2025年04月03日

【薙刀式】新配列は競技タイピングと距離を置くべき

という議論をしておくか。

新配列の目的と状態と、
競技タイピングがかけ離れすぎているからだ。


競技タイピングは、

・ランダムワード主体で文章ではない
・問題文は有限範囲
・変換を伴わない
・短距離限定
 (秒間10〜20打の速度前提)
・コピー打鍵であり、理解を通さない方が速い

である。

一方実用タイピングは、

・意味のあるまとまった文章であり、
 はじめから終わりまで首尾一貫した議論が求められる
 各パーツは全体のためにあり、構造を持つ

・書くべきことは毎回無限に異なるし、
 縁語、辺縁系のことばの集合になる

・変換を伴う、
 漢字を使うかひらがなにするかなどでもニュアンスは変わる

・短距離であることはほとんどない
 1000字〜2000字(ブログ)はごくふつうに発生
 5000〜1万字(論文)はまあある
 数万字〜10万字(文庫一冊)は、プロなら普通
 平均秒間3カナもあれば実用たり得る
 とくに疲労の蓄積のほうがクリティカル

・創作文であり、頭から出たものの整理と、
 他者から見たわかりやすさを同時に表現する

だ。(理解の解像度が異なる点は容赦)

本質がまったく異なるものを、
同じ土俵で比べるべきではない。


新配列のほぼ全部は実用のために開発されたものであり、
競技専用に開発されたものではない。
(TWW配列は明確にタイプウェル専用、
いろは坂は実用よりは競技寄りだが、
この2つが数百の新配列の中で例外的かもしれない)

共通点は、「キーボードで文字を打つ」
しかないんじゃないか。
料理コンテストと殺人コンテストを、
包丁で競っているような感じかしら。


これで議論はおしまいになるんだけど、
今の所「速さ」が、
新配列のアピールポイントになるものだから厄介だ。

つまり競技側に行くしかないのが、ねじれてると思う。

秒間10打できてもトップタイパーには届かない。
だからqwertyより新配列は遅い、役立たず、
と言われては元も子もないというのに。
同じ指力で比較するべきなのにねえ。

たとえば僕の指は秒5.5アクションだから、
同じ5.5のqwertyの人やカナの人と比較したいのにさ。



元々、「こんなに効率的な新配列ができたのだから、
qwerty打倒はすぐであろう」と、
楽観的に考えられていたはずだ。

だけどDvorak配列はqwertyと拮抗するレベルでしか、
競技では成績を残していない。
両者を比べればDvorakの効率性が圧勝してると思うのにも関わらずだ。

そして日本で中心的な?カナ系新配列は、
RTC出場レベルに到達している人は誰もいない。

つまり、新配列が考える設計方針は、
競技ではほとんど役に立っていないと結果的にいえる。

新配列でタイパー並みの指力を持つ人がいないこともあるし、
仮にタイパー並みの指力を持ったとき、
新配列が旧配列を圧倒するのかはわかっていない。
秒間18打出来る薙刀式使いがいたら、
どうなるかは分からないねえ。
(シフトで足を取られる説はある)


新配列の考える利点をうまくアピールするには、
どうすればいいのだろう?
30秒程度で数字で決着がつく、
動画映えする、
競技タイピングとは別の測定方法があればいいのだが。

僕はたぶんないと思ってるので、
「10分間自由文を書く動画」が、
今の所もっとも効果的なんじゃないかと思っている。

(もちろん30分でも2時間でもいいよ。
動画のアップロードやメモリ消費がめんどうなだけだ。
あと誰も全部見ないだろうし)

だから配列作者は、
百聞は一見にしかずがやりたかったら、
競技に参加するのではなく、
実用10分動画を見せるべきでは?
と考えている。

もちろんヒートマップや運指の効率の視覚化や、
設計方針の明確化、マスター方法など、
文章で書くべきことはたくさんある。
だけど、「理屈はわかったのだがどれほど『出来る』のか?」
を示さないことには、
机上の空論になってしまうように思う。


車の歴史における、
レースカーと市販カーの違いみたいなことだろうか。
最初はサーキットと市販は同じ尺度で見られていたが、
そのうちレースカーの技術が遥かに進み、
市販カーの実用性と乖離したことになってる、
みたいなことかもしれない。

競技タイピングと新配列の実用は、
それ以上に異なる乖離かもだ。
同じ形をしてないものの比較だからね。


なので僕は競技タイピングとは一線を引いてるのだが、
Alternative Typing Contestみたいな、
映える企画には参加してる笑。

でも回を重ねてしまうと、
競技のための競技になっていってしまうだろうことは、
レースカーと市販カーの関係から予測できる。



僕はqwertyローマ字は日本語を書くのに不適切だと考えている。
多くの作家が腱鞘炎で手を壊すことに心を痛めている。

新配列を知らなかったこと、
キーボードの適切な選び方を知らなかったことが、
文化の最先端の伸びを止めている。

最先端だけでなく、
日本人のデジタル生産性が低いことは、
qwertyローマ字のせいだとも思う。
国民全体に錘をつけているような、劣悪な配列であると。

それで競技をしてる人たちは、
狂ってるとすら思うよ。

だから人間の適応力はすげえなあと思いつつ、
限られた偉人のやり方が、
多くの人に適用できるはずがないとも思う。

平均qwertyローマ字の生産性と、
平均薙刀式の生産性の比較には興味があるが、
まあ層の厚みが違いすぎるので比較できないのが辛いところ。



ATC基準で、70字/分あれば実用で速いのだ。
150以上は実用上ほぼ差がない。
そんなふうなことを示せれば、
競技速度至上主義
(qwertyタイパーに負けてるわププー)
を切り崩せるだろうか。

競技のレベルがあがりすぎたのだ。
ATC250とか300相当だもんなあ。

250出せる人が300出せる競技用新配列をつくる、
などには興味があるな。何が違うかはっきりしそうだ。
posted by おおおかとしひこ at 11:03| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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