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> 私家版22キー薙刀式を設計しようとして、あまりの設計難易度に打ちひしがれてモチベーションだだ下がりになった
薙刀式の「すべてにおいて排他的配置」は、
どうやってつくったんだっけか。
解説してみる。
最初に30キー2面という、
ざっくりした範囲があった。
前のカタナ式の流れから、
TYになんか置くのはやだなー、と、
UにBSは置きたいと考えていた。
Nにエンターを置く/GHにカーソルを置くは、
できれば、というつもりだった。
QPもできれば避けようという、
まずはそれ以外にカナを置いて、
ダメだったら徐々に進出しようと。
(結果的には、NGHPにはカナを置く羽目に)
下駄配列の薬指同時押しによる、
濁音の排他的配置が参考になっている。
もともとはTRONにあるアイデア。
表と裏で、濁音になるカナが一つしかないならば、
濁音同時シフトをすれば一意に濁音がきまる、
という考え方だ。
なので最初につくったときは、
濁音に関する排他的配置だけを考えていた。
経験上、薬指同時押しは苦手だから、
得意な指がいいなー、人差し指かー、
という安易な発想。
しかも最初はFJだけでなく、
同段逆手同時押し、つまり、RFV、UJMと同時押しだった。
まあFJ単独でいけるやろ、と触ってみて思ったので、
FJで濁音同時シフトかつ濁音に関する排他的配置がきまる。
濁音に関する排他的配置が出来てれば、
自動的に半濁音に関する排他的配置を満たす。
はひふへほは濁音にもなるからだ。
あとは同時シフトキーをFJとは別にすればよい。
最初期は、SLの薬指シフトだったなー。
(のちに指がしんどくなってVMに移動)
じゃあ次は小書きに関してもだな、
と考えた時に、半濁音と小書きも排他的にすれば、
つまり、はひふへほとあいうえおやゆよわを、
同じキーにしなければ、SLが共用できると気づく。
この時点で、SLは半濁音かつ小書きシフトとなった。
ここまでが、薙刀式のv0.1で考えたこと。
「ある」「ない」「する」の3大アルペジオをコアに、
センターシフトで並べてみて、
UにBSを置いて、
FJで濁音シフト、SDで半濁音小書きシフトの配列が、
最初にできた薙刀式だ。
まだ名前がなく、カタナ式K(カナのK)と、コードネームがあった。
で、拗音かー、「しょう」を打ってみよう、
と思った時に、
し→Sよ→う
がめんどくせえな、と思う。
「じょう」の
しJ→Sよ→う
はさらにめんどくさかった。
下駄配列の拗音1モーラを体験していたので、
そうなりたいと思い、
「し+よ」を同時押しすればいいのでは?
そしたら拗音テーブルを別に作らなくて済むぞ、
とひらめいた。
「し+J+よ」で「じょ」になればいいじゃんと、
3キー同時も思いつく。
濁音に関する排他的配置ができてれば、
次は拗音に関する排他的配置をつくればよい。
具体的には、イ段カナは全部左、ヤユヨは全部右、
かつヤユヨは、JLと同時押ししやすい位置である必要がある。
TRONの、「表にいようが裏にいようがかまわぬ」
という考え方が楽で、
やゆよは頻度からして裏になる。
新JISとかは「ょ」を表に出してて不恰好だったのが、
やゆよが裏になって収まりがよくなる。
ここまでは比較的楽だったかなー。
なんとなくできた。
で、外来音もできるんじゃね?
って欲張ったんだよね。笑
ァィゥェォが右にあれば、あとはなんとかなるやろと、
色々動かしてるうちに、
そもそもどんな外来音があるんだっけ、と調べたりして、
ここに一番手間取ることになる。
結構数が多かったので。
最初は外来音も拗音と同様で、
て+い=ティ、て+J+い=ディ
としてたんだけど、
カナの流れでよく使う「てい」「とう」などがティトゥに化けやすく、
最終的には常に3キー同時に改めた。
「ふ」が一番厄介。
そもそも、ふ、ぶ、ぷと3変化するし、
ファフィフェフォフュと5つの外来音になる。
これらを同時押ししやすい場所を見つけるのが大変。
いくつかの音(フェやフュ)は、
頻度を理由に押しにくくてもええか、と妥協。
で、まずは、
濁音、半濁音、小書き、拗音、外来音に関して、
排他的配置の、薙刀式v1が完成する。
センター連続シフトで表裏、
濁音はFJ、半濁音小書きはSL、
拗音、外来音は構成要素同時押し、
というバージョン。
これで薬指がすぐに痛くなったので、
S位置の「れ」を動かしたり、
SL同時をVMに変えたりした。
あとは、
ある、ない、するのアルペジオが気持ちよかったので、
他にもそうしてえと色々並び替えて、
頻度と指を相談しながら、
現在に至る。
濁音、半濁音+小書きの排他的配置までは、
誰もが考えられるのではないかと思う。
ただこれに拗音と外来音を加えて、
すべて同置、すべて排他にしたのが、
薙刀式のオリジナリティだったのだと考える。
いやー、まあ出来たので、と試用を開始して、
ほんまに行けるんかを繰り返しながら、
現在に至る。
後半は指負荷をいかに減らしていくか、
という戦いであったように思う。
僕は左薬指が5%がギリで、
小指は2%がギリだ、と、大量の試打でわかってきたので、
排他的配置を守りながら色々動かすのが、
パズルを解く苦しみがあったねえ。
あと案外実用的問題は、「化ける」問題。
V=こなので、仮に「う」の裏に「ふ」を置くと、
「こう」が「ぷ」に化けてしまう。
こういうやつをなるべく回避しなければならない。
途中、親指2シフトにすれば、
3面になってもっとカナ範囲は狭くできるのでは?
と思いつき、
濁音は全部で21あるのだから、
22キーで最小と思い、作ろうとしたことがある。
だけど、親指の負荷がデカすぎることと、
「単打が多い方が打ってて気持ち良い」
ことに気づき、
「狭くするとシフトが増える」
ことをよしとしなかったんよね。
で、まずは小指不使用の槍式を試作してみて、
できないことはないが、
アルペジオの気持ちよさがなくなることに気づき、
そこからその先は探索していない。
この時の経験から、
小指の「ろ」「ほ」「へ」「ー」「れ」あたりは、
他の配列では単打になりにくい、
頻度の少ないマイナーカナを置き、
単打の連接になりやすいように気持ちよさを重視している。
親指は無限に強くない。
僕は親指シフトや飛鳥は、親指使いすぎじゃね?
と疑念をもっている。
しかも大して工夫してない親指キーを使ってる。
いや、単に僕が、
親指シフトや飛鳥の想定よりも、
速く、たくさん書きたいのであった、
と今なら理解できる。
薙刀式の設計はなかなかにすごいと思うんだけど、
それを支えてるのは、
「たくさん書きたいのに書けなくてくるしい」
という、キーボードへの苦しみがモチベだ。
ほんとにキーボードで書くのが正解なのか?
と疑念をもち、
僕の手書きは他人の3倍速いことに気づいた。
なんだみんな手書きが遅いからキーボードがいい、
って言ってるだけかと気づき、
じゃあ普通の人のキーボードの3倍速くならないと、
僕は満足しないのでは?
と考えた。
初期の僕のqwertyが500字(変換後)/10分だったので、
その3倍の1500行ければいいか、
となんとなく思ってたので、
1〜2年でそこに到達して、あとは自作キーボードで負荷を減らし続けている。
いまだに、キーボードで書くのが正解に思えていない。
仮に2000になっても、
電源を探して、充電して、モニタの埃払って、
キーボード接続して、また撤収して、
をやる手間が、
紙とペンをさっと出し、多少折れても無造作にしまって、
しかもレイアウトフリーで漢直で無限に書けることに、
勝てると思ってなかったりする。
つまり、
排他的配置のパズルがきわめて難しいにも関わらず、
それを解いた末のものに、
僕は満足してないという矛盾がある。
もちろん、限界まで試行錯誤したので、
「これ以上よいものはできない」
と体で理解するまでパズルはやった。
だから次のバージョンアップ、v16快速版で、
薙刀式の開発はおわりなのでは、と予想している。
もちろん薙刀式のシステムは他になく、
それを取り入れようとする試みは興味深いが、
一番そのパズルをやった者としては、
「そんなに都合のいい解が転がっていない、
砂漠で水を探すような不毛な探索ばかりだぞ」
という経験談を話しておく。
一旦フィックスしたものを動かすのがかなり難しい。
最初にならべた初期条件でほとんど決まっちゃう。
だから、ある、ない、するを崩すところから始めなければならず、
もうそれって薙刀式開発の6〜7年をやり直すってことだからね。
だったら月みたいな、
どうとでもなる仕組みのほうが、
試行錯誤のPDCAはガンガン回せそうだなーと、
隣の芝が青く見えている。
僕が順次打鍵を嫌と思わなければそっちをやってたな。
ただカタナ式で打鍵数の多いのが嫌になっちゃったからなー。
カナ配列は、
たぶん10万字以上書かないと評価を回せない。
あるバージョンと別のバージョンの、
どっちが指負荷があるかを考えるには、
最低でも10万字くらい書かないとわからないと実感している。
ちまたのカナ配列は、そんなに実験してないんじゃないか、
って僕は思うのよね。
小指7〜8%の配列をみていつも思う。
10万字をするっと書ける道具じゃないよねと。
一日5000字書いて20日で10万字だけど、
そんな生活してないよねといつも思う。
僕も手書きの頃はそんなに生産できなかった。
でも薙刀式×自作キーボードがあれば可能だ。
手書きの第一稿まではできるが、
結局清書しないと第二稿に進めないからね。
というわけで、
排他的配置のパズルは大変難しく、
そもそも何のためのパズルだっけ?
という疑念もつきまとう。
リターンは大きいが、
僕はそのリターンで足りてねえ、と思うのである。
じゃあなんならいいのか、漢直か?
を探り始めてるのが現在地点。
まあ、僕が探せなかっただけで、
もっといい解はあるかもしれない。
なのでジェネリック薙刀式は、
どんなものになるのか見物したいのだ。
2025年02月14日
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