2025年06月24日

キャスティング

何をどうやっても、我々の書くシナリオは、
日本の、今の役者によって演じられる。
これは事実だ。
三船敏郎や原田芳雄に演じてほしくてももういないのだ。

だから、想定キャストを考えておくことは、
とても大事だ。


全員じゃなくてよい。
主要キャストで十分。
事務所が違うと組織するのが大変だったり、
スケジュールの都合もあるし、
そもそも本人が出たくないもあるので、
まあ、主要キャストで第3候補までつくっておくといいよ。

なぜこれを考える必要があるかというと、
「この人をこの役に振る理由」を考えるためだ。


仮に佐々木蔵之介を第一候補に決めたとしよう。
なぜ彼がその役か?ということを考えるわけ。
年齢が近いからだけじゃだめだよね。

その鋭い眼光や実はまじめなところや、
おそらくその中に持っている狂気的な熱情まで、
演じられるのではないか、
ということで、僕は選んでみた。
たまにボケをやらせるのもいいかと思う。
第二候補は永瀬正敏、第三は杉本哲太。
どこかコワモテなのだが、根はまじめで、
行動力がありそうな人、ということで選んだ。

キャスティングを考えるときは、
二種類ある。

この人がこの役をやるとしっくりくる、
という選び方と、
まさかこの人にこの役が? いや、やれたら面白いぞ、
という選び方だ。

順目と逆目ということだ。

僕は、逆目として、高嶋政伸もあげた。
意外な人選だと思う。
でも最近悪役をよくやっているから、そんなに意外でもないか。

こんな風にして、
順目のキャスティングと、
逆目のキャスティングを使い分けて考えると面白い。

それは、人間の観察の参考になる。
その役の見た目や表面を演じてほしいのか、
その役の真実の部分を演じてほしいのか、
ということだ。

そのバランスを、
俳優一覧のホームページでも見ながら、
延々考えるのは悪くないぞ。


たとえば竹中直人は、
もうそういう役ばっかりだよね。
だから、全然違う、まじめ一本の役をやらせたりしたら面白くなると思う。
岡田将生は、繊細なイケメンばかりやらされてきたから、
役の幅が狭くなって、
一時期悪役や変な役ばかりやっていた時期もある。

そうやって、ひとつの役だけじゃないものを、
役者が望んでいるときもある。
あなたが毎回似たような作風を期待されることに、
飽き飽きしているようにだ。

「この人は世間ではこのように思われているが、
実はこれが得意なんじゃないか、こういう本質なんじゃないか」
と考えることは、
人間観察の幅を広げることでもある。
そんな風にして、自分の書く人間像も、
複合的な見え方になるとより深く、コクが出ると思うよ。


もちろん、その役者には、マネージャーや事務所が与える、
役の計画なんてのがあるだろう。
30超えるまでは清純派、と考える女優の事務所はあるに違いない。
あるいは、全然違う役がやりたいんです、
という本人の希望もあるかもしれない。

配役には、いろんな力学がある。
実際に決まるのは、そうした力学が働いた結果ではあるが、
その役の本質は何かを考えることは、
悪くないことだ。

もしそれが言語化できたら、
キャスティングディレクターにそのまま渡せる資料になる。
脚本家の希望が具体になっているほど、
探しやすくなるよね。
有名人じゃなくてもいいから、このような特質をもった人、
というのでよければ、
無名の役者にも芝居がうまい人はたくさん埋もれている。
そういう人があなたの映画で突然脚光を浴びる、
というのも悪くないではないか。


ちなみに、
以下のサイトで探すことができる。
タレント辞書
https://talent-dictionary.com/
20代みたいに10歳単位で探せるのが助かる。
ドンズバの年齢である必要はなく、
10くらいは乗り越えられると思って探すことだ。
○○のイメージなんだけどなー、
なんて実際に年齢を見てみると、+5〜10くらいいってることもあるからね。

これでざーっと探しておき、wikiや事務所HPで詳細を確認する。

○○代俳優人気ランキングなどで検索すると、
勝手にランキングしたサイトもあるので、
世間の動向も確認できるよ。


そうそう、日本のプロデューサーの連れてこれる人って、
事務所に口が効く人の中からよさげな人を選ぶだけで、
全くコネないけど役にぴったり、
を選ばないことが多いんだよね。
いけちゃんの蒼井優は僕が提案したんだけど、
そんなこと考えもしてなかったのでびっくりした記憶。
だから日本映画は同じ役が回るんだよまったく。
posted by おおおかとしひこ at 08:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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