実は自作キーボードの世界に、
親指シフトの発想は半分溶け込んでいる。
逆にいうと半分は溶け込んでいない。
その話をする。
すでに溶け込んで一体化している部分は、
「親指をレイヤーキーとして使うこと」だ。
他の指と協調して使うのは、
親指が妥当である、
(逆にいうと、
人差し指シフト、中指シフト、
薬指シフト、小指シフトはうまくいかない)
というのが親指シフトの発想だ。
ほとんどのレイヤーキーは、
自作キーボードにおいて親指位置にいる。
よほどキー数が少ない、30キーなどは置いといて、
親指にレイヤーキーを配置しているものが多い。
これは親指シフトみたいなもんだ。
だがこれをもって、
親指シフトは自作キーボードと融合したというのは早合点であろう。
実際、自作キーボードには、
親指専用キーが豊富なものが多く、
レイヤーキーを複数持てるように、
あるいは操作系(カーソル、BS、エンターやIMEオンオフ、
あるいはモデファイアを親指でやる)
のために割いてあることが多い。
だから富士通の親指シフト配列はもちろん使えるし、
それ以外でも使えるのだ。
両者は「親指を活用する」という点において、
上位集合に属するわけだ。
では親指シフトにあって、
自作キーボードにないものはなにか。
ふたつある。
ひとつめは、
「親指キーとの同時打鍵」だ。
これは素早い入力を可能とする。
親指キーと組み合わせるキーの順番が前後しても、
両者の打鍵タイミングが近ければ同時とみなせるため、
高速で打ち続けることが可能になる。
「レイヤーキーを押しながらA」や、
「レイヤーキーをホールド100msしてからA」
などのようなゆっくりしたテンポではない。
欠点は、都度毎回シフトをしなければならないこと。
打鍵数が増えて疲れることだ。
親指シフトを直接見た人の証言では、
まるでマシンガンのようであった、
というのはよく聞く。
これは、毎度毎度親指を叩いていることや、
それによる高速打鍵がめまぐるしく、
よく分からない人にはマシンガンに見えたのだろう。
この、利点と欠点の表裏一体が親指シフトだ。
親指シフトは利点だけが強調される傾向にあるが、
この批判点はあまり出てこない。
自作キーボードの使い方、
たとえばレイヤーにマイナーな記号を置く、
などでは有効な方法とは思えないため、
自作キーボードでは親指同時打鍵を採用していないのだ。
ふたつめは、
同手シフトと異手シフトで役割を変えたことだ。
親指シフトは、
同手シフト(右手と右手親指を同時に。左手と左親指を同時に)は、
マイナーなカナを打つために使われ、
異手シフト(使う親指と別の手を同時)は、
単打面の濁音を打つために使われる。
このような手と役割を変える感覚は、
自作キーボードでは使われていないアイデアだ。
左右分割で使われることがあるかもだけど、
明確に、左-左、右-右/左-右、右-左で役割を変えているものは、
あまり見ないね。
なので、ここはアイデアをいただく余地があると思う。
同手のほうが使いやすい、
というのは親指シフトの知見だ。
僕は右親指+右手にはテンキー、
左親指+左手はBlender用ショートカット、
に役割を限定している。
こういう面ごとに使い分けるのは真似できるところ。
逆に自作キーボードにあって、
親指シフトにないものもある。
タップとホールドで役割を変えることだ。
タップでBS、ホールドでCtrl、
タップでスペース、ホールドでShilft、
タップでIMEオンオフ、ホールドでレイヤー、
などがよく使われる。
タップで文字、ホールドでShiftやCtrl、
なども30%では使われることも。
こうした知見は、
親指シフトや新配列に輸入してもよいと思う。
これまで含めて配列とするか、
文字配列は別と考えるかはそれぞれだが。
親指シフトは40年前の思想ではあるが、
人間の手の形や機能は変わってないので、
今でも新鮮であると思う。
進化したとすれば、
左ロウスタッガード以外のキーボードが自作できるようになったこと
(カラムスタッガード、格子、放射状、grinやtreadstoneやlotus、
左右分割もふくめ)だ。
これによって、文字配列はさらに洗練される可能性が高い。
キーキャップも自由だし、平面でなくて良いし、
親指にたくさんキーがあっても良いのだ。
このような進化に対して、
親指シフトを語る人たちはなんだか昔の知識でものを話している。
もったいない。
天キーとか来て、実際に触ってみればいいのに。
2025年04月15日
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