中盤を書くのはいつも難しい。
目的に対して障害が立ち塞がり、
これを一つずつ超えていくのが中盤だ。
このとき、障害を人間にしていないと、
難しくなるという経験則。
たとえば物や仕組みを障害にしてしまうと、
難しく、そしておそらく詰まらなくなる。
たとえば、
「物理的な壁を越える」という例を示そう。
ある目的地があり、
そこに物理的な分厚くて高い壁があり、
これをどうしても超えなければならないとしよう。
物理的な障害である。
これを越えようとするエピソードは、
大して面白くならないんだよね。
それを越えるだけのジャンプ力を修行するとか、
壁をぶち破る兵器を持ってくるとか、
せいぜい協力して壁を越える、ぶち破る、
くらいしかないだろうと思う。
なんかこのパートおもしろくないよね。
よほど壁のぶち破り方や超え方が新しければあるけど、
なんだか停滞した静かなパートに見えてしまう。
仮にこれを関所だとしよう。
門番がいる。
この人をかわせば関所は通れるとしようか。
もちろん先ほどのように壁を乗り越えたりぶち破ってもいいのだが、
相手が人となると、
真正面から武力で倒す、
偽の通行証を使ってバレないように通過する、
賄賂を送って抱き込む、
その人の親しい人などに化けてバレないように通過する、
酒などを飲ませて眠らせる、
バレないように近づいて暗殺する、
などの、さまざまな方法を使うことができよう。
そしてこれらは、
単に「物理壁を乗り越える」よりも面白そうだ。
なんでだろう?
相手が人だから、だと思う。
相手が動かぬ壁であるよりも、
リアクションしてくれたり、
どうにか交渉できるかもしれなかったりするから、
だと思う。
これがQRコード認証式とかクレジット番号入力システムとかだと、
全然面白くないと思う。
相手が人だから、抱き込んだり騙したり不意打ちできる、
というところで面白くできるのだ。
実際にその壁を越えなくても、
その人を超えれば越えたことになる。
つまり、「壁を攻略するのではなく、人を攻略する」と、
バリエーションができるし、
人間臭くなるし、
おもしろくなる、
ということである。
物以外で、たとえば「仕組み」だとしよう。
仮に、「民主主義を倒す」としよう。
どうやって?
あまりにも莫大で、どこから手をつけていいか分からないね。
一方「独裁主義を倒す」は、比較的描きやすい。
どうにかして独裁者の眉間を銃で撃ち抜けばいいからだ。
この場合、独裁主義というシステムは、
独裁者という一人に象徴されていて、
その人を倒せば独裁主義を倒したことになるから、
分かりやすいのだ。
民主主義を倒すといっても、
国会を爆破したり、首相を殺したり、
憲法を焼いたりしてもできないだろう。
タイムスリップしてフランス革命のリーダーを殺せれば、
できるかもね。
このようにして、「その仕組みを象徴する人」を、
障害にするとよい。
「それをやるには、会社の制度を改革しなければならない」
は、描くのが難しいし、
絵として示せないから分かりやすくもない。
こういうときは、
「社長をうんといわせる」でいいと思う。
「腐った警察組織を改革する」は、
「賄賂を要求する署長」を日の当たるところに引き摺り出せばいいわけだ。
あるいは、
「明日のバイトを変わってもらう」みたいな小さなことでも、
「○○さんが変わってくれればOK」として、
○○さんに取引きを持ち掛ければ、
○○さんの「うん」を引き摺り出すゲームにできる。
反応しないシステムや仕組みや物を相手にするシーンは、
たぶん詰まらない。
「一人で動かないなにかに向かっている」しかないからだ。
相手が動いてなんぼでしょ。
壁を乗り越えるという最初の例でも、
動く壁だったらまだ攻略してるのがおもしろいかもね。
まだゲームっぽくなるだろう。
そして、「それを作った人の心理」を攻略することになるから、
結局人vs人の話になるだろう。
結局、
人と人が対決していないと、
面白くならないと思う。
もちろん、人だらけの中で、
「厳重に守られた金庫を盗む」という、
対物のアクションがあったりすると、
そこは映えるものになると思う。
あくまでそれは変化球としての役割になろう。
すなわち。
物相手の話、仕組み相手の話は、映画になりにくい。
映画になるのは、それが人に転換されてからだ。
もし障害に困ったら、それを人に象徴して、
その人を攻略するストーリーに変えてみてはどうだろう。
「障害」という専門用語がよろしくない。
モノをイメージしてしまう。
「阻む人」と意訳したほうがいいかもね。
で、阻む人と主人公の対決があるわけ。
それをコンフリクトと呼ぶのだ。
2025年05月21日
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人と人が対決していないと、
面白くならないと思う。
同感です。
よく特殊能力持ちの人類vs言葉をしゃべらない化け物という構図のファンタジー作品を(好きなので)見るのですが
だいたい途中から化け物を相手取ることが少なくなってきて
特殊能力持ちの人間同士の抗争になるか、化け物が進化して言葉をしゃべるようになるんですよね。
今回はモノとか仕組み相手の話でしたが、獣でも面白くはなりにくいのかなと思いました。
やはり人と人との対立が面白いんだなと思います。
人外のなにか、でいうと、
獣、幽霊、妖怪、化け物、鬼、
宇宙人、神なんかがそうですかね。
熊を相手取った猟の話をおもしろくするなら、
熊がたとえしゃべらなくても知性を見せたときだと考えます。
漫画「度胸星」(ヤンサン統合のどさくさで打ち切り)は、
火星で四次元の生命体「テッセラクト」と邂逅する話ですが、
わけわからん存在すぎて、
わけわからんのですよねー。
逆に、おはなしとは「わけがわかること」だと思います。