古本で、
構想社、1979、「12人の怒れる男」
レジナルド・ローズ/額田やえ子訳
を6800円でゲットしたのだが、
戯曲版、テレビ版をベースに、
編集部が勝手に映画版の流れに沿うように改変入れてたやつだった…
wikiによると、
もともとテレビドラマ版(1時間)があり、
それをオリジナル脚本家が舞台用に脚色したものがあり、
それがさらに同じ脚本家によって、
映画化(96分)されたらしい。
僕の記憶では舞台版からだったのに、
それに先立ってドラマがあったことを初めて知る。
同じ脚本家による3バージョンがある、
というのは珍しいな。
映画版よりさらに原型の脚本を読めて、
なかなか幸せであった。
やはり構成が抜群で、
三幕としてつくられているが、
映画のような三幕構成はとくに取っていない。
3番と8番の対立に話を集約させていくのが、
さすがコンフリクトの国アメリカ、
という感じ。
guilty vs not guilty
という対立点もわかりやすい。
で、
おそらくこの三幕は、
CMの入るタイミングを規定していると思われるので、
その幕切れ部分が最高によくできている。
1幕のおわり:
最初に投票で、有罪11、無罪1だったものが、
「ナイフは特別なものではない」とわかったあとの投票で、
これ以上の議論はいらんだろ、もう一度投票して変わらなければ、
議論は終わりだとした投票が、
10対2になって続く、
というのがすばらしくよい。
2幕のおわり:
「殺してやる!」って本当に殺す時にいうかな?
と前振っておいて、
3番と8番の対立をどんどん激化させてゆき、
(2幕はコンフリクトである、という原則通り)
最後に掴みかかった3番が、
「殺してやる!」と思わず言ったら、
「それは本気ではないよね?」と返すキレの良さ。
この、幕切れのターニングポイントが、
ほんとうに面白くて、
「早くトイレにいってこなきゃ!」って、
十分に思わせてくれるんよな。
ターニングポイントはこうあるべきだ。
これまでのことがただ1点に集約され、
「えっ、これからどうすんの?」と、
こっちが前のめりに乗り出すのが理想だ。
単に「つづく」ではなくて、
これまでの幕でのことが全部まとまった形で、
つづくになるべきなのがとてもよい。
映画版を見たのがだいぶ前の記憶だけど、
もし未見の人がいたら見るべき傑作です。
1957年、シドニー・ルメット版を見ること。
2000代のリメイクは見なくて良し。
「偏見や思い込みを、検証でひとつひとつ覆していく」
Aストーリーがとても面白く、
それがBストーリー、
スラムの少年は悪いやつだという偏見との戦いになってるのが、
とてもよい。
Aだけだと飽きちゃうけど、
悪役の3番とその他のメンツが、偏見の塊だから、
それを崩していく理性の戦いともなってて、
そこがおもしろいんよね。
これを超えられないと密室劇とはみとめん、
というくらいの傑作です。
密室劇なのに映画になってるんよな。
2025年06月21日
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