2025年04月15日

油絵と音楽は違う

違うのは誰でも知っているのに、
いざリライトを始めると、
この混同がよくあるんだよね。


油絵をやったことがある人は分るけど、
無限に直すことが出来るのね。
無限に塗りを重ねていくことが出来るので、
線は何回でも直せるし、
面の塗り直しは無限に出来る。
薄めたものを重ねて色を乗せるのも無限に出来るし、
なんなら失敗を塗りつぶして、一からかくことも可能だ。

これがデジタルになったことで、
さらに無限は加速した。
レイヤーも無限にあるし、
アンドゥやヒストリーもあるし、
無限に塗り直しは可能である。
デジタルではとくに「厚塗り」といったりするけど、
要はこの油絵の前提、無限直しをデジタルで再現したものだ。
(対義語は水彩かな。すっと一回塗りをしておしまいだ)

これに慣れると、
「気に食わないところ、間違っているところを、
無限に直す」が習性になる。

僕は、これは脚本には害だと思っている。


音楽を直すことを考えよう。
パンチインというやり方がよく使われる。
あるところまでを前のを使って、
それから新録音で上書きすることだ。
前のとグルーブをつなげるため、
ニューテイクの演奏自体は少し前からやって、
パンチインしたところから使って、
最後まで演奏する、
というのがよく使われる。

これは「ノリを合わせつつ、
目的のアレンジに近づける」
という手法である。
これをしないとノリが途切れて、
グルーブが繋がらなくなる。


時間軸のあるものの直しは、
こうあるべきだと僕は思う。
前の流れがあり、あとの流れがあるからだ。
だから前から読んで流れを把握したうえで、
パンチイン方式で直すのはよいと思う。

だけど、これを、
油絵のような直し方をする人がいて、
それは間違いだぜ、ということを言おうとしている。

部分だけ見て、間違いだ、直したいと思って、
そこだけを直すやり方だ。

油絵の場合はいいよ。逃げないから。
ちょっと離れて見て、それが妥当かどうかを、
確認すればいい。
永遠に動かないものは、そうやって直せる。

だけど音や物語は「うごく」んだ。
どういうことかというと、
「遠くから見ることができない」ということだ。

最初からずっと流れがあって、
それが直したところを通過して、
最後にオチるまでが一連だ。
その一連の流れがよくなっているか、
という観点で直しはされるべきであり、
「そこだけシミ取りしたもの」という直しは、
間違いの直しなのだ。


リライトが下手な人は、
油絵のような直しをしているんじゃないか?
音楽のような直しをしようじゃないか。
どういうことかというと、
最初から読んで、
該当箇所までの流れを把握してから、
おもむろに該当箇所を直せ、
ということだ。

そこまでの流れは分っている、と書き手はいうだろう。
でも、それを分っていても、
流れに敏感になろうぜ、
ということを言おうとしている。
楽器の調子ですらなかなか合わないのに、
今から発する言葉が、
楽器より調子よくグルーブが合う保証はひとつもないのだ。


もちろん、めんどくさいよ。いちいち最初から読むの。
長いものほどそうなるだろう。
だが、映画は、「途切れずに見るもの」としては、
一番長いジャンルのものでもある、
ということを忘れてはならない。

休憩なしで、最初から最後まで一気に見るものなんだよね。
それを忘れて、
油絵のように直したって、
無限直しをするだけになるぜ。

そもそも流れ上それはいらない直しだってある。
静止画的に見ていると直したくなるが、
実はそれは流れを阻害するものになる、
うまく省略されてるのだ、
と判断することはなかなか出来ないからね。


つねに流れているもの。
そのように脚本をとらえて直しが出来るかな?
言葉遣いが間違いとか、
知識に誤りがあるとかは、
静止画的にも直せる。
しかしそのせいで流れが変わってしまうとか、
ノリが悪くなるとかは、
流れを分っていないと判断できないだろう。
だとしたら、その直しの箇所自体を全部切ったほうが、
流れがよくなる、という判断すらあるわけで。


我々が書いているのは油絵ではない。
音楽に近いものだ。
ノリが悪ければ悪いものになる。
ノリの範囲ならば、直しはいらないものもある。
音楽の人たちを観察しよう。
そういう直しを入れていこう。
油絵のような、赤を入れる作業は、
リライトとして間違いのやり方だ。
(そもそもAを直したからよくなるかどうかは、
静止画で見ている状態だと分らないんだよ。
流れでAがどういう影響を与えているかが大事だというのに)


第一稿は生き生きしてよかったのに、
稿を重ねるごとに死んだようになっていくのは、
これが原因だ。
つねにビビッドでいるためには、流れで生きなければならない。
posted by おおおかとしひこ at 05:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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