2025年07月19日

でたらめのカルト作(「太陽を盗んだ男」評)

早稲田松竹でフィルム上映だったので見てきた。
学生時代に見て、
全部忘れてたので初見みたいなもの。

いやーでたらめすぎる。
無謀パワーだらけの快作。


皇居への突入。
東急本店の店内や屋上や札束バラマキ。
原発への侵入。
国会議事堂への侵入。
皇居前のカーチェイス。
高速道路でルーフトップかは半身を出したチェイス。

全部無許可撮影だろ。
すげよこれ。
コンプライアンスなき時代の、
西部警察以前の、
めちゃくちゃ撮影集だといってもよい。

ハリウッド映画、
たとえばダーティーハリーを超えたくて作ったのだろう。
だけどあんなの日本じゃできないから、
全部無許可で出来る範囲でやった。

逮捕者は30人はいたという。
めちゃくちゃな撮影だ。


で、
菅原文太と沢田研二の執念のバトルは面白いんだけど、
アクションそのものはチープなんよね。
実際、ハリウッドに持ってったら、
なぜあんなC級アクションをクライマックスにしたんだ?
とアメリカ人から言われたらしいし。

僕が学生時代に似た感想を抱いたことを思い出した。
「ダーティーハリーとかよりアクションしょぼいので、
たいして面白くない」ってこと。


いや、プロになったからわかるんだけど、
あれを無許可でやるにはめちゃくちゃ大変だ。
それをやった勇気や心意気はわかる。
でも、所詮日本のショボさが限界としてわかってしまうという。

こんなに頑張ってるのに、こんなにショボいんだ、
ってわかってしまう。


だから日本はハリウッドに勝てない。
同じやり方では勝てないから、
別の道を選んだのだろう。


特に目的もないが、
原爆をつくって混乱に追い込んでやろう、
という沢田研二が、
若者の気分を代弁している。
なんも楽しいことがなくて、
イライラしてるだけの若者。
何がしたいのかはっきりせず、
ただエネルギーを持て余してる若者。

今の若者もこんなに鬱屈してるだろうか。
してて欲しいね。

あの原爆は、
若者の自己承認欲求の象徴だ。
だからラスト、
因果応報的に被爆して、爆発?する。

同時期、
アメリカン・ニューシネマがあった。
タクシードライバー、俺たちに明日はない、イージーライダー。
スターウォーズ1(ep4)もだ。
若者はどうしていいかわからず、
アイデンティティを決められずにいたから、
無謀なことをするのである。


しかし菅原文太の後半のゾンビぶりは笑ったなー。
ヘリから飛び降りたスタントマン、
約束と違う高さから飛ばされて骨折したらしい。
というかあれで骨折ですむのかよ。

マンガみたいなめちゃくちゃぶり、
理由なき反抗ぶり。
それをものすごく丁寧に書いている。


アーアアーの使い方や、
伏線の使い方がおもしろい。
しかしそれだけだったかな。
緻密で大胆な構成の、
アメリカン・ニューシネマで、
無許可撮影スタイル。

当時の鬱屈した若者たちが熱狂しただろう。

僕は「ハリウッドに足りない」と、
正直に思ってしまったので、
この狂騒には乗れないねえ。

こういう主人公は最後死ぬことになっている。
原爆ドカーンなんてギミックを使わずに、
放射能で無惨に死んでほしかったな。
「なお原爆の行方は不明」みたいにしてね。


人間はなんのために生きるのだろう?
人間の社会は間違っているのだろうか?

野球中継を延長させたことや、
5億円ばらまいたことや、
ローリングストーンズの日本公演を決めさせただけだったのか。
愉快犯にしては中途半端だったな。
ノートに色々書いてたんだから、
その10を実行したら死ぬ、
みたいにしとけばよかったのに。

その、日本社会の何かを抉れれば、
カルトからメジャーになれたと思うのに。
批判力がなかったのが、
脚本として致命的かな。
posted by おおおかとしひこ at 07:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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