2025年07月11日

魂がこもった場面

悲しい場面で雨が降ってくる。これはよくある場面だ。
悲しい場面で雪が降ってくる。
多少アレンジされているが、よくある場面の焼き直しだ。

では悲しい場面で、どう表現したらよいだろうか?
ここをオリジナルの表現にすると、
そこに魂がこもるように思う。


つまり、
よくある場面だけをつないでも、
魂はこもらないと僕は考えている。
よくある場面は記号にすぎないと思っている。

もちろん、よくあるから、
よくある感情を伝える、という役割にコスパがいいかもしれない。
悲しい場面で雨が降ってくるのは、
分かりやすくて伝えるのに心配がないわけ。
誤解もないだろうし。
ずぶぬれの表情を見せておけば、
その悲しみも伝わりやすいだろう。

さて。
べたなよくある表現以外で、ぴったりな表現は、
どう考えればいいだろう。
僕は、その人の文脈に寄り添うことで生まれると考えている。

たとえば男が悲しむのと女の悲しむのは違う。
電車の運転手が喜ぶ場面と刑事が喜ぶ場面は、
まったく異なる場面になると思う。
子供が怒る場面と年寄りが怒る場面は違うだろう。
つまりは文脈だ。
だけど、その職業や性や年齢の、よくある場面になっているのなら、
やっぱりそこには魂はこもらないだろうね。

その人ならではの、
その文脈ならではの、
新しい表現になると、「その人のオリジナルストーリー」になるからだ。

つまり、
その人は、ほかの人が生きていない人生を生きないといけない。
だから、オリジナルなストーリーになるのだと思う。


初心者のころは、悲しい場面で雨が降ってもいいと思う。
だけど、二回目になるなら、別のやり方を考えることだ。
豆腐をもって悲しむ場面だって、文脈によってはあり得るし、
涙が鹿せんべいを濡れせんべいにする場面だっていいわけだ。
いろいろなやり方が出来る。
それが心に来るほうが名場面になるだろう。

悲しむ場面を例にあげたが、
いろいろな場面でつくれる。
もっとも作りやすいのは、登場人物の登場シーンだろう。
その登場人物がオリジナリティにあふれているほど作りやすいのではないか。
でもそれだけで次がないのは出オチになるので、
彼らのそれからのストーリーラインで、
オリジナルの場面をつくれると面白くなると思う。
そうやって、魂はこもっていく。


今新作のプロットを考えているんだけど、
よくある場面をやめて、
どういう場面なら面白いかなあ、と思って、
オリジナルな場面をつくることができた。
今は詳しく書けないが、
これがあることで、このキャラクターが、
よくある人から、立った人になったと思う。
こうなったらしめたもので、
ほかにもいくつかそういう場面を考えていくことになるわけ。
そうすると、
通り一遍じゃない、オリジナルなキャラクターに魂が入っていくと思う。

僕が推奨するのは、
このあたりで名前を与えることだね。
魂がこもった場面を思いついた時点で、
「男」「刑事」「ラーメン屋」みたいな一般的な名称ではなくて、
高橋とか小林とか谷田とか、
個人になってくる。
平凡な名前がいいのか、もう少し特別な名前がいいのかは、
その人による。
魂のこもり方でも変わるかもしれない。
posted by おおおかとしひこ at 07:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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