2025年05月23日

伝わらない表現シリーズ

大体新しい電車に乗るたびに、
公共交通機関にキレている。笑
今日はJR目黒駅のこれ。
912757B4-B4BF-4076-8979-B35B4530821E.jpeg


何が良くないかわかる?
その原因はなに?
シンキングタイム。


「わたしたち客は、
品川と恵比寿がどこか知らないこと」だ。

そもそも電車というのは乗り換えが多い。
最初はこちらに進んでいても曲がったり、
乗り換えたら方角なんて気にするわけがない。

私たちにとって大事なのは、
出発地点と目的地と乗り換え駅でしかなくて、
大体は「次の大事な場所」しか頭に入っていない。

ちなみに東急目黒線からJR目黒駅で乗り換え、
新橋を目指していた。
僕にとって新橋しか頭にないので、
せいぜい東京方面くらいしか想起できない。
目黒と恵比寿と品川と新橋と東京。
うーんどっち?

車を運転してたらこれはダメだろう。
地図の中の自分がどこかわからないと意味がない。
だけど電車はそうやって乗るものではない。
自分が新橋に行きたいだけで、
自分の視点からしか見ていない。
それが楽だから、混んでても電車に乗るのだ。


品川ってどっち?恵比寿ってどっち?
そもそもどっちから電車が来るの?
全然自覚したことがない。

もちろん、落ち着いて考えればわかる。
立ち止まり、この線路はこちらへ向かうので、
こっちが品川方面、こっちが恵比寿方面、
と指差すことはできる。
まあ30秒はかかるだろう。

だけど朝の混雑時で全員がそれをやったら、
大パニックだろ。
ということは機能していないわけ。
混雑時に秒で指示を出すことに、
適した表現ではないわけだ。

当然、9、10、11号車がどこらへんなのかも、
俺らは知らんがな。


たとえばこうだ。

「この付近は混雑します。
↓の方面は空いています」

だけでいいと思う。

つまり、客の基準で指示すれば良い。
英語でシンプルに考えると正解が出やすい。
Here Crowded
↓ is Vacant
だけでわかる。文法間違ってたらすまん。



なぜこの齟齬が起こっているか?

「駅員目線での指示」だからだ。


目黒駅の駅員にとっては、
恵比寿方面も品川方面も絶対的にわかり、
9〜11号車がホームのどの辺に到着するかもわかっている。
だから、それを言っても明らかだと思ってしまうのである。

また、「なるべく正確な指示を」と考えてしまうのだろう。
「この付近は混雑します」だと、
「この付近とはどこまで?」とか、
「常に混雑してるわけではないから、
朝の通勤通学時間帯は、というべきでは?」
と、文言を追加して正確にいいたくなるわけ。
結果、
「朝の通勤・通学時間帯 品川寄り9、10、11号車付近は混雑します」
と、正確にいってるわりには、
秒で意味が取れる表現になっていない。

混雑時にこれを秒で理解できるのは、
駅の空間関係、時間関係を把握してる駅員だけである。

また、人が文字を読める速度は6字/秒だ。
これは映画字幕の基準だ。
集中して見てる映画の集中力を使って、
上の文に4秒かかる。
混雑時、人の流れに乗っている時に見れる秒数ではない。


この表現を決めているのは誰か?
駅員が指示し、駅員が決めていると考えられる。

内部のルールだけで動いていて、
「外の人がどう思うか?」まで、
思考が進んでいないのだ。
まあ、駅員さんは正確であるほうがいいから、
正確を心がける態度はすばらしいよ。

だが表現はそうではない。


表現は、誤解を前提としている。

正確にいうと、概ね伝われば良い。
誤解30%を含んでも、70%伝われば良い。

仮に、
「この付近は混雑します。
↓の方面は空いています」
で、
「この付近とはどこまでかわからない」
「いつも混雑してるとは限らない」
「↓は空いてなかった」
とクレームが来たとしよう。

それはそうだ。
それは30%の人なのだ。
それだとしても70%の人がスムーズに↓へ進み、
混雑が緩和されれば表現の意図を果たしたことになる。

仮に100人の客がいるとして、
1件もクレームが来ず、
100人が混雑から解放されないよりも、
30件クレームが来るが70人を助けるほうが、
表現として優秀なのだ。

「表現は人を傷つける」とは、
このようなことをいう。

傷つけてもな目黒駅の混雑が緩和されるなら、
天秤をかけて混雑緩和をとるべきだ。
最大多数の最大幸福原則が正しい。


写真にあげたものは、
1件もクレームが来ないことを目的としている。
人々を「↓」方向へ誘導していない。
つまりゴミである。

ない方が美しい。
posted by おおおかとしひこ at 10:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック