実話をベースにした話が好きな人がたまにいる。
たしかな成功が約束されてるからだろうか。
フィクションの嘘くさい成功は、
現実とは関係ないと思ってしまうからだろうか。
知り合いに勧められて見た。
悪くないが、やっぱり事実ベースの成功の小ささに、
夢が持てないというかね。
なので70点といったところ。
ただ、その小さなサクセスストーリーを、
フィクションの脚本の技法で、
上手にふくらませているので、
脚本の技術教科書としてちょうどいいと思う。
以下ネタバレ。
実は、約15分置きに、
いいシーンまたはターニングポイントが置いてある。
だからちょうど良く飽きずに見れる。
12〜15分:親友がスタジャンをプレゼントして、
夢を諦めるなというシーン。
タバコをつけたマッチをクッキーにさして、
それを吹き消す、ささやかな誕生日が忘れられない。
26〜29分:神父に会い、短大編入を提案されるシーン。
第一ターニングポイントだ。
しばらく神父が、主人公を神父になりたい人だと思ってるのが笑える。
こうしたシーンで緊張を解すのはとてもうまいね。
42〜44分:はじめてロッカーに入り、レコードで覚えたコーチの言葉を演説する。
第一ピンチポイント。
ストーリーが本筋から外れていないことを示す。
わざわざ椅子を持ってきてその上でやる、
という異常シーンで驚きを出している。うまい。
64〜65分:大学編入の通知をベンチの上で見るシーン
ミッドポイント。
セリフがなく音楽だけで表現しているのがうまい。
これまでも何度もダメだった、最後の1回でもうダメだろうという、
絶望からの逆転になってるのが上手。
文字通りカメラが回り込み、人生のターニングポイントを示す。
71〜72分:トライアウト合格のシーン
第二ピンチポイント。
ピンチポイントは2つとも希望を見出すシーンである。
単に「合格だ」というシーンではなく、
コーチはずっと合格前提で話してて、
最後に「合格ですか?」とわかるところがうまい。
93〜95分:レギュラーたちがコーチにルディをレギュラーにと嘆願するシーン
第二ターニングポイント。
このこと自体は実話なのだろうが、
映画にしやすいビジュアル芝居になっている。
やって来たレギュラーが、一旦コーチの机にユニホームを投げ、
背番号返上を示すのだ。
そして次々にやってきたレギュラーたちが、
次々に机の上にユニホームを重ねていく、
という、絵で思いを示すため、
言葉がなくても伝わるのだ。
とてもアメリカ映画的ないいシーンだ。
100〜101分:黒人の芝生世話係が、試合を見に来たシーン。
彼も実はアメフト選手で、レギュラーになれなくてやめた。
一生後悔するぞ、と辞めるのをやめさせた経緯。
最初に出会ったのも彼で、
ずっと友情が保たれていたのがたまらんよね。
スポーツ映画の見本のような、
ウェルメイドな人間ドラマだ。
とくに後半ほど、
セリフがないいいシーンが多い。
参考にされたい。
あとうまいのは、
アメフトのルールが分からなくても話がわかること。
試合を忠実に追ってるのではなく、
体が小さいからタックルに弱いこと、
だけど負けん気だけは強いこと、
色々あってルディに出番が回ってきたこと、
敵のエースにタックルしたこと、
などだけでわかるのが上手。
私たちは「成功」を投影できればそれでいい、
という割り切りが上手。
2025年09月06日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック

