一つ思い出したので追加しておきます。
リライトは、元素材を越える事が出来ない、
という限界性についてです。
元原稿に対し、僕は9割ぐらいを書き換えたつもりです。
しかも勝手に好きなことをしたわけでなく、
あくまで、
「気弱な教師と勉強したいヤクザ」
「対決からの頭突きがクライマックスになる」
というモチーフを遵守した上でのリライトです。
リライトには二種類あります。
「モチーフをそのままにして、それを利用してテーマを書き換える」
「テーマをそのままにして、それを示すモチーフを書き換える」
です。
今回は前者でした。
風魔も前者でした。
いけちゃんとぼくでは、ヨシオの成長譚として、
全く新たな後者を加えました(その前半部は色々な理由で失敗した部分です)。
人間は見た目に左右される生き物なのか、
見た目が変わらない前者のほうが、抵抗がありません。
後者は、新作扱いしてしまいます。
新しい要素が追加された違和感を覚えがちです。
だから、原作つきの実写化においては、
前者のリライトが正しいかも知れません。
しかしそれはあくまで、テーマの希薄な原作に限ります。
テーマとモチーフの関係がしっかりしている作品は、
後者のリライトによって、
映画サイズに収まるように、作り直す必要があるでしょう。
それが、原作のテーマを表現する、
新たなモチーフになっていないことが多いだけですが。
前者のリライトについては、
僕は「裏打ち」という言葉でとらえています。
傘の骨をはがし、表面だけはそのままに、
骨組みごと全部裏から貼り直すイメージです。
皮一枚残して、中身を変えてしまう感じです。
風魔は、そのうまくいった例です。
ヤクザヘッドもそうでしょう。
けれど、この裏打ちは殆ど気づかれません。
9割以上直してもです。
ヤクザヘッドにおけるテーマ、
「頭はシンプルな答えにするためにある」
「一番大事な所を一番大事な所にぶつける」は、
元原稿には1ミリもなかったことに気づきましょう。
にもかかわらず、
実はこれを書こうとして、元原稿は書かれていたのだ、
と錯覚しかねないように、リライトがなされているのです。
(風魔も同じくです。
風魔の絆と夜叉の自分勝手の対比から「絆」を浮かび上がらせること、
「新しい形の忍び」。そのようなものは一切原作にないものです。
にも関わらず、最初からそのようなもので書かれたようにつくられたのです)
この巧みさには、
脚本家でないと、
しかもリライト経験が豊富な人でないと気づかないかも知れません。
ということは、日本に何百人もいないかも知れません。
今回の例を通して、その辺りに敏感になるとよいと思います。
さて、本題。
ここまで上手くやったとしても、
裏打ちは、
元々の規模を超えられないのです。
ヤクザヘッドで言えば、
「気弱な教師と勉強したいヤクザ」
「対決からの頭突きがクライマックスになる」
という枠を逸脱できないのです。
その世界の中で完結しなければならないのです。
どうがんばっても、この枠を変えない限り、
学園もの枠、ヤンキーとヤクザ、喧嘩と勉強、
頭突き一発でクリアする既視感の、枠内でしかドラマを作れないのです。
極端にいえば、宇宙人や超能力や、死ぬことなどは出来ない。
勿論元原稿を遵守せず、大きく逸脱するリライトもありうるでしょう。
しかしそれは、最初にのべた、二つのリライト、
モチーフを変えるリライトになり、
見た目も大きく変わることになります。
で、テーマの為のモチーフの変更なら、
それも納得がいくかも知れません。
今回のケースでは、テーマをその枠内でつくりあげる、
というやり方ゆえに、
その枠内におさまる範囲内のリライトしか出来ないということです。
原作つきの実写化が何故うまくいかないのか。
その枠内でやっているからです。
その枠を外してもっと広い枠で描けば、もっと深くて面白いものになる可能性があっても、
それはその範囲内にしなければならないからです。
つまり、原作より必ず面白くなくなる、という原理です。
風魔の成功は、この枠を半ば外したことにあります。
言うまでもなく壬生と陽炎でです。
竜魔の時間制限や麗羅の優遇はアレンジのレベルかも知れないけど、
壬生や陽炎は、原作の枠を飛び越え、崩したものです。
ここが成功の要因であることは、見た人全員が納得いくかと思います。
リライトと、モチーフとテーマの関係は複雑です。
僕もすべてをまだ分かったわけではありません。
書いてる途中にテーマが変わっていくこともあるし。
writing is rewritingという言葉がハリウッドにはあります。
にも関わらず、この理論的な部分はあまり明らかになっていません。
今後とも、僕の分かったことについては、このブログで報告してゆきます。
では脚本添削スペシャル2015、ドントハレ。
2015年05月07日
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