2025年12月05日

終わらせることは、可能性をすべて閉じること

今やってるかどうか知らないが、
小学校のころ「友達100人できるかな」という歌があった。
小学校に入って、できるといいなあ、
などという希望をうたった歌だ。

これは可能性がまだある状態の話である。


これが卒業式間際になったとき、
友達100人できなかったら、
その可能性はもうないということになる。

物語序盤がなぜ希望に満ちていて、
終盤が悲壮なのはなぜか、
という理由がこれである。

序盤には可能性があるのだ。

1年生のほうが2年生よりも可能性がある。
オッサンより若者のほうが可能性がある。
それだけのことである。

ストーリー前半において、
あらゆることに可能性がある。
あの人はあの人を好きになるかもしれないし、
あのやり方で成功するかもしれないし、
失敗するかもしれない。

その、あらゆることの重ね合わせとして、
途中は存在する。

どっちつかずのほうが両天秤かけられて、
わくわくする。
それは三角関係のようなものだ。
どっちと付き合うか、決めていないほうが、
その可能性をしゃぶれるわけだ。

だから、序盤まで面白かったが、
それから面白くなくなった話というのは、
「おもしろい」の成分が、
可能性であったかもしれないということだ。


「どうなるんだろう?」というわくわく感は、
あらゆる可能性を想像して楽しんでいる。

漫画の連載の途中で「これはおもしろい」
という場合、その可能性含みでいっている。
あるいは、新人アイドルが出てきた場合、
その可能性でキラキラしていることがある。

27歳くらいになって、
不倫とかして、鳴かず飛ばずだったアイドルは、
もう可能性を持っていない。
「デビューしたての頃はよかったのになあ」
と言われるわけだ。


で。

物語の終盤で、
あらゆる可能性はもうなくなる。
友達100人できないし、
アイドルは武道館へ行けない。
そのときに、
序盤の可能性を示す部分を切ったらどうなる?

それで面白くなくなるなら、
あなたの物語は、
可能性というふわふわしていたものに頼っていた証拠だ。

可能性を「おもしろい」と勘違いしていた、
という可能性があるね。


物語を閉じようとしているときは、
あらゆる可能性がもうなく、
結論が出ることに至る方向である。

新しく何かが生まれる可能性はなく、
閉じていくことだけに集中するわけだ。

「あの、あれはもう実現しないのだろうか」
「あれは伏線なんじゃないのか」
という希望はなくなり、
すべての可能性は0になるのが、
終わるということだ。

僕は、余計な可能性を示すシーンは、
全部切ったほうがいいと思っている。
「この子、この人とつきあうのだろうか」とか、
「この人秘密をもってそう」とか、
そういうシーンは切ってよい。

それで面白くなくなるなら、
看板だけ見せて、中身がないのと同じじゃないか。
あなたは単なる看板職人ということになる。
(CMディレクター出身の監督の映画がつまらなくなりがちなのは、
この思わせぶりの看板が上手いだけで、
本編の中身がないからだ)

だから、思わせぶりとか、
におわせとか、
可能性とか、
希望とかは、
いったんカットしてよい。

そうしたら、序盤はだいぶやせていくと思う。
終盤が見えてきて、
ようやく序盤が固まる、とはこういうことである。
最終盤に必要なものだけを序盤に前振るのだとしたら、
序盤はとくにいらないものだらけになる。

スカスカになった序盤に、
別の何かを充実させてもいいし、
可能性の場面を復活させて、
実態より大きい期待をさせてもよい。

どちらでも良いが、
後者は看板詐欺になるだろうね。

尻つぼみになる物語は、
すべてこういう構造だと僕は思っている。

「スリービルボード」のトップカットから序盤は、
めちゃくちゃ面白かった。
にもかかわらず、後半からラストは、
全然おもしろくなかった。
あらゆる展開の可能性がなくなり、
しょぼく終わってしまったからだと思う。


友達100人できるかな。
できないよ。
へんに希望を持たせるんじゃねえよ。
じっくり話せる何人かの親友ができるかな、
でいいじゃんかね。


物語を終わらせることは、
あらゆる可能性を閉じることである。

つまり、あらゆる可能性から、
一番いいバージョンの結論が出るのが、
物語だ。
posted by おおおかとしひこ at 07:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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