2025年05月28日

【薙刀式】主観と客観

よくある親指シフトの宣伝文句。Twitterから。

> 親指シフトキーボードを使うと、タイピングが驚くほど速くなる!
> 手首の負担も軽減されて、快適な入力が楽しめるよ。

× (他人から見て)タイピングが驚くほど速くなる!
○ (自分から見て)タイピングが驚くほど速くなる!

ここの、主観と客観の差がある気がする。


新配列の存在に気づく、最初の理由のひとつに、
「タイピングが遅い」があると思う。

これは客観的でもあると思うけど、
第一には、
「自分が自分のタイピングを遅いと感じている」
という主観的な感覚だと思う。

「なんかもうちょっとスラスラ書きたいんだよなー」
ということだと思う。

これには単なる速度感もあると思うけど、
qwertyローマ字が持つ、
運指の絡まりや跳躍(ここは客観的)が、
スラスラという感覚(ここは主観的)と程遠いからでもある。

で、
二つあって、
運指の困難なqwertyを、
自分の運指を鍛えることで克服するか、
運指の楽でスムーズな配列に変えるかだ。

前者よりも後者が楽だ。
これは客観的だ。
難易度の高いダンスをマスターするより、
難易度の低いダンスをマスターする方が、
楽であるからだ。


で、親指シフトなどをマスターすると、
得られた主観的感覚として、
「スムーズに言葉を打てる」だと思う。
このことによって、
客観的速度が変わっていなくても、
主観的に速度が上がっているように感じるわけだ。

仮に客観的速度がqwertyより遅くても、
自分の中で速い(思いから定着までの抵抗が少ない)と、
速いと感じる。
自分の中で、事実として速くなる。
これは、自分の中の感覚的実感だから、
事実のように感じるわけだ。

親指シフトで爆速!
という都市伝説は、90%くらいはこの実感、
主観的感覚に支えられている気がする。

客観的数値としては、30年前のコンテストで、
920字(変換後)/10分のレベルで、
当時としては最速かもしれないが、
現在の同じ形式のレベルでは2000がトップクラスだ。
これはコピー文だけど、
創作文で言えば薙刀式が1500を出していて、
動画を多数収録している。

こうした客観的速度を、
上のようなツイートをする人は、
意図的に無視しているか、主観の話をしているわけ。

ところが、
それを分からない人は、
「親指シフトは速くなる」だけを覚えるので、
いつの間にか客観の話にすりかわり、
実際手を出しても、
「そんなに速くないやん」と、
色んな人に突っ込まれて終わるんじゃないかな。


自分の中で速くなることと、
客観的に速いことは異なる。

ここを分けて議論した方がいい。

親指シフトでも、薙刀式でも、大西配列でも、
その他「合理的な」工夫を施した新配列は、
自分の中では明らかに速くなり、
そして楽になる。

だけどそれと、客観的に速いかは、
別問題だということだ。


たとえていえば、
複雑で何枚もかかる役所の手続き書類があるとして、
その複雑な手順を力技で速くするのがタイパーのアプローチで、
「書類を簡単にすればいいじゃん」
が、新配列の立場だ。

結果的な客観速度は、
実は役所の熟練おばちゃんに負けてる、
みたいな現象が現実だ。

だけど全員が役所の熟練おばちゃんにはなれないのだ。

あのハンコとこのハンコをここに用意して、
ここに注目して他は見ない、
みたいなコツのようなものがあるに違いない。
だけど、
「そんなの全部捨てようよ」とするのが、
新配列の立場なんだね。

主観的にはスッキリして楽になる。
しかし客観的には、熟練おばちゃんが最強、
というのが現在地点だね。


ぼくは、おばちゃんが全部死ねばいいと思っている。
おばちゃんの適応の努力は賞賛するが、
それは本質ではないと考える。
進化の袋小路にいることはない。
次の進化へ行くべきだと。


そういった、
自分から見た速さの話と、
他人から見た速さの話が、
全然シフターから出てこないのが、
もう親指シフトは死んでるんじゃね?
と死体蹴りをしてみることにしようか。

いっとき「楽」なんだと議論があったかもだが、
それは一体どういうことなのかを、
詰めた話がなかった。
親指シフトが議論をできるほどの道具じゃなかったか、
使い手の議論力が低かったのだろう。

結果、上のような情報の切れ端みたいなツイートが、
ネットの海をゴミのように漂うことになるのだ。
posted by おおおかとしひこ at 14:09| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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