2025年05月06日

【薙刀式】「速い」の解像度

が人によって違う。
無知もあれば実体験のなさもある。
だから混乱と(誤解による)すれ違いが起きる。


ウサインボルトはマラソンで高橋尚子には勝てない。
F1は日本縦断で長距離トラックに勝てない。
競輪選手は自転車便を続けられない。

なぜか?
燃費の問題だ。

初期に積んだ燃料を、一度も補給せずにゴールに行く場合、
ゴールが近い時と遠い時で、
燃焼効率を考えなければならない。

ごく短距離で爆発的に燃料を消費するのと、
とても遠い距離で燃料を節約しながら、
では、考え方が異なるのだ。

「速い」を平均速度で考えると、
短距離>長距離だ。
だけど短距離の速度で長距離を走ると、
ガス欠になる。

長距離走は、ガス欠にならないように走るやり方のことである。


タイピングにおいて、
短距離走で「速い」というとき、
打鍵と打鍵の間隔の短さ、
正確性がとくに重要になってくる。
(指の速度そのものはおそらく上位でそう変わらないだろう)

タイピングにおける長距離走は、
労力のかからなさ、強い指を使い弱い指を使わないこと、
次の文字を打つのがすばやく楽なこと、
途切れないこと、
などを「速い」というのだ。

いや、言葉上の「速い」と直感的に合わないので、
「早い」がいいかもしれない。

短距離走は「うおおお速ええええ!」が正しいリアクションで、
長距離走は「うおおお早ええええ!」が、
正しいリアクションであるはずだ。

このように「はやさ」への解像度が低いと、
短距離選手基準で長距離走を見たり、
長距離走基準で短距離走を見たりしてしまう。
短距離走がガガガと派手な音を立てるからといって、
長距離走では音すらしないほうが早さに直結する。

同じことをやってるように見えて、
時間が違うだけでしょ、だからややこしい。


さらに話をややこしくしているのは、
コピー打鍵と創作打鍵の違いだ。

基本的に競技は条件を平等にするために、
「問題文をコピーする」が標準だ。
初見、事前練習ありで条件分岐はするものの、
コピー打鍵がふつうである。

コピー打鍵と創作打鍵で、
やってることは違うと僕は考える。

コピー打鍵は、手の制御に全面的に脳を使う。
だが創作打鍵は脳は文章を考えるのに使う。
手の制御に割いてるリソースはない。
運指最適化?チャンク化?
文章の質が下がることはやらない。


主に二つの派閥がある。

短距離走コピー打鍵と、
長距離走創作打鍵だ。

前者がタイパー界隈、
後者が新配列界隈、自作キーボード界隈だ。

(長距離走コピー打鍵は速記界隈、
短距離走創作打鍵は俳句界隈だろうか?)

こんなにも異なる速さの種類であるというのに、
なぜ一方の議論をもって、
他方の議論を理解するのかがわからない。

「新配列は効率が良いのでタイパーが使えば最速」と、
「タイパーが小説書けば年間30冊出せる」は、
同レベルの解像度の低さだと僕は思う。

残念ながら両方を成し遂げた人がいないので、
「全然違うわ」と実感として言えないところがせつない。

高橋尚子のフォームは合理的なのでウサインボルトに勝てるとか、
ウサインボルトは北海道沖縄間最速とか、
バカでもわかるバカな議論をしないくせに、
タイピングでは「速さ」で混同してる人がよくいる。


それはたぶん、
「速いタイピング」を、競技タイピング(しかも動画映えするやつ)
でしか見たことがないからだろう。
秒間20打!すげえー!しか見たことがないからだろう。

僕の執筆作業を一ヶ月中継したいくらいだ。
その時の「速さ」はまた別物なのだ。
残念ながら一ヶ月のうちタイピングは実際の作業の1/10以下なので、
中継映えしないけれど。

さらにいうと、考えに対して指が圧迫してないという、
脳内リソースグラフも見せてあげたい。
もし脳波が取れてビジュアライズできるなら、
被験者になりたいです。

たとえば打鍵の脳内リソース5%!すげえ低い!
なのに1000字/10分だと?すげえ!
になるんじゃない?


今のところ、
短距離走コピー打鍵用の新配列はないし、
長距離走創作打鍵用のタイパーの技術はない。

たとえば、
「そういう時は」のKIは最適化せず、
「時々」は一連だからKIの最適化をした方がよい、
みたいなことは聞いたことがない。
せいぜい「学習をオフにして変換回数で漢直する」があるが、
創作打鍵で応用してるかは知らない。
(もしタイパー技術の長文創作打鍵への応用、
というテーマで何か書かれていたら教えてください)

だから、そもそも交わってすらいないのだ。

もちろん、どこまで行けるのか、
越境したろ、という冒険心は讃えるべきだ。
でも結果は出てないのだから、
違うジャンルなんじゃね?
と考えるのが普通だろう。

新配列使いはタイパーにオッと言わせる記録を出せ。
タイパーはさっさと小説30冊書け。
それが出来ないなら、「速い」の概念が異なることを、
認めるべきだと思う。


新配列使いは理屈をごちゃごちゃ言ってるが、
競技タイピングで結果を出せないではないか。
タイパーはあんなに速く打ってるのに、
さっぱり論文や小説を書かないし、
文化の進歩を進めないではないか。
それは、「速い」の概念が違うのだ。
目的が違うのだ。

この解像度のないやつがどれだけ速さの議論をしても無駄だ。



薙刀式は、長距離走創作打鍵で戦うための新配列だ。
先日6時間分の脚本(14万字)を書いたが、
薙刀式がなかったら手が折れてた。
このブログは1万記事あるが、大半は薙刀式で書いた。

短距離走コピー打鍵部門では、
タイプウェルSSで、もうちょっと頑張ればXJは行けると思う。
XCとかは無理じゃない?

こんな風に、
速さの質が異なることを数字で実感すれば、
「○○配列でタイプウェルZランク!」とか軽々しく言えるわけないじゃんね。


まあ、そういう人は、
工学部じゃないんだろう。
摩擦を無視したり0℃付近や晴れの日だけ、追求してるんじゃないか。
PCやエミュレータのクロック数やUSBの伝送(6キーロールオーバー)や、
人間の神経や疲労に限界があることすら、
知らないんじゃないかね。


短距離走コピー打鍵は、秒を見ている。
長距離走創作打鍵は、百年を見ている。
その速さが同じものなわけがない。
posted by おおおかとしひこ at 13:08| Comment(2) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
速記のお話が出ていましたので
「メジロ式機械速記」というものを偶然見つけましたのでシェアします。ご存知だったらすみません
https://note.com/jeebis_keyboard/n/n82bb135b8f71

動画で実際に打鍵しているところを見てみたいですね👀
Posted by 名無し at 2025年05月07日 20:49
>名無しさん

初めて聞きました。ありがとうございます。

しかし速記の基本知識がないと読み解けない記事すぎて、
ようわからんとしかいいようがないですねー。
ふつうにカナとか固有名詞とか熟語とか、
和語の漢字とか外来語とか、
そういうのをどう打つのかわかれば、
誰にでもわかる記事なのに…

とりあえず「にゅうりょく」を同時打鍵1アクションで行けるのはわかったけど、
どう応用すればいいのかがわからん。
そして「にゅうりょく」から「入力」にどう落とし込むのかもわからん…

誰向けの記事なんだろう…
動画があればまだ理解しようとできるのかしら…
Posted by おおおかとしひこ at 2025年05月07日 22:23
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