2025年06月30日

幼なじみがライバルにならない理由

長編なんかでたまにあるんだけど、
最初は幼馴染であったキャラクターが、
途中でライバルになるパターンね。

あれ、あんまり面白くならないと僕は思っている。
なんでやろ。


それは、「敵は外から来る」となっているからだと思う。

幼なじみは基本的に仲間であり身内だ。
だから、舐めているというか、
「スペックが全部分かっている」という感覚があると思う。
それが敵になるほどのスペックを得られない、
と無意識が思っているのではないか。

敵は強大な力を持っているものだ。
そして外から来るものだ。
つまり、敵の脅威とは、
ある程度「未知である」ことに関係しているのではないかと思うわけ。
よくわかっている幼なじみが未知になることはない、
という安心感があるというわけだ。


だから、幼なじみが敵になる展開は、
どこかすごい敵がやって来たという感じにならず、
「裏切られた」という気持ちだけが支配することになり、
その微妙な感覚をぬぐえないまま、
最後までもつれることが多い。

つまり全体を支配するものが、
未知との対決ではなくなる。
だから、あんまりおもしろくないんじゃないかなあと思う。
敵というよりはわだかまりの解消が全体のトーンになるからね。


それをなんとなく分かっている作者は、
幼なじみを闇落ちさせて、
大抵悪いやつに弟子入りさせることで、
完全なる敵に生まれ変わらせる、というパターンを取りがち。
一回身内の良く知った状態から、
「よく知らない状態に成長させる」というパターンで、
敵に仕立て上げるパターンになると思う。

その、身内としては知らなかった幼なじみの部分があって、
それが敵になる動機であり、それが理解しあえなかった部分なのだ、
となってしまうので、
どうしても敵を爽快に倒す、という話にはならなくて、
なんかごにゃごにゃするパターンになる。

だからあんまり面白く無いんじゃないか。
そのごにゃごにゃが新しいならばまだあるけど、
そんなに新しいパターンもなさそうだ。
だから、
結局幼なじみが強大なライバルや敵になるパターンの話は、
あんまり面白くないんじゃないか、という暴論だ。

つまり、敵の魅力や強大さは、
「未知」の部分に大きく負っている、だと思う。

敵の悲惨な過去とかがあらわになって、
大体どういうやつか分かってきたら、
未知の部分がなくなるから弱体化してしまうよね。
死亡フラグ、負けフラグになるわけさ。

ライバルの弱体化は相対的に主人公側の成長と対比できるため、
コントラストを上げるためによく使われる手法だ。
つまり、敵を弱体化させたかったら、
過去を掘ればいい。


幼なじみはすでに過去を掘られた状態スタートだから、
そこから未知を得ないと強化できない。
しかも闇落ちする原因が必要で、
主人公サイドが未知な部分にそれがあるはずだから、
つまり幼ななじむ前の部分に原因があることになる。
だから、子供の頃、出会う前や出会った瞬間の頃が、
原因になり、
子供の頃の話限定になって、あんまり幅がなくなるんだよなあ。
ここが、幼なじみライバル系のストーリーが、
発展しにくい理由でもあると思う。


論理的に、強大で未知の敵に対して、
魅力がないんじゃないかと思うわけさ。

で、実は主人公を思うがための闇落ちであったのだ、
と二重のどんでんで味方に戻るパターンも多いから、
そのあと共闘して真の敵を倒す、という流れにしたくなるので、
真の敵はまた別にいないといけない。

じゃあ要するに時間稼ぎ展開になりがち、
ということになるね。


死力を尽くして闘った敵が仲間になる展開が多いのも、
「よく知った間柄になり、未知がなくなるから」であるとも言える。

逆に、そうなってしまった元敵は、弱体化をするものだよね。
よく噛ませ役になるのもそういう理由が多いのではないか。

つまり、物語における強さは、
未知と比例するという乱暴な法則が導かれる。


よくわからないものは敵、
良く知ったものは身内。
ざっくりいうとこういう傾向にある。
良く知ったものの中に未知が生まれ、
というのは「他人とは理解しあえない」
というテーマになることも可能だけど。


ということで、いったん仲良くなった味方が、
裏切って敵になるパターンだと、
どうしても最強のライバルにはなり得ず、
微妙なランクの人になって、
あんまり面白くないパターンに陥ることが多い。
なので僕はこのパターンだけは避けているなあ。

もし面白いパターンがあったら教えてください。


幼なじみが敵同士になる、
それは憎しみ合う理由がないまま、
二人が所属する民族が異なるからだ、
という宿命的なパターンは、すでに「ベン・ハー」にある。

表面には表れていないものを理由にする
(この場合出自)しか、
ライバルになることは難しいことを語っていると思う。

posted by おおおかとしひこ at 08:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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