2025年10月01日

その人を理解したら、好きになる

好きになる、まで行かなくても、情がわく。


その人と、表面的な関係性をつくるだけでは、
その人を本当に理解できるとは言い難い。

会社の部長や、取引相手や、
タクシーの運転手や、ラーメン屋の店員は、
ふつうそんな相手だ。
仕事をし、タクシーに乗り、ラーメンを食うだけで、
その人の本当の姿など知ることもない。

その人たちは、
本当の自分を隠してあなたと向き合っている。
それをわざわざ晒す理由がないからだ。

あなたもそうだろう。
全ての人に「私はこんな人間です!」
と言い回って理解を求めてたら、
都会では生きていけまい。
田舎村ならひょっとして上手くいくかも知れないが、
都会はいちいち本当の姿を晒してたら、
きりがないくらい人が多い。

あなたには社会的な、対面的な人格があり、
真の顔がある。
それは、その他の人全員そうなのだ。

ストーリーが始まった時点では、
すべての登場人物は、
とくに親しいと設定されていない限り、
外面をつくろって、内面を晒し合わない関係性として、
設定される。

それが物語の進行時に、
何かのきっかけがあり、
その人の本当の姿がちらりと見えるわけだ。

部長が普段しょうもない人間だとしても、
宇宙人に襲われたら身を挺して守り、
誰かを逃がすような人かもしれない。
タクシーの運転手が渋滞にハマったら、
急に悪口を言い出すかもしれない。
ラーメン屋はほかのラーメン屋に行った時、
真剣に反省するかもしれない。

その時に、その人に我々は情がわく。
この人も人間なんだと思うわけ。

必ずしも善人である必要はないが、
この人は善人なんだと思うと好きになりやすいとは思う。
でもダメな人、悪人だとわかったとしても、
そこに人間的な魅力があれば、
好きになったりするのが人間だ。

つまり、そうした瞬間に、
その人も人間だとわかればよい。
それは、あなたと同じだからだ。
あなたが外面と内面が異なるように生きているのと同様、
その人もそうだとわかると、
その人が人間に見えてくるのである。

ギャップをつくればつくるほど、
その落差が出るのは当然だ。

不良で嫌なやつだったが、
雨の中捨てられた子犬を拾うのを目撃したら、
表面的な理解が急に複合的になるから、
好きになるわけだ。

悪いと思わせて実は善人、
厳しいと思わせて実は優しい、
打算的と思わせて実は熱い。
こうしたギャップに、人は魅力を感じると思う。


それが、いかにさりげなく、
ふと現れるか、ということだ。

日常生活でそれを感じることはほとんどない。
日常の外面をかぶっている。
安定した世界ではそれが安パイである。
だから、非日常が必要なのだ。
非日常で何かをやらなければならなくなったときに、
その人の本当の姿が見えるのだ。

非日常にはなんでもある。
エレベーターが止まるだけでもよい。
借金で死にそうでもいい。
戦争が起こってもいい。
転校生が来るでもいい。

なぜ物語は非日常なのか?
その方がおもしろくてドキドキするから、
でもあるけれど、
もう一つ答えがあって、
その人の外面をはぎ、
本当の姿を見せるため、だといえる。

うちの部が急に戦国時代にタイムスリップしたら、
メンバーの本当の姿はすぐにわかると思う。
まあそうだろうな、という人と、
意外、という人が出ると思う。
そういうことだ。

誰かに協力したり、誰かを助ける人は、
その中でも好かれるだろう。
誰かを裏切ったり、嘘をつく人は、
嫌われるだろう。
それでも憎めない人だと分かれば、
好かれるかもしれない。


あなたは、そのディテールを考えて、
書くのである。

どのような非日常の事件なのか。
どういう状況で、
どんな外面の人が、どんな本当の姿を見せるのか。

そしてその人が好きになると、
ほかの人はどうするのか。

それが変化である。
変化は1回でもいいし、何回あってもいい。

登場人物だけでなく、観客も同様だ。
(役を演じてる俳優が、相手の俳優を好きになったりもするよね)


理解すればするほど好きになる場合もあるし、
理解すればするほど嫌いになる場合もある。

それを計算してつくっていくことだ。

ギャップをつくるのは、
「悪いやつが実は善人」のほうが簡単だ。
「正義の味方がよりよいとわかる」は難しい。
だからたいてい悪いやつが実はいいやつ、
のキャラで溢れてしまいがち。


ラブストーリーはこれが決定的に重要だが、
そうでない話でも、
「人間的に好きになる」は重要な要素である。
観客がそうなれば、
その映画は少なくとも心に残る。

それを一発で決めれるシーンがあったら、
そこは名場面と呼ばれるだろう。
posted by おおおかとしひこ at 08:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック