2026年01月29日

中身とガワの例「角の生えた一族」

脚本を書くときは、中身と見た目(ガワ)を区別しよう。

ある中身AをガワXで描くべきか、ガワYで描くべきかを考えよう。
あるガワで、中身Aを示せるのか、中身Bを示せるのかを注意深く考えよう。

さて。その例として、よくある例を。
「角のある一族と、ない一族の戦争」なんかを。


僕が子どものころこうした話を見て、
ほんとうに角の生えてる一族がいて、
こういう差別に苦しみ、
角があってもなくても同じじゃないか、
という結論になるのに感動していた記憶がある。

でも長じるにつれて、
それは角の話ではなくて、
「人類の差別の話」であることに気づくわけだ。

角は差別の象徴にすぎない。
差別は色々あるが、
それをガワとしてわかりやすくするために、
「角」という象徴表現にしたのだな、
とわかってくる。

つまり、中身は差別の話であって、
それをガワである「角」で表現している話が、
「角を持って生まれた者たちと、
角を持たずして生まれた者たちの、戦争」
という話の正体である。

たいてい角は妖怪とか鬼とかの話になるので、
鬼と人間の合いの子の話が出てきたら、
それは民族差別がある世界の、
ハーフという運命を背負った人になるわけだね。


じゃあ、別のガワYでも描くことはできるよね。

肌が緑の一族と普通の一族でもできる。
超能力を持つ一族と、そうじゃない一族でもできる。
SFを題材にしないならば、
こちらの村に住む人と、別の村に住む人の間でできるだろう。

最後のものはリアルすぎて息が詰まるよね。
だから、角などという、
ビジュアル的にわかりやすく、しかもあり得ないもので、
象徴表現に代替しているわけだね。
「角の生えた一族の物語」のほうがキャラが立つよね。
「川向うの村の物語」では、ややビジュアル的に弱い。


つまり、
同じ中身を描くにしても、
物語的に、絵的に、キャラが立ったものを選んだほうがいいわけだ。
それは、他と区別しやすくなるからだ。


先日、「空を飛ぶ男二人の友情」の話を書いてみた。
単なる男の友情話が中身なのだが、
それを表現するガワとして、
「悪魔と契約して空を飛べるようになった男」というモチーフを使ってみた。
ここが、物語的なガワということだ。
まさか空飛ぶ男二人の友情話は、この世に二つとないであろう。
だから、他と区別して、立つ話になるということだ。


こんな風にして、
同じ中身を描くにしても、
ガワを変えると仕立てが変わり、
まったく別の物語に見えるだろう。
角の生えた一族の話と、
緑色の肌の一族の話は、
一見同じ中身とは見られないだろう。
「一見〇〇に見える」ということ自体、ガワの話だよね。



ほとんどの観客とプロデューサーは、
このガワを求めている気がしないでもない。

角の生えた一族の話がおもしろそう、受けなさそう、
ということしか判断せず、
二つの民族の差別の話はおもしろそう、受けなさそう、
という話はしないのではないか。

中身AをガワというモチーフXで描くとしたら、
Xばかり見ていて、Aをなかなか見れない、解読できない、
というのは、観客のレベルの問題かもしれない。

この原理をわかったうえで、
私たちは中身Aを書くときに、
どういうXならば受けるだろう?と考えるわけだ。

角の生えた鬼の一族の話にするべきか、
角がもっとSF的な形の、ある惑星と地球の戦争の話にするか、
緑の肌の宇宙人の話にするか、
超能力を持つ高校生と普通の高校生の話にするか、
などを検討するにすぎない。
中身は同じなのに、だ。

そして、Xというガワはいいねえ、
というプロデューサーや観客を見て、
そうだよな、Aを判断するのは高度な読解力が必要だよなー、
むしろ、AとXのマリアージュを評論できるのは、わずかな人だろうなあ、
などとみていればいいだけのことである。


これは、ある程度物語というパターンに慣れることで、
判断できるようになるかもしれない。
Xというガワを使うときは、たいていAの話のときだぞ、とか、
Aを象徴するのにXが使われることが多いよね、とか、
沢山見るとわかってくることも多いね。


角の生えた一族と生えてない一族の話は何で見たかなあ。
なんか子供向けの小説のような気もするし、
ボルテスVのような気もする。

まあ、最初にどれに出会うかはどうでもよくて、
人類には、見た目で差別したり、
民族同士で差別しあうことがある、
ということを学ぶことができるわけだ。

さすがに昨今Xを「肌の黒い一族」にすると、
各方面ややこしいだろう。
だから角に置き換えるんだね。
置き換えは、基本的な比喩表現のひとつだ。
posted by おおおかとしひこ at 08:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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