2025年05月02日

まだその時ではない、という状況

たとえば殺しあいたい二人がいるとしよう。
出会えばすぐに殺しあうだろうか?
それがクライマックスに期待されるならば、
最後まで取っておくことだ。
つまり、「行きそうになるが行かない」を使うことになる。


殺しあう場合ならば、
二人きりになるが、
「まだその状況ではない」をいくつか放り込むことだ。
妻が妊娠したから、まだその状況ではないとか、
目撃者がいるから、まだその状況ではないとか、
会社のことをやらないといけないので、まだその状況ではないとか、
色々なしがらみを使うわけだ。

ラブストーリー、とくにラブコメでは、
告白するタイミングがなかなか来ないとか、
キスしたいが、なかなか出来ないとか、
セックスしたいがなかなか出来ないとか、
プロポーズしたいがなかなか出来ないとか、
あの手この手で、「まだその状況ではない」
を作り出してくる。
ヤキモキさせることすら、恋の一部として楽しむわけだね。
「もう両想い確定なのに、言い出すタイミングがない」とか、
「お互いキスのタイミングを計っているのに、
邪魔ばかりはいる」とか、
色々な場面を想像することができるだろう。
それ以前の、「話しかけるタイミングがこない」
もあるだろうね。


正月ごろ笑ったツイートを探して来た。
> ポリネシアン業務、一日目
> パソコンの前に座り、ゆっくりくつろいでから電源を入れる。
> 業務用のファイルは開かず、今まで受信した会社のメールを舐めるように確認する。

まあ仕事はじめはどこもこんなもんだよなー、
誰も仕事したくないしなー、
というのをうまくポリネシアンセックスに絡めてネタにしたものだ。

いわばこの「じらし」が、ネタになるわけだ。

犯人の手がかりがあるが、なかなかたどり着かないとか、
敵の弱点が見つかりそうで見つからないとか、
あることが分ったがそれはミスリードだったとか、
あらゆる「じらし」が物語の中にはある。

どうやって、「まだその状況にはない」を創作できるか、
というのはひとつの芸になる。

女の子をデートに誘っても断られるのも、ひとつの体験である。
「母がその日に来るので」とか、
「病院で検査するので」とか、
「犬の散歩にいかないといけないので」とか、
嘘に決まってるじゃんねえ。
昔まだやってもいないのに、「女の子の日なので会えない」と断られたことがある。
なんじゃそりゃ。俺と会うときはやるつもりだったわけでもないだろうに……。
(生理痛がしんどいということもあるけどさ)

それを笑いに昇華することは、ひとつのじらしを覚えることでもあるよね。

単に前に進めるだけが、ストーリー進行ではない。
ゆっくり、加速を入れてゆさぶることだ。
posted by おおおかとしひこ at 10:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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