なぜ映像には「ヨリとヒキ」があるのか?
僕は「そこで起こることの適切なサイズの切り替え」だと書いた。
さらに分かりやすい画像を手に入れたので見てみよう。
○○mmと書いてあるのは焦点距離という。
カメラの専門知識はすっ飛ばして、
結論からいうと、
「撮影場所(カメラの位置)が同じでも、
レンズを交換する(焦点距離を変える)と、
写る大きさ(フレーム)が変わる」
だ。
数値で言うと、50mmが人間の見ている景色に近い。
それより小さい値は広角といって、視野より広く写る。
それより大きい値は望遠といって、視野より狭く写る。
僕が今まで使った最大望遠は500なので、
それより望遠になってるのは初めて見た。
視野より広く写るということは、
「自分が見えているものが、
自分の意識より小さく写る」ということだ。
視野の倍の広さのものが、
写真上半分に縮まるイメージで想像できる。
視野より狭く写るということは、
視野の半分の大きさのものが、
倍に拡大されるイメージで想像できるだろう。
これを2倍望遠などという。
鉄道写真やアイドル写真では、10倍望遠などが使われるよね。
(10倍望遠が500mm相当。
月をドアップにするには、1500とか2000がいるそうだ。
拡大率が高いということは、
要するに巨大な虫眼鏡が必要なので、
レンズだけで何十万の世界だ。
ちなみにレンズは丸で映像を拡大するが、写真は四角だよね。
丸い映像を視覚で切り取ってるって知ってた?
レンズを外した受け側の四角の窓がそれだ。
それを三角にすると、三角の写真が撮れるよ)
さて、本題。
広角だと広く写り、
対象物は(相対的に)小さくなる。
24mmだと赤い服の自転車の人が55mmより小さく写っている。
そのかわり、海や林や道の、広いものの感じがよく写る。
広角はカメラが下がりきれないときによく使われる。
「思ったより広く写らないから、広角レンズで広さを表現しよう」と。
あるいは、広く写すことで歪みが出やすいので、
現実を歪めた表現にもよく使われる。
(玄関の覗き窓は扉の向こうの様子を広く見るため、
超広角レンズが使われている)
この広い世界の、「左はここから、右はここまで」
と決めるために、広角の角度を変えたりもよくする。
逆に望遠だと、その一部を切り取り、拡大する。
つまり、「世界のどこを切り取るか」
という恣意が入る。
作例でも、まっすぐ先の人混みをどんどん拡大している。
これは「人混みを、海や、背景の建物から切り取る」行為なわけだ。
980mmになってしまえば、
海や丘の上の建物は存在しなくなり、
「道と人混み」だけに世界が限定される。
我々は既に海や丘を見ているが、
この写真だけを見せられたら、海や建物の存在を知ることはない。
これを、「フレーミング」という。
実在世界の、
どこからどこまでを表現世界とするか。
それはそれ以外を切り捨てるということでもある。
男子校を描くとき、女は世界に存在しない。
数学の偉人を描くとき、算数嫌いは世界に存在しない。
砂糖を描くとき、砂糖だけにするのか、
隠し味に塩を入れるかは、あなたのフレーミング次第だ。
それを、日本料理だけで語るか、中華やフレンチまで語るか、
ジャンクフードも入れるかスイーツのみに割り切るかは、
あなたのフレーミング次第だ。
我々が有限である限り、
世界の切り取り方は有限である。
我々は有限時間しか作品制作に使えないので、
作品はフレーミングがなされている。
ということは、
そのフレーミングそのものが作品なのである。
ある限定された空間の、
ある限定された時代の、
ある限定された時刻から時刻までの、
なにかが作品だ。
そして、
そこで起こることは、
適切なサイズに切り取られて、
その起こるサイズにフレーミングされるのである。
何気なく書いているその無意識に、
フレーミングは常についてまわる。
「客観的に見れない」のは、
フレーミングが間違っているかもしれない。
望遠レンズをやめて広角にしたまえ。
広角で海や丘がネタバレしているならば、
望遠にして隠し持ちにしたまえ。
分かりにくいならば、寄ってみよ。引いてみよ。
分かりやすいサイズが存在する。
そのサイズとわざと違うサイズにフレーミングして、
混乱を表現することもできる。
映像は、フレーミングの順番で、
世界を語る。
あなたがフレーミングを決めるのだ。
宇宙から隕石が落ちてきて、
対策本部が立ち上がり、
石油採掘現場の男が呼ばれ、
仲間たちとシャトルに乗りこむ。
これだけで、フレーミングがダイナミックに4つ変わっていることがわかる。
展開に詰まったら、
この事件はどのようなフレーミングで今まで語っていたかを整理しよう。
異なるフレーミングで捉えたらどうなるか考えよう。
そうすれば、適切な転換点(フレーミングが変わるとき)を、
見出しやすくなる。
2020年07月16日
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