2024年09月26日

プロットで表現できる感情はひとつ

あらすじやプロットを書き下してみよう。
800字が一般的なのかな。1200字も見たことがある。

そのコツは、ひとつの感情に収束させることだ。


映画を見る行為は、
泣いたり笑ったり、
怒ったりスカッとしたり、
七色の感情をかき回されることである。
そのように書く。

だけど、
プロットやコンセプトやあらすじを書くときは、
それをひとつに絞るとよい。

なぜなら、
あなたの作品Xに対して、
「Xは泣ける話」とか、
「Xは燃える話」とか、
「Xはうっとりする話」とか、
「Xは大爆笑する話」とか、
Xについてラベルをつけられるのはひとつだからだ。
(先日の広告では「追い詰める」の、
たった5文字まで圧縮されていた)

「Xは、泣いて笑って恋をする話」などのように、
人は記憶に残せない。

なぜなら、
あらすじやプロットを見るときは、
他のABCDEF...Xという大量の別作品と、
一緒にならべて見ている時だからである。

その中で、
「えーと、Xってどんな話だっけ、
ああ泣いて笑って恋をする話ね」
などとは思い出せないし、
それは強い話とは思えない。

だから、強いひとつに集約しておくとよい。


もちろん、
七色の感情を用意したあなたとしては、
せっかくの七色を見てほしいと思うのも当然だ。
でもそれは、見たときの話でいいのだ。
プロットを見るときは七色を見ない。
一色が何色かを見る。
そして、それが被っているものと対決させるためにある。

あなたが100本のプロットを並べて検討しているとイメージしなさい。

「泣ける話」が10本あるとする。
じゃあ、その中の一位が選考通過だよね。
「泣ける話」の一位と、「笑える話」の一位が、
対決して次の選考だよね。
もちろん、泣ける話から二本選考する場合もあろう。
出来にはばらつきがあるからだ。

いずれにせよ、
そのように単純化して比較するときには、
「泣いて笑って恋をする話」は、
ぼんやりしてキャラが立たないということだ。
はっきりと、「ラブコメディ」とか、
「泣ける恋の話」とかに、
収束しておくべきだ。

本編は別に七色でもいいのだが、
どういうラベリングにするのか、
ということである。


これは、書くときではなく、
むしろ興行するときに効いてくる。
映画館は「今かかっている話達のバランス」を、
重視する。
コメディ、アクション、ホラー、
子供向け、オシャレなやつ、大作、小品、
などのように、
なるべくばらけた上映をして、
観客層のバラエティを確保する。

その時に、
「泣ける話」とか、「笑える話」とかのラベリングがついていると、
分かりやすく分類できるのだ。

そんな大分類の中に、
「泣いて笑って恋をする話」が入ると、
分類しづらくなり、
「その他」にカテゴリ分けされてしまうわけ。
いっそ「ラブコメ」の枠に入れられていれば、
上映方針もわかりやすくなったというのに。


このように、
分類が分かりにくい、はっきりとしていない映画は、
上映でも不利である。
DVDや配信のパッケージングでも不利だね。


「いけちゃんとぼく」は、
「どの棚に入れて売っていいか分からない」
と担当者に言われたことがある。
一見子供向けのビジュアルでありながら、
正体は大人のラブストーリー、
というややこしい話だから、
アニメの棚に入れるわけにもいかないし、
大人のラブストーリーコーナーに入れるには、
夏休みお化け劇場的なビジュアルは困ると。

いや、そこをなんとか考えろや、
それが売る人の仕事やろ、
と僕はその時思ったのだが、
実は棚に入れる人は、
「本編を見ていない」ことがほとんどであることに気づいた。

本編についてきたあらすじやジャンル名を見て、
機械的に棚分けしていることに気づいたのだ。

そのために棚を新造することもなく、
そのためにジャンル分けを変えることもなく。

ああ、それが現場の衰退なのだな、
と思ったとしてもそれが現実なのだからしょうがない。


あらすじは、そういう人のためにも書くのだぞ、
ということを理解しておくとよい。

DVDの棚のどこに入れるのか分からないおじさんが、
そのあらすじを読んで、
「ラブコメディの棚に入れよう」とか、
「アクション大作の棚に入れよう」とか、
思えるような文章か、ということなのだ。


映画とは、ガワで中身を表現するものであった。
だから、
お化けとかのビジュアルや子供の成長などで分類されるべきではなく、
「泣ける話」という、中身の感情で分類されるべきだと思う。

だから、
「その映画でもっとも強い感情」の色に染まるように、
書いておくべきだと僕は思うのだ。



先日書いた話は、
スポーツもの(スキージャンプ)で、
ある男の復活劇である。
ひとつだけ感情を言うならば、
どうなるだろう?と考えて、
「熱い話」だ、と思い、
そうなるようにあらすじを書いた。
「熱い、スポーツもの」という棚に入ることだろう。
実際は人間ドラマであり、ラブストーリーやライバルものでもあるんだけど、
まあ「熱い話」さえ伝われば、
間違った棚に入ることはないだろう、
という判断だ。


人はたくさんの映画から、
見たいものを探す。
ジャンルで分けられたり、
話題で分けられたり、
モチーフで分けられたりする。
でも本当に見たいものは感情だろう。

文章でもっとも伝えることができるのは、
ビジュアルではなく、感情だと思う。
posted by おおおかとしひこ at 06:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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