と、僕が勝手に総括してみる。
(僕が配列界隈に入ったのは2017年以降の新人なので、
異論反論あればコメントにください)
親指シフト勢が競技を独占したのは80年代初頭。
その時のコピー打鍵の記録は920字(変換後)/10分。
今の僕の創作文1500よりはるかに遅い。
今の毎パソだと2000越えだ。
配列勢が盛り上がった時期はいつかと考えると、
kouyさんがタイプウェルにハマってたのが2005年の記事だったので、
タイプウェルRの2005年当時のランキングを想像してみた。
幸い、記録達成日時があるので、
2005年いっぱいまでを数えると、
当時はローマ字のZランクに13人しかいなかった。
一部の神は置いといて、Xランクがボリュームゾーンだったと推定される。
https://uaaaaaaaa.com/typing/tw/allrank?type=KR
当時Xの半ばあたりだったとしても、
「追いつけるのではないか、
ひょっとしたら追い越せるかも?
少なくとも戦えるレベルになるのでは?」
なんて機運があったのではないかと思われる。
当時の2chなどを見ても思う。
俺たちの科学が、
劣悪なqwertyを倒せるぞ、
それを証明しようぜ、なんて空気感だ。
ところが、
それから競技勢はさらに加速して、
今や配列勢の手の届かぬところでバトルしている。
同出典によればZランク140人。
配列勢では、
速いローマ字の人でも秒間10〜12打くらい?
15行く人いるのかな?
今競技のトップレベルは20打(ローマ字。秒12カナ程度)くらいだ。
残念ながら、食らいついてないといえる。
そもそもの配列設計理論、特に速度に関しては、
当時からほとんど進化していない。
新下駄の完成(2010)とともに、
一通り理論が固まってしまったようにも思える。
それほど新下駄の完成度が高く、
理論的にも納得できてしまったのかもしれない。
だけど競技勢は、
以後15年理論的な発展を遂げ、
あるいは努力を積んで、
もう追いつけない領域にいる。
当時の空気感のままの感覚の人が、
「配列を変えれば速くなる」
と思い込んでるのではないか。
いまだに「親指シフトは速かった」と、
現状を知らない老人たちのように。
(現在の競技は40年前の2倍以上速くなってます)
同時打鍵は秒10カナ限界くらいじゃね?
と言われ始めたときから、
それを競技勢がはるかに勝るスピードになってしまったので、
同時打鍵配列は競技レベルから脱落したのかな。
いろは坂が順次打鍵で爪痕を残せたくらいか。
いうて、作者のめんめんつさんはタイパーだしな。
つまり、配列勢はここ15年くらい、
競技速度レベルで戦える配列などほぼ作ってない。
実質、実用が生息領域だと思う。
そもそも僕がカタナ式や薙刀式をつくったのは、
小説や脚本を楽に書くためであり、
競技目的ではない。
同様に、現在の新配列勢は、
競技速度よりも実用を目的としていると思う。
ぶっちゃけ、
実用文を書いている時は秒3カナで十分で、
トップスピード秒5カナもいけば速すぎるくらい。
ローマ字換算で秒8.5打が上限あたり。
現在の競技勢が、現実離れした速度帯に上がってしまったのだ。
「現実離れ」の根拠は、
KIHにおいて僕が収録した、
テルさん、たのんさん、白狐さん、
3人のタイパーの日常文(アドリブ)と、
配列勢の上位が競技結果ほど大差なかったことからだ。
指は当然タイパーの方が速い(2〜3倍)のに、
自分で文章を書く段になると、
差が圧倒的に縮まってしまう(1.2倍程度)。
このことから競技速度は、
いまや現実離れしすぎた領域に入っている、
と僕は考えている。
競技トップレベルの人は、
僕より3倍は速いので、
じゃあ僕の1500の2〜3倍、3000〜4500字(変換後)/10分で、
アドリブでなんか書けるのかというと違う。
2000も行かないと思われる。
(競技勢の方、たとえば「自分の趣味について」でよいので、
10分以上黙々と打ってみてください。
3人しかデータがないので、もっとみてみたいです。
パソ活さんも実用文は速くない旨をコメントで書いていた)
配列勢は、
結果として日常実用レベルで、
楽して速くなることまでは達成していても、
一回りも二回りも違う、
競技レベルではこの15年何もしてないに等しい。
(いろは坂、新下駄を除いて)
しかし一方この先、
競技用配列設計の機運が高まり、
何かしらの結果が出れば面白いなーと、
僕は野次馬的に期待している。
僕個人は無理だな。
しょせんタイプウェルSS(秒5.5カナ)だ。
競技勢トップレベルのことは、
トップレベルじゃないとわからないだろう。
そして競技者の選手生命はそんなに長くないだろうから、
現役を続けながら新配列と同時並行は無理だろう。
引退パーが趣味で競技レベル新配列をつくるしかないかな?
配列勢は「新配列は速いのだ!」とアピールしたいけれど、
それは所詮日常実用レベルであって、
桁の違う競技レベルでは決してない。
公道最速であり、F1最速ではない。
現状の新配列の速さは100キロ。300キロじゃない。
100キロは速いけど300から見たら遅い。
そこのところを忘れなければ、
F1に乗らないほとんどの人にとっては、
新配列は有用な手段になると思う。
僕はqwertyは遅いとは言ってない。
qwertyは手を壊すと言っている。
qwertyは魔の配列だ。
薙刀式は、「物語を書くための配列」と、
最初から宣言している。
おもしろいことや感動することやたのしいことや、
グロいことや悲しいことや理不尽なことや、
人生の味を書くための道具だ。
そのために自分の思いつきを取りこぼさない速度で書くための配列だ。
そして、手を壊さずずっとタフに書き続けるための配列だ。
もちろん、失われた20年を超えて、
競技勢を負かして、
「qwertyは遅いんだよー!」って言う人が現れたら面白いよ?
でも屏風に描いた虎を捕まえたけりゃ、
屏風から出してみることだ。
秒間20打(秒間12カナ)を新配列で出してから言えばいいさ。
英語タイピングにおいてはDvorakやColemakやその他は、
結果を出してるんだっけ?
だったら可能性はあるかもしれない。
(追記)一覧表作ってみた
S 競技レベル: 秒20打(秒12カナ)
S' 競技に肉薄した新配列: 秒10カナ程度(月配列、いろは坂、新下駄)
A 実用レベル: 秒8.5カナ(秒5カナ)、1500字(変換後)/10分
A' 「指が喋る速度」: 秒3〜4カナ
B ビジネスタイピング1級: 秒4打(秒2.5カナ)推定。700字/10分
C 一般人
AとSの差が開きすぎだと思うな。
2025年05月02日
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タイプウェルトップ層はとてつもなく速く、配列を工夫したくらいでは(いま新配列を使っている人が)追いつけるものではない、という認識は2000年代前半から配列制作者側にもあったと思います(ランキングの記録達成日時は、2005年当時すでにZに到達していても、それ以降に更新したらその日付になっているのでは?)。
少なくとも、下駄でも新下駄でも自分が追いつけるとはまったく思っていなかったです。自分のブログでも「あきれ果ててしまう」とか「Zレベルが存在すること自体想像できない」などと書いてますし。
https://kouy.exblog.jp/22285/
配列側が考えていたのは、工夫した配列をタイパーに使ってもらえればQWERTYローマ字以上の記録が出せるんじゃない?ということだと思います。自分もそう思っていた時期がありました。
それがそういうものではないという認識が、配列側にも広まったのは、2000年代前半からの時間感から見るとわりと最近のような気がします(タイパー側はもっと前からわかっていたと思います)。2011年発行の『タイピング Professional』のW/HさんとQuvotaさんの対談の中で「左右交互打鍵が打ちやすいというのは競技タイピングにおいては大嘘」「配列屋さんとは見えている世界が違う」というような話があって、自分はこのあたりから徐々に認識が変わっていったと思います。
ようするに、競技タイピング界が進化したから配列界が追いつけなくなったのではなく、昔も今も配列界で生まれているものは競技タイピング界とは関係なかったということだと思います。
貴重な証言ありがとうございます。
なんとなく配列屋には2種類あって、
本気でちゃんとタイプウェルなどをある程度やった人ほど、
タイパーとの差を感じてて、
自分でやり込んでない人は、
行けるのでは?と思ってるような気がします。
僕はカタナ式でも薙刀式でも一応どこまで行けるか、
一時期本気でやったつもりなので、
前者の側でものごとを眺めてる感じです。
そもそも競技勢に新配列で勝ちたいんだっけ?
と、ちょっと分からなくなってきました。笑