2025年03月18日

【薙刀式】僕がタイピングゲームに否定的な理由

ゲームとしてそれをやる人のことは否定しない。
楽しさもある。修行みたいなところもある。速くなればうれしい。

だけど、「実用文を書くための新配列の練習」に、
タイピングゲームを使う人は、全力で止めたい。
何にもならんどころか、害があるぞと。


実用文を書くための新配列の練習に、
タイピングゲームが効果があるのは、
秒2〜3カナくらいまでかな。
それ以上はほとんど意味がないと思う。

僕は一応秒5.5カナまでやったけど、
あの膨大な時間はほとんど意味がなかったと思う。
数字で他と比較して考察するのには役に立ったけど、
実用用ではない。


その理由は、大きく二つ。


1. 問題文が実用とかけ離れている

単語ランダムという問題形式が、実用ではない。
ランダムな単語で会話する人はいない。

文というものは、書き手のなんらかの意思があり、
それに関係する言葉をあつめて、
並べて、繋げていくものだ。
その練習にはならない。

また、日本語は単語だけで紡げる英語と異なり
(もともとタイピングゲームは英語のタイピングゲームの、
真似事にすぎない)、
単語間をつないではじめて文になる。
助詞や助動詞、活用などだ。
僕はそれらを「繋ぎの語」などと呼んでいる。
(上の文で言うと、
 はそれらを  ぎの  などと んでいる。
あたりだ)

これらは全くランダム単語系のタイピングゲームに出てこないので、
実用練習には程遠い。

長文タイピングは幾分練習になる。
それでも、次の理由でよくないと思う。


2. 文章を書くことは、自分の考えを出すことだから

タイピングゲームは、
他人の言葉と指をリンクさせる練習でしかない。
だけど「書く」こととは、
自分の考えと指をリンクさせることだ。

考えと指を直結させなければ、
新配列を実用できない。
その感覚に、他人の言葉を練習するのは邪魔まである。

僕は考えを「出す」感覚だと思う。
タイピングゲームは、「あるものを横に移動する」だけだと思う。
考えの暗闇と指を繋げられない。

自分の考えと異なる文章をタイピングゲームで打つならば、
その考えと自分の考えが異なる部分が気になるだろうし、
自分と同じ考えの他人の考えなんて、
大概無難な内容だ。書く価値すらない。

自分の考える内容が脳波入力でディスプレイに出て、
それを指に条件反射化できるなら意味があると思うけど、
それ以外は「脳と指の条件付け」は出来ないと思う。



あとはもう少しナイーブな問題がある。

何も知らない人が、
嬉々として自分の結果をアップするのは、
子供の成長を見守るような気がして、
止めることもしないのだけれど、
これがあまりに溢れると、
「○○配列 練習」などでググって出て来た結果、
「○○配列を練習する方法として、
初手からタイピングゲームをやらないとダメ
(またはスタンダードな練習方法)」と、
誤解してしまうことが問題だと思う。

その記事が、
qwertyが○○で、目標が○○で、
最初は公式サイトで練習したが、
さらに速度を上げようとした計画の一環であり、
以下の結果はその一部である、
などのような「練習の一段階」としてあり、
なおかつ最終段階まで道程が示してあればよいのだけど、
単なる点としてしか解釈されない問題がある。

これだけしか目にしないと、
新配列を練習する第一手に、
「手に配列が馴染んでない状態で、
いきなりタイピングゲーム練習をする」
という最も誤った、そして最も苦しい練習法を、
選択する可能性が高い。

新配列界隈で伝統的に熟成されて来た合理的な練習法、
「ホーム段だけでつくれる自分の言葉をたくさん書く」
「ホーム段と上段で(以下同」
「上中下段で(以下同」
と、段階的に指と脳を条件反射化させる練習法を、
知らないまま最も苦しい練習法を始める可能性が高くなってしまう。

例の動画以降、大西配列練習者にこういった誤解が多く、
「配列図を目で見ながらe-typingをやる」
という考えられる限り一番苦しい、
そして最も効率の悪い練習法をする人が多かった。
(そして三日坊主に終わる人が多かった)

これを危惧して僕は一記事書いた。
これを大西さんが拾ってくれて、
公式サイトに練習道場を作ってくれたくらいだ。

(ほんとうは他人の言葉をコピーするのではなく、
自分の言葉で編むのがよいのだが、
それは公式サイト形式では無理なので、
普及のための必要悪とだまってはいる)


そもそも実用と本質的に遠い練習。
そして誤解を増幅する可能性。
百害あって一利なしだと思う。



タイピングゲームが速い→実用が速い
は真である。
だが、
実用が速い→タイピングゲームが速い
は真ではない。

タイパーたちは僕の2.5倍くらいタイピングゲームが速いが、
実用では1.数倍程度しか僕より速くなかった。
必要十分条件になっていないことをKIH動画で改めて確認したことが、
僕の現在のタイピングゲーム否定論(実用入力を目指すならば)に、
つながっている。


もっとも、適切な運用ならば、タイピングゲームは有用だ。
上にあげた、
まず指と脳を直結させて、
全配列の文字をマスターした状態になったあと(秒1〜2カナ)、
秒3カナ程度に速さを鍛えるためである。
また、自分の言葉だけだとボキャブラリーが偏るから、
出会ったことのない言葉に出会う経験は、
神経網の発達に役に立つ。

でもそれも秒3カナくらいで卒業して、
さっさと実戦投入で鍛えた方が有用だと思う。

理由は、「自分の考えを指で著す」と、
遠いからだ。

タイピングゲームを経由せず、
自分の言葉をたくさん紡ぐのと、
実は大して変わらないのではないか。
(たくさん紡ぐことのできない人が、
タイピングゲームに頼るのは分からないでもない)


とはいえ、数値的指標がないと、
自分の現在地点が分からなくて不安だろうから、
僕は別の指標をお勧めしている。
自由文をしばらく書いてみて、
○字(変換後)/10分だ。

これが700に乗ればそこそこ速く、
1000でだいぶ速いと思う。
僕は1500だが、本当は2000行きたい。



ゲームが楽しいからやりたいというのは止めない。
でも所詮ゲームだと僕は思う。
スト6が強いやつと、UFCに出るやつは違う。
別の強さを競っている。
posted by おおおかとしひこ at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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