2025年04月05日

映画を線で見る方法

凄い当たりにまず出会うことが必要なのだが、
もし当たった時に、
点と点の離れた関係ではなくて、
関連した線として見ていく方法を伝授しよう。


それは、
同じ監督でたどる、同じ役者でたどる、
同じジャンルでたどる、同じ制作年でたどる、
という方法論だ。


【同じ監督でたどる】

T2を例に挙げると、
この映画はジェームスキャメロンの作品である。

だからキャメロンという監督を知り、
その前に作ったもの、後に作ったものを調べるのだ。

前には、ターミネーター、エイリアン2があることがわかる。
どちらもキャメロン史、SF映画史で欠かせない作品だ。
アビスもある。T2000の技術はここからだね。

後には、不動のタイタニックがあり、
そしてアバターがある。
これらを紐解いていくと、
自分はT2のどこに惹かれたのかを言語化できる。
これが線で見ることになるわけだ。

映画が好きな人は、
まず好きな監督がいる。
100人くらい監督はあげられるでしょ。

通になると、
脚本家でたどったり、
プロデューサーでたどったり、
カメラマンでたどるようになる。
映画を要素分解していくんだね。


【同じ役者でたどる】

これはわかりやすいのでみんなやるだろう。
T2でいえばシュワルツネッガーでたどればいい。
コナンザグレートに辿り着けば本物だ。
もちろん、キンダーガートンコップ、コマンドー、
バトルランナー、トータルリコールは外せない。

ジョンコナー役のエドワードファーロングは、
あまり役に恵まれなかった。
現在の写真を見たらひっくり返ること請け合いだよね。
個性的な役者に育った。

音楽やCGでたどる手もある。
音楽の人はブラッドフィーデルで、僕は名前を知らなかったが、
告発の行方やトゥルーライズなどをやってるので、
その中からまた別の線を見つけることもできるね。
主題歌のガンズアンドローゼスで、
ヘビメタにハマるのも一興。

CGだとデジタルドメイン社なので、
ここが担当した映画を見るのもたまらんよな。



【同じジャンルでたどる】

この話はSFアクションである。
タイムスリップでもある。
擬似親子の話でもある。
このようにキーワードを考えて、
「擬似親子 名作 映画」などでググればいい。

試しにやってみると、wikipediaに、
Category:疑似家族を題材とした作品
があって100本くらいリストアップされてる。
ニュースだと「ミッドナイトスワン」が引っかかって、
へえ、じゃあ見てみようかなと、
また別の名作に出会える確率をあげるわけよ。

SFやアクションやタイムスリップは、
死ぬほど名作があるのでまた探してくれ。



【同じ制作年でたどる】

実は結構重要。
その時代の空気感や、その対抗馬に何があったのか、
なんてことがわかる。
T2は1991年アメリカ映画なので、
同年のアメリカ映画を調べていくとおもしろい。

ちなみに日本の1991年の興行トップ10は、

1 ターミネーター2
2 ホーム・アローン
3 プリティ・ウーマン
4 トータル・リコール
5 おもひでぽろぽろ
6 ドラえもん のび太のドラビアンナイト
7 ダンス・ウィズ・ウルブズ
8 男はつらいよ 寅次郎の休日 / 釣りバカ日誌3
9 ドラゴンボールZ とびっきりの最強対最強 /
   ドラゴンクエスト ダイの大冒険 /
  まじかる☆タルるートくん 燃えろ!友情の魔法大戦
10 ちびまる子ちゃん

なんてなってる。
アメリカ映画だけで見ると、
ターミネーター2、ホームアローン、プリティウーマン、
トータルリコール、ダンスウィズウルブズと、
傑作揃いの豊作年だったことがわかる。
それに対抗する日本のアニメもなかなかのメンツだ。

へえ、じゃあこの線で流すかー、
なんてやってみると、
面白いものに出会えるかもね。




こうして、
映画同士を線で結んでいくと、
映画史、文化史のようなものが、
ネットワークとして繋がっていることがわかる。

もちろん全部を知ることはできないが、
バラバラの点ではなくて、
T2はSFアクションはエイリアン2と同じジャンルで、
タイムスリップ的にはバックトゥザ・フューチャーと似たアイデアで、
未来は暗いというのは北斗の拳と似ていて、
擬似親子物語としてはふつうの映画とかわらず、
キャメロンの出世作である、
なんてことがわかるようになり、
他の映画たちとつながってることがわかる。

こうしたらしめたもので、
あとはネットワークを広げ、深くしてゆくのだ。

同時代に生きてた時のそれは、
空気感の記憶があるから理解しやすいが、
知らない時のそれは、
こうやって調べていくしかない。
もちろん同時代を生きた先輩に、
T2って公開時どうだったんですかなんて聞いたら、
2時間くらい話が盛り上がることうけあいだ。

こんな風にしていくと、
映画は全部繋がってることがわかるし、
名作はどうして名作で、
駄作はどうして駄作なのかも言語化できるようになってくる。
名作つながりなのに急に駄作になったのはなぜか、
駄作の中に急に名作が出てくるのはなぜか、
なんてのも考えられるようになってくる。

もちろん、映画だけが単独にあるのではなく、
漫画ともアニメとも音楽ともファッションとも、
つながっている。
こうやって、文化はつながったネットワークをもっている。

今存在する文化だけでなく、
過去に存在したネットワークともつながっている。

オッサンオバサンが、
今の流行りを見て「昔の方が良かった」というのは、
単なる思い出補正の場合が多いのだが、
今がマジでT2見てない場合もあるわけさ。

そりゃT2見てしまったら、
そのへんのSFアクションが物足りないし、
もっと面白いタイムスリップ見せろってなるし、
もっと深い擬似親子の話が見たいとなるし、
T2000以上の絶望的なバトルを見たいとなるし、
未来への力強い決意を見たいし、
デデンデンデデン以上のテーマ曲聞きたいでしょ。

こんな風にして、
文化は進歩しているのだと知るべきだ。



ということで、
昔に比べてググれば出てくるので調べやすい。
その代わりハズレにも出会いやすいから、
一長一短だ。
昔はパンフを買うか、映画雑誌でしか調べる方法がなかったよな。
あとレンタルビデオに書いてあるスタッフ名な。

線で見よう。
名作から名作には、すぐに繋がっていない。
いくつかの作品を経て、
まったく別の質になったときに、
また名作に出会えるよ。

映画はそうやって見ていくのがいいと僕は思う。
ただランダムに見てもつまらんよ。

ランダムに見るのは、これまでのネットワークの外のものに出会うときだ。
インド映画はそうやらないと出会えないよな。
posted by おおおかとしひこ at 12:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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