2025年03月15日

日本型の話は序破急、アメリカ型の話は三幕構成

前記事から独立して考える。

序破急は日本型の話に向いてる気がして、
アメリカ型の三幕構成と喧嘩するかもなと思った。

つまり、メアリースーの原因が、
三幕構成で書くべきシナリオスタイルなのに、
序破急構造で書いてしまってるから、
というのは一つ言えるなと。


序破急と三幕構成は、
日本人とアメリカ人の、
「環境」の考え方を反映してると僕は考えている。

日本人は自然は神で、
人間の手ではどうにもならず、
我々は待つだけなのだ、
そのお恵みで生ているのだ、と考えがち。
基本は循環する閉鎖空間で、
ずっと生きていく前提。

アメリカ人は、
自然は改変可能で、
どれだけ人間が手を入れて改造したかが、
その価値だと考えがち。
それをやりすぎたからエコとか言い出した。
欧米型の自然観は、
焼畑が一番わかりやすいと思う。
改変するべき大自然は無限にあると。


さて、この無意識が、
物語の型にもはまってる気がするのだ。

序破急は、
序で設定した世界が、
破でどんどん壊れてゆき(人為的にも、外的要因でも)、
それをなんとかして元の序に戻そうとする、
という考え方だと思う。
そして解決するのは人でもあるが、
天の流れみたいなこととの一致を使うこともある。

「アルプススタンドのはしの方」では、
主人公たち4人=大したことができない高校生が、
外の環境要因である野球の試合(変えられない)を見ながら、
そのタイミングで変わっていく話だ。
大自然と呼吸を合わせて、天地人のタイミングが合ったときに、
カタルシスがある、
という無意識が構造に表れているように思える。


一方、三幕構成理論では、
第一幕は、「解決するぞ(改変するぞ)」で終わり、
第二幕は、解決に至る障害を一つ一つ乗り越えてゆき、
「後一個で解決する(改変完成一歩手前)」で終わり、
第三幕は、それが現実になるまでを描く。
世界は永遠に変わり、
どれだけ変えたかが価値になる。

世界は変えるべきものであり、
無限によくない世界を、
少しずつ良く改変していく価値観だと思う。


つまり、独力で自然を改変しなければならない、
三幕構成ベースの物語(能動的、主体的)と、
環境が変じたことで話が動き始め、
変えられない世界の中で生き方を決める(受動的、流される的)、
序破急ベースの物語では、
根本的に世界をどう見てるかが違うのでは?
と思うわけだ。


で。
序破急は、たぶん2時間持たないと思う。
90分はどうだろう。いけるかな。わからない。
75分はいけてた。

序破急は、ある種自然任せのところがある。
主体的に世界に切り込み、世界を改変するまで行かない。
だから、その他力本願が、
メアリースーになりがちだと思う。

日本人は甘えてる、というわけではないが、
大自然が強力すぎて、
そして大自然の恵みがありすぎて
(勝手に土から草木が生えてくるのは、
土と水が豊かな証拠。欧米ではまずない)、
環境という母に抱かれがちだと思う。

ナウシカだってそういう結論よね。
腐海を改変しようとするトルメキアは悪役だ。

ところが、
三幕構成理論では、トルメキアこそが主人公であり、
正しいと考える。

おそらくだけど、2時間持つ話は、
こちらでないと起伏が持たないのではないか?



さて、
だからこそ、
2時間尺で、三幕構成を期待されている、
映画という枠組みで、
75分程度しか持たない序破急構成を、
適度に引き伸ばしてやると、
甘え/メアリースーに、見えるのではないだろうか?

たとえば典型的なメアリースー映画の例として、
「落下する夕方」をあげておく。
菅野美穂がその大自然の役割だ。
hulu、アマプラなどで見れるので、勉強のために見るべきだ。
この映画のクライマックスは、
「色々あって、一歩前に出る」ところ。
あまりにも小さすぎて、映画としてはつまらんのよね。

なんでこうなっちゃうんだろうな、
この映画だけでなく、
なんか日本の話ってこうなりがちよね、
と考えたんだけど、
序破急構造と、その背後にある自然観みたいなことが、
影響してるのではと思ったのだ。



合ってるかどうかはわからんが、
こう考えると理解できると思ったので、
メモしておく。

だから、日本型物語はテーマを持ちづらい。
環境に抱かれておしまいになるので。
「世界をどれだけ改変したか」で測られる、
ハリウッド型のテーマを見つけにくかったりする。

じゃあ、あとはどっちがおもしろいの?
でいいと思う。
75分までは、序破急でも面白かった。
「アルプススタンドのはしの方」は、
大変楽しめた名作だ。

だけど2時間の「落下する夕方」は、
クソみたいにつまらんぜ?
それはなぜか、という話だよ。
posted by おおおかとしひこ at 11:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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