2025年06月08日

光と闇の逆転(ピーターシェーファー戯曲「ブラック・コメディ」評)

「アマデウス」のほかのピーターシェーファーの戯曲も読んでみたかったので、
色々取り寄せた。
この「ブラック・コメディ」のアイデアにびっくりする。

停電のアトリエが舞台。
電気やろうそくがついてるときは真っ暗で、
真っ暗という設定のときは明るくなる、逆転の舞台照明。
つまり、「暗闇で人は何をしているか」を、
照明を逆転させることで表現するわけだ。

こんなんを1965年で既にやってたのか。

ネタバレなしで続ける。


面白いのは、
暗闇の中で、
人は嘘をつき、騙し、嘘の上塗りをし、
ごまかし、バレないようになにかをし、
ジュースと言って酒を飲み、
他人のフリをする、
などを描いて、
「表の顔と違う何かが人にはある」
を浮かび上がらせている点だ。

いわゆる皮肉的批評になってて、
暗闇とブラックコメディがかかってるというわけ。

暗闇なのでぶつかりそう、
実際にひっくり返る、
などのアクション的面白さも使いつつ、
実際のところは嘘がどんどん暴かれていく、
という体の構成だ。

このアイデアを使っていいから、
自由に一幕ものの演劇を書いて、
と言われても、
ここまで構成できるかは難しいんじゃないか。

オリジナルなアイデアを出したら、
それをとことんまで追求した、
第一人者の台本にせよ、
などと僕はよくいうが、
停電逆転もの?の最高傑作ではないだろうか。


あなたならどういうシチュエーションにする?
どういう人間関係を構築する?
焦点は何で、どういうことを縦軸にする?
発想は自由だが、ここまでの完成度で書けるかなあ。

現在古本でないと手に入らないので注意。

ブラック・コメディ ピーター・シェーファー
倉橋健訳
劇書房 昭和57年
posted by おおおかとしひこ at 20:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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