2025年06月20日

「言葉のセンス」というものはない

と僕は思う。

「言葉をたくさん知ってるかどうか」はあると思う。


言葉をたくさん知ってるということは、
辞書をひたすら読んで覚えたのでない限り、
「たくさんの言葉を見てきた」ということだ。

それはどのように使われて、
どれがわかりやすく、
どれが心に響き、
どれがダメだったか、
どれが分かりにくかったか、
などをたくさん見てきたはずだ。

つまり、批評眼があるということだ。


言葉を書くということは、
言葉を組み合わせることである。
単語を発明することではない。

どう短くても2語を組み合わせるのだ。

それをセンスのいいものに仕立てるには、
たくさんの言葉を知らないとできない。

なぜなら、
センスのいい言葉は、
センスが良くなるまで組み合わせるしかないからだ。


つまり体育会系なのよね。
「もう組み合わせる言葉がないよう」
ってなったら終わり。

それまでにセンス良い言葉が出ない人を、
言葉のセンスのない人とよび、
センスの良い言葉を出すまで粘れるほど、
たくさん知ってる人だけが、
それに耐えられるだけのこと。

そのOKの基準も、
たくさん見ているほど厳しくなるだけのことだ。

つまり、
一つのセンスの良い言葉の裏には、
たくさんの死体が転がっているだけの話だ。


言葉のセンスというと、
何も考えずスラスラと出てきた言葉が、
全部センスがいい、
みたいなものを想像してしまう。

たとえば、
服のセンスが良いとか、
選曲のセンスが良いとか、
選ぶ店のセンスが良いとかは、そんな感じだ。
だけど、
それらはある程度のテンプレを学べばなんとかなる。
最悪コピペでもよいからね。

言葉はそうではない。
なぜなら、「毎回オリジナルを書くから」だ。

もちろん始末書とか時候の挨拶は、
テンプレでいいよ。
退職届にワードセンスはいらない。

言葉がオリジナルを要求される場面で、
すべてワードセンスが問われる、ということだ。



センスのある人がスラスラ書いたものが、
言葉のセンスが光るものになるのではない。

なぜなら言葉のセンスとは、
「概念の組み合わせのおもしろさ」だからだ。

何と何をどういう角度で組み合わせるかが、
概念の面白さである。
これとこれが同居すんの?ってことだからね。


少し前だけど、
「放課後ミルクティー」はいいと思ったな。
そこを組み合わせてきたか、
良さげ、と思えた。
別に難しい単語を知ってるわけじゃない。
でも優雅な午後の感じを、
放課後と決めたことで、学園もの、
そして女子もの(男子はミルクティーは飲まないので)、
と組み合わせてきた感じが、
とても優秀なセンスだと思った。


それが良いセンスかどうかは、
それを見た時の解釈やイメージの広がりや新しさもあるけど、
「以後その感じを示すのに、
それ以上的確な組み合わせがない」のが、
良いものの定義のような気がする。


長年使われてるけど、
「映画泥棒」は、いいセンスだと思う。
これ以上短く、分かりやすいものはないからね。
もともとはスクリーン上映をカメラで撮って、
DVDに焼いて発売する行為を言ったけど、
今や違法コピー全般に使われる用語に拡大されたね。
でもまだ全然通じる言葉だと思う。

「おしゃれ泥棒」など、泥棒と映画の相性がいいのも追い風。


「携帯電話」もこれ以上縮められない、
そしてこれがないと示せない概念なので、
とても良いと思う。


こないだ盛り上がったんだけど、
「Yo! Say!たちが夏を刺激する
ナマ脚ヘソ出しマーメイド」
ってすごいよなー、なんて話していた。

これも、言葉をどう組み合わせるかを延々やって、
勢いと盛り上がりがないと、
恥ずかしくて引っ込めてしまうだろうなと。

(ちなみにこの出だしだけが記憶に残るが、
曲名が「Hot Limit」だと調べて知った。
ちなみに楽曲中に一度もHot Limitは言わない。
変なタイトルだ)


なんかオシャレで中身のないものを、
言葉のセンスというのではないことに、
注意されたい。

なんかいいワードセンスだなー、
と思うものがあったら、
どんどんメモしておくことを勧める。
なぜいいと思うのか?
を分析していくと、
なにか参考になるかもしれない。

そして言葉のセンスとは、
ここでこれを出してくるのかと、
これとこれを組み合わせるのかという、
「驚き」を常に伴うことに気づかれたい。

驚きもしないものは、センスがいいとはいわない。
無難はセンスにとって死である。



物知りだけでは言葉のセンスは良くならない。
そこに批評的な目を持ち、
組み合わせの根性ゲームに耐えられる人だけが、
淘汰に耐えられる真の言葉を産むのだろう。

タイトル。キャッチコピー。
セリフの端々。固有名詞。
こういうものに言葉のセンスが欲しかったら、
地味に長年努力する以外にないよね。
posted by おおおかとしひこ at 09:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック