2025年05月09日

説明のコツは感情を伴うこと

説明の下手な人は、説明は説明、ストーリーはストーリー、
と分けてしまう事だ。

本当はストーリーを進行させながら説明して、
説明しながらストーリーを進行させるべきだ。
だけど、
どうしても説明だけのパートが出ることがある。

そこで、ただ説明しているだけでは詰まらない。
面白くする工夫は、感情を伴うことだ。


たとえば通行止めがあり、
夜まで解除されないと説明することにしよう。
検問があり、警官がそれを説明するとする。

感情を伴うとは、
たとえば「困ったなー」とドライバーが言えばいい。
「それじゃ困るよ。夜までに届けないといけないんだ」
と、「困る」という感情を伴うとよい。

でもこれは説明を受ける側の感情だ。
説明する警官の感情も伴うといいだろう。
「我々も困ってるんです」などと付け加えるとよい。
「ちょっと困ったことに、この先通行止めなんですよ」
と、説明すればいいのだ。

その後なぜ通行止めなのか、いつまで通行止めなのか、
なぜか、などの説明が入ったとしても、
「これは困った事情なのである」という感情があるから、
その感情とともに記憶に残るわけだ。


うれしいことは記憶に残る。
悲しいことも記憶に残る。
そんな感じで、強い感情は記憶とつながりがある。

そしてそもそも説明を理解しなくても、
「困ったことがある」のように理解できる。
感情を伴って悪いことはひとつもない。


一個あるとすると、
警官が自分の私情を露わにして、果たすべき公務を果たしていない、
などというしょうもない批判だろうか。
CMだとクレームが来るだろうが、映画ならば問題あるまい。
人懐こいオッサンなら大丈夫だろう。

「私たちはこれから嬉し恥ずかしの同棲生活を始めますが、
その前に説明したいことがあります」
なんて前置きがあれば、
その説明を嬉し恥ずかしな気持ちで聞くことだろう。

「大変つらいことですが、
奥さんの病状について説明します」
となると、覚悟が決まるだろう。


これらは最初に感情を前置きしているから分かりやすいが、
途中で放り込んでもいい。

説明して、説明して、
「俺もめんどくさくなってきたのでこれからはしょるが、
要はろくでもないことがこれから起こるってことさ」
と間に挟めば、
説明の内容とともに、
めんどくさく、ろくでもない予感が記憶に残るだろう。



説明はなんのためにするかを考える。

情報を共有して、次の展開の準備をして、
伏線を引くことでもある。
同時にルールを共有して、これからの突破口を考える手立てにもなる。

そもそも情報量が多いと時間がかかるために、
ついつい必要最低限にして、
文字数をへらそうと思ってしまうことはあるだろう。
だけど、無味乾燥な情報は、
ストーリーの中では灰色で詰まらないのだ。

「いいニュースと悪いニュースがある。どっちから聞く?」
というハリウッドでよくある表現は、
そもそもどちらの説明も感情を伴うわけである。

逆に、説明されてなんの感情も持たないものは、
説明として失敗しているのではないだろうか。

ゲームならば、
「これを利用してどういうゲームメイキングをしようかな」
という材料になるが、
ストーリーはインタラクティブではないので、
主人公がこれからどう考え、どう行動するかにしか関係しない。

つまり、感情移入という大事なものに関係するべきだ。

だから、主人公の感情または他のキャラクーの感情とともに、
説明を紐づければいいわけだ。


「ここは生き馬の目を抜く恐ろしい都会……」
というオープニングならば、
恐怖しながらストーリーに入れる。
その後の猟奇的な事件は、
すべて恐怖という感情とともに記憶に残るだろう。


そもそも何を説明しようとしているのか?
僕は、最終的には感情だと思うんだよね。

だから、そもそも説明に感情を伴うようにしよう。


逆に感情のない説明は、
おそらく「退屈」という感情が伴うに違いない。

そして下手な説明ってたいていエクスキューズのためにあるんだよ。
だから「エクスキューズされてる」
というしょうもない感情が湧くのよね。
「これはCM上の演出です」って字幕最初に入れた人、
バカじゃないのって思う。
言い訳してる説明ほどみっともないものはない。
「なんで浮気したの?」「オドオド、以下説明」
なんて「追い込まれてるから嘘をついてる」
以上の感情はないよね。
posted by おおおかとしひこ at 08:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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