脚本的な批評だけしておくか。
以下ネタバレで。
ストーリー自体はものすごくふつうというか、
特別なものを感じなかった。
ざっくりいうと、家族の喪失と再生みたいな、
平凡なストーリーラインだなあとは思う。
それをAIがらみで新しく書き直している、
という印象を受けたかな。
ただ、テクニック的に注目するべきは、
「常に焦点がはっきりしている」というところ。
冒頭、妻を失うところはすごくよくできていた。
それが主人公の動機になることもよくわかり、
「生きていた」という3Dホログラムから、
その場所が分かっているのは自分だけ、
という限定の仕方がうまく、
あの島へもう一度旅に出る、
という動機付けはとても良かった。
そのあと、アルフィーに出会ってからが本番で、
そこからは基本的に「生きている妻を探す」
が焦点の、
バディ珍道中ものになるわけだ。
追手をかわしながら、
という点ではターミネーターにも通じるパターンだね。
そして妻こそが探し求めていた「創造者」なのだ、
というパターンもたいして驚きがあるわけじゃないし、
実は死んでた、植物人間だった、
というのも驚きとしては弱い感じがした。
そこで生命維持装置をオフして殺してしまうのは、
どうかと思うんだよなあ。
そこでやや気持ちは外れる。
もちろん、ラストのアレをやりたかったんだな、
とあとではわかるものの、
「そこで電源落とす?」というのが、
理由としては弱い気がするんだよね。
「いつか目覚めるかもしれないじゃないか」
というのを期待したくなるものだし。
(ここはそういうシナリオ想定で書いていたが、
ラストがああなったから、
書き直しきれなかったのだろうか?)
ここさえうまくいってれば、
もう少し乗れたと思う。
主人公から気持ちが外れたところは、
ここくらいか。
あとはノマドをどう落とすか、
という話になってて、
なかなかよかったね。
ラストのヴァルハラでの再会は、
ご都合とはいえ美しくてよかったなあ。
脱出ポッドの扉があかない、
というシークエンスで、
妻のロボットがよみがえって開けるんじゃないか、
というのを期待していたが、
まさか再会して幸せなキスで天国という伏線回収かー、
というのに感心した。
でも結局、ミッドポイントのチベット風寺院での、
植物人間からの電源切りが無理があるので、
そこが問題点かなあ。
(3Dホログラムの映像はじゃあなんだったんだよ、ってなるしね。
まああれを見せた将軍たちは悪役だから、
嘘だったのかもしれないが)
それ以外は、
ほぼほぼ主人公に気持ちが寄り添っていて、
焦点がはっきりと決まっていて、
しかも目的がどんどん更新されていく、
とても優秀なシナリオだったと思う。
アルフィーを連れた珍道中もとてもよくて、
同僚が死んで、脳スキャンして30秒だけ会話できるとか、
すさまじいシーンだった。
(もちろんラストヘの伏線だけど)
あのインド人のロボットがアイスクリームの場面でも使われているのが面白かったよね。
にやりとする、
こうした名場面が連続しているにも関わらず、
結局、
我々に突き付けられるのは、
「じゃあ、トータルでこれは何?」
なことを確認されたい。
部分部分はとてもよくできている。
なのにあとに何も残らないのはなんでやろ?
AIへの単純な嫌悪が取れましたね、
なのかなあ。
ネアンデルタール人の挿話が面白かっただけに、
我々(白人)は、絶滅させるしか手段がないのだろうか?
という自分たちへの問いだったのかねえ。
あとやっぱり「頭で考えた話」だなあ、
と思えるのは、
あんなに埃っぽくて雨が降るアジアで、
すぐに機械にいろいろ挟まって錆びるやろ、
という突っ込みかな。
空調の効いているオフィスでつくられたCGに過ぎないなあ、
なんてもやもやしながら見ていた。
電磁膜があり、ダストは跳ね返すとか、
そういうちょっとした設定があるだけで、
そこは安心して見れたのだがなあ。
あのカメラのオートフォーカスのような、
ウィンウィンいうモーター音は、
ロボットの象徴音としてはよかったけど、
油差すメンテは絶対いるし、
暑かったり寒かったり、
湿度が高かったりしたらアウトだよなあ、
なんて思っていた。
日本車はものすごい丈夫だから大丈夫、
みたいなことでもなかったしね。
(中国人のおばちゃんがつくってたから、
謎のアジア人がつくるものに対しての信仰はありそうだけど)
もちろんこうした矛盾というか無理は、
脚本部分ではなくて、
もっと以前の世界設定の部分ではあるが、
それを補うアイデアを、
脚本上で出せなかったのはちょっと不備があるな。
「ここの工場でつくるものは過酷な環境に耐える。
かつて日本車そうやってつくられていたように」
なんてセリフが一言あるだけで、
そういうものか、と納得するだろうしね。
あとは彼らの動力はかなり気になるね。
飯食ってるわけじゃないし、ソーラーで動いているわけじゃないし、
バッテリー交換や充電のシーンもなかったし、
そこはもう少しわかりやすくしてもよかったのでは。
つまり、
なんかまだ「頭の中で考えたもの」どまりで、
「そこに存在しているもの」にはなっていない感覚があったんだよね。
そのファンタジー度合いに、
あの天国でのキスはちょうどよかったのかもだけどね。
ノマドのブルーライトのスキャンがめっちゃ怖くてとても良かっただけに、
もう少し詰められなかったのか、
と惜しい作品でした。
でもSFって、
CG全盛の今、
映画でやらなくてもいいのかもしれないね。
ゲームとか、なんならAIイラストだけで充足してしまっているのかもしれない。
かつてSFの絵は映画だけのものだったが、
今やAIでも描けるから、
ありがたみが薄れている。
ということは、
SF映画って成立しないのかもなあ、
なんて思いながら見ていたことよ。
それとは別に、
焦点のつながり、ターニングポイントの密な感覚は、
脚本的に勉強になるね。
2023年11月02日
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