2025年07月05日

すごい実験失敗作(「ジュテーム、ジュテーム」評)

早稲田松竹に「惑星ソラリス」を見に行って、
カルトSF特集で併映されてたこれを見た。
アランレネだからフランス映画のシャレた画風で、
タイムリープものって、って興味を持つ。

が、しかし。
ものすごいすべりっぷり。

これは映画監督を目指す者は全員見ておくべき、
最高の失敗作の一本だ。

ネタバレしといた方がむしろ覚悟できると思うので、
親切のためにネタバレしながら議論する。



とある男が自殺未遂をする。
病院に現れた謎の男に研究室に誘われ、
生きる目的もないのでつきあう。

そこはタイムリープ研究所。
1分だけ過去に戻る実験をマウスで成功させたが、
人体実験の第1号になってくれと。

巨大なヘンテコタイムマシンに乗せられ、
1年前に1分だけ行くといわれる。

だがその時とは、
唯一バカンスに出かけていたあの夏。
最愛のカトリーヌと過ごした夏。


以下、なぜかタイムマシンがうまくいかないのか、
執着が強いのか、
タイムリープを無限に繰り返す。

しかも1分ぐらいのぶち切れ尺で、
時系列も場所もランダム。
出会ってから別の女と付き合い、
彼女の死後や、
「カトリーヌを殺した」と告白する場面など、
ものすごくランダムに100?200?シーンぐらい飛ぶ。

細切れ、断片。

彼女と過ごした幸せな時間、
彼女と喧嘩した時間、
彼女がいない時間、
仕事の時間、
別の女と過ごす時間。

因果関係はない。情報の整理もない。
ただ他人の夢をランダムに100?200?回見させられる感じ。

正直何回か気絶したと思う。
因果関係のない、オシャレフランスラブストーリーの断片を、
ランダムにひたすら見続けさせられる大苦痛。

正気か。
ストーリーはない。
ストーリーのない90分が、
どれだけ苦痛か体験するのにちょうどいいぞ!




意図はわかる。
記憶というのは断片的で曖昧であると。
愛の記憶なんてのも、断片的な夢のようであると。

何度かちょいちょい繰り返されるシーンがある。
バカンスの島、路面電車を待っている冬。
彼女が微笑んで暖炉の脇のベッドで寝ているところ。
猫。

途中なぜか島でハツカネズミを発見するんだけど、
「タイムリープしてきたお前か」と、
実験室のものだったと気づくのが、
唯一意味があるシーンで、
ほかは全部意味無しシーンなのがすごすぎる。

90分、意味のないカットを延々見させられるんだぜ?
「コヤニスカッティ」かこれか、って感じ。

そして最後は結局自殺のシーンになってバッドエンド。

え?死ぬべき運命の彼女を、救いにもいかないんだ。


運命は変わらない、
記憶や愛は断片的で、意味などないのだ、
は、まあわかるよ。
ランダムタイムリープが、複数の世界線にまたいでる可能性もあるし。

何回タイムリープしても彼女を救えない、
というほど目的の矢がある話でもないので、
まじで他人の夢に付き合ってるだけのバッドエンド映画。

意味を解体する、
という目的で作られたとしか思えない、
1968年の実験作品。


今こんな企画出したら秒で没だけど、
こんなのつくったらどうなるんだろう?
という妄想だけで話が進んだのかなー。

オシャレタイムリープもの、
ナンセンスものを考えるならば、
一度見ておくべき映画。

ここより下はない。


そして、意味や目的のないタイムリープは、
ほんとにつまらないことを知ろう。

映画はストーリーでなんぼですね。
posted by おおおかとしひこ at 16:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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