応できない。
理由が欲しい」ということだと思う。

たとえば明日地震が起きて、
東京が壊滅したとしよう。
その時に、我々は突然のことに対応できなくて、
理由を欲しがるんだよ。
「そういえば、カラスが鳴いてた」とか、
「〇〇の予言に書いてあった」とか。
それが因果関係にはなっていないのに、
理由があると安心するんだよね。
「理由が分からなくて不安になる」
がある程度だけど消失するので。
つまり、不安解消行為であるわけ。

「きみが好きだ」と理由なく言っても訳が分からないが、
「優しくしてくれて、〇〇をおごってくれて、
〇〇なところが好き」と理由を述べると、
ただ不安である状態から、理屈がつけられるので安心することが多い。

俳優と女優が付き合ってるのが発覚したときも、
「〇〇というドラマで共演し」とあれば、
そうかそれはしょうがないなー、となる。
誰かが死んだときも、
「〇〇という病気で」と死因が分れば、
「そうか」という。

何か原因を探したい、という心理が、
人にはあると思う。

そういう心理が、
答え合わせをしたがるんじゃないか。


つまり、
上手な伏線と回収は、
不安を抱かせないことから始まるわけだ。

なんか違和感があって不安になるのは、
伏線ではないわけ。

まさかそれが伏線だったとは、
が最上の伏線である。
強烈に何かを記憶に残して、
まったくそれと異なる文脈としてあとで回収すると、
それが伏線だったとはなー、と、
みな満足するだろう。


答え合わせは、
だから伏線と回収のテクニックとしては、
下であるわけだね。
答えが合ってるかを確認することは、
物語を楽しむ行為ではないだろう。


posted by おおおかとしひこ at 09:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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