という面白い名前の作劇理論があって。
ストーリーが行き詰まった時、
「突然忍者が現れて大暴れして、
悪者は死ぬ(あるいは全員死ぬ)」
という何も前振りのない展開にしたとする。
なにい?!ニンジャが乱入?
バッタバッタと大活躍して全滅ううう?
という面白さなわけだね。
サプライズニンジャ理論とは、
「このサプライズニンジャの面白さに負ける展開は、
つまらない展開である」と定義する。
サプライズニンジャに負けるようでは、
脚本家が上手におもしろい展開を提供できなかった、
という敗北宣言なわけだ。
唐突な忍者の乱入の方がおもしろいということは、
現在ストーリーは、
焦点がわからなくなり(次何をするべきか見えていない)、
仮にあったとしてもそこに期待できていない
(ハラハラドキドキできてないし、
焦点がゴールとどう結びついているか明確にできていない、
またはゴールが見えていない)し、
そもそもゴールに興味が持てていない
(主人公たちがそれを達成することに、
真剣に感情移入できていない。
それに失敗したら失われる価値を、
我がことと結びつけられていない)、
という状態にある証拠だ。
もっとも、
こうした状態は脚本を書いているときに、
しょっちゅうある瞬間であり、
脚本家が地獄の苦しみにおちいる瞬間でもある。
だからサプライズニンジャが来ればいいのに、
という破滅願望を笑ったわけだ。
これはデウスエクスマキナに頼りがちな、
脚本家の心理とつながっている。
デウスエクスマキナは、
「物語外からやってきた超越者
(たとえば神、大自然の猛威、スーパーマン、
すごい警察など)が、
いきなりストーリーを解決しておしまい」
になるパターンをいう。
「駅馬車」の騎兵隊オチ、
「ドラえもんのび太の恐竜」のタイムパトロールオチだ。
これは、
「主人公たちが事態を解決するゴール」を、
期待し続けた観客への裏切りであり、
逆に言うと「すいません解決できませんでした!」
という脚本家の敗北宣言だ。
デウスエクスマキナは、
中世の演劇でよく見られたという。
なんか適当におもしろいもんでも出し物として出して、
困ったら神に解決してもらえ、
という適当が支配していたのだろう。
なんならデウスエクスマキナ用の登場口まであり、
ここが開いたらストーリーはクライマックス、
というお約束もあったらしい。
まあ、神の解決やサプライズニンジャに、
負けるほどのくだらないストーリーを書かないことだ。
実際、そんな劇薬に頼らなければならなくなったら、
一旦立ち止まることである。
ここから突破するのではなく、
「引き返す」ことがおすすめ。
つまり、いま行き止まりに来ているから、
もう少し前に戻って、そこから書き直すと良い。
具体的には、
今のシーンを破棄し、前のシーンから書き直す。
それでもサプライズニンジャに負けそうなら、
そこも破棄し、その前のシーンから書き直す。
それでもサプライズニンジャに負けそうなら…
を繰り返して、
軌道修正すればよい。
え?ファーストシーンまで戻ったって?
あんたには才能がないのでやめなはれ。
それでもやりたいなら、
涙を流しながら、血を流して、歯を食いしばって、
もう一本おもしろいものを書きなはれ。
あなたの苦労と、
ストーリーの面白さは関係ない。
比例もしないし反比例もしないし、
一定の法則もない。
ただ関係ないだけだ。
なぜなら、ストーリー作りは、
毎回これまでになかったものを作る行為だからだ。
そもそも法則などない。
あるおもしろいものは、次はおもしろくない。
おもしろいとは、新しいことをやることだからだ。
あるとしたら、「失敗の経験則」のみである。
サプライズニンジャ理論、
デウスエクスマキナは、それらということだ。
ちなみに、
https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E7%90%86%E8%AB%96
によれば、浄瑠璃や歌舞伎にも似たようなものがあり、
「さしたる用もなかりせば」
と名前のついてるサプライズニンジャがいたらしい。
源義経だそう。
このニンジャは暴れてストーリーを壊すことはなく、
ただ出て帰っていっただけらしい。
へえ。
そういえばタイムボカンシリーズでは、
「豚もおだてりゃ木に上る」とか、
「惜しい惜しい惜しい惜しいなーもうちょっとー」とか、
その楽曲を奏でるためだけにキャラが出てきたが、
この人形浄瑠璃の伝統を引いてるのかもしれないね。
で、
現在オンエア中のジークアクス11話で、
これっぽいのが出てきてネットがざわついている。
次最終話なんだよな。とんでもない駄作になるのでは?
以下ネタバレ。
パラレルワールド(正史?)から、
ファーストガンダムが来たのだそうだ。
???
どうやらジークアクスの世界は、
ララァがつくったパラレルワールドらしく、
シャアが死ななかった世界を作っているらしい。
それをぶっ壊すために正史からガンダムが召喚されたと。
???
これでいまサプライズガンダム理論、
などと言われているらしい。
ストーリーが煮詰まって、
突然現れたガンダムが暴れて、
大立ち回りをする面白さがまさるなら、
ジークアクスは駄作であろう。
暴れなかったら出オチ。
暴れても出オチ。
偽物でしたー、でもひどい出オチ。
さあどう出る。
とんでもないカードを切ったものだ。
なお、Zでは「アムロふたたび」は神回であったが、
その後のアムロは全然つまらなくて、
出なくて良かったまである。
新訳Zではそのようになってて、
じゃあそもそも1回も出さなくていいじゃん、
と突っ込みたくなる。
つまり、唐突のアムロ登場よりも、Zはつまらなかったわけだ。
この轍を踏むか、オラワクワクしてきたぞ。
(まったく見てないし、リアタイで見る気もないが)
そうそう、車田漫画で「カムイ」が出ると打ち切りフラグ、
と昔言われていた。
ガンダムの続編においてアムロ(ファーストガンダム)は、
そういう扱いかもしれないね。
2025年06月18日
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たまにある批評する回(古くは実写ガッチャマンやパシフィックリム、最近だとΖガンダムとか)は具体例が分析してあってとても参考になりますので…w
まあ……気が向けば……
新訳Zでもう疲れたので……