2025年12月03日

論文と物語は何が違うのか

だいぶ違うものを比べているって?

物語のテーマとはテーゼであった。
それを全編かけて証明するのが物語でもある。
じゃあ、あることを証明する論文と似ているじゃん。


必ず証明が成功しなくてもよい。
うまく行かなかったことを報告する論文もある。
これはここは間違いだからこれ以上追及する必要はない、
という意味で意味がある。

物語の場合は、失敗するオチ(バッドエンド)もある。
しかし、この場合、失敗することの意味がテーマになるから、
ある種のテーゼを証明したことになってしまう。
このへんはまず違うね。


論文は、梗概(アブストラクト)を頭につける。
問題意識、目の付け所、本論文の骨子、結論、
結論が導き出す世間的な意味、
までが書けていれば完璧なアブストラクトだ。

脚本の場合はこれを付けないが、賞に出すものには、
たいていこういうものをつけるよね。

論文のアブストラクトは、証明の仕方はおいといて、
それが真実と確認されたことをざーっと知りたいときに役に立つ。
あとは興味があるものだけを集めて、詳細に検討する、
ということをやるからね。

ストーリーの梗概は、賞の場合、
「ちゃんとできているか」を見ることが多い。
「この人はボンクラかどうか」が大体梗概をみればわかるからだ。
ちゃんと書ける人は、梗概を魅力的に書ける。
その筆力をまず見ようということだ。

落ちまで書くのがルールだから、
全体的に出来ているかのチェックになるわけだね。

一方、内輪向けでなく、一般向けの「あらすじ」は、
落ちまで書かないことがほとんどだ。
それじゃあ見てもらえないからね。
むしろ、落ちを明かさないことで、「どうなるんだろう?」
とヒキが出来たら正解なので、
一般向けのあらすじは、
「最初の面白げなシチュエーション、または主たる面白げな葛藤」について、
書かれることが多い。


全体の構成はどうか。
論文は、問題の背景、実際に解決した理論、
結論を短く、それが世間に与える影響、
という順で書く。
問題をどのように解決したか、それは妥当かが、
論文の本体だ。

ストーリーも似ている。
問題があり、解決の過程があり、
結論がある。
この、三段論法というか、
序論/本論/結論という構成は、
人類が「理解」するための基本的な構成なのだと思う。
だから、大きな構成は同じともいえる。


ヒキは違う。
論文は、問題そのものがヒキである。
これを解決していない人類に対して、解決したぞ、
ということをいうわけだ。

物語も、問題そのものがヒキになることが大きい。
しかし、「その解法、社会的意義」はどうでもよくて、
「わくわくするかどうか」がポイントになる。


解決の方法はどうだろう。
論文の場合は科学的な手法や、論理によるものだ。
真理を追究する科学では、
それが正しいかどうかが問題だ。
間違っている論文は価値がない。

物語の場合は、論理だけではない。
多くは感情による展開が多い。
それは、娯楽だからである。
楽しい、悲しい、怒り、笑い、などの、
感情に乗っかって見た方が楽しいからだ。
七色の感情を刺激しながら、物語は進められる。

また、単に感情が変わるだけではただのきちがいなので、
それには「理由」が必要だ。
状況が変化したからこういう感情になった。
こういう行動をするのは、こういう感情だから、
という感情の因果関係である。

また、論文の展開は論理の展開だが、
物語の展開は、「行動」によってなされる。
行動をした結果、どうなったかが、
次の展開になる。
なぜそれをやったのかが、動機であり、
これも感情に裏打ちされている。


論文と物語では、想定される反論に対して、
反論を用意しているものがある。
論文の場合は、自説の証明をするわけだから、
想定される反論にはすべてこたえられる必要がある。

物語もそれに似ている。
おかしいじゃないか、ということに対して、
「こういうことなんだよ」と答えられれば、
反論は封じることが出来る。

ただ、論文の場合は厳密な論理性が必要だが、
物語の場合は論理性も必要だが、
相変わらず、感情的に納得いくか、
という問題が強い。


論文の駆動は論理だが、
物語の駆動は感情である。
そして、その感情に、感情移入していなければ、
物語は面白くない。

論文は面白い/面白くないは関係ない。
感情移入もしない。


似ているが違うものとして、
論文と物語を比較してみた。
テーゼの証明をどちらもするものだが、
その証明の仕方や工程は似たようなものだが、
使う道具が違うんだな。

論文は論理や科学的実証、検証。
物語は感情、行動、感情移入。

論文で泣きを入れて感情移入させるのは間違いだし、
物語で論理だけで進めていくのも間違いだ。

あと、論文は1万字くらいだけど、
脚本は4万8000字だな。
posted by おおおかとしひこ at 09:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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