2025年12月25日

モーションキャプチャの限界(「アバター3」評3)

技術的な限界の話をする。
モーションキャプチャは、俳優の動きをCGでトレースする技術だ。
これによって、CGたちが人間のような自然な動きができるようになった。
ドラマがCGでも見れるのは、大変な進歩だと思う。

だけどね、モーションキャプチャが使えない場面で、
嘘くささが急に増すのよね。
以下ネタバレなしで進行。


一番変だと思ったのは、
ドラゴンライディングの場面だな。
とくに、地面に降り立つカット、飛び立つカット。

これはモーションキャプチャできない。
あんなでかい生き物の乗り物がないからだね。

で、そこに乗っている人間たちの動きが、
ドラゴンに張り付いて固まっている、
人形みたいな動きしかしていないのが気になった。
その体勢ならドラゴンの動きの遠心力で振り落とされるやろ、
という体勢だった。
CGモデルが、単にドラゴンの背中に貼りついているだけだからだろう。

馬に乗る騎手は、馬の背中で、
膝を使って常時体勢を変えている。
馬の動きが大きく、人間が振り落とされるからだ。
その遠心力が発生しないように、
膝で動きを吸収しているんだよね。

そういうことを一切してない、
単に貼りついた人形なので、
ドラゴンの遠心力に振り落とされるやろ、
という不自然さが目立つ箇所がたくさんあったね。
(古い話だけど、西遊記で巨大怪物に悟空が貼りついているカットとか、
着ぐるみに人形を貼り付けただけ、みたいな感じ)

現在の戦闘機技術では、
シミュレーション上かなりめちゃくちゃな動きができるらしい。
この機動を使って、コンピュータの戦闘機は、
人間の戦闘機を撃墜できるそうだ。
じゃあそのコンピュータの機動をすればいいじゃん、
と突っ込むと、「その無茶な動きをやると中の人が死にます」
ってなる。そのGに人間が耐えられず、コクピットの中でぐちゃぐちゃになるのだそう。

つまりそんな感じ。
ドラゴンとしては自然な動きが、
乗ってる人間を殺すよね、と思ってしまう。


これは、
想像力がないアニメーターにやらせているからだと思う。
馬の乗り方を観察していないアニメーターが、
芝居をつけているのはまるわかりだ。

実力のあるアニメーターなら、
騎手の動きやバイクのライディングフォームを参考にして、
もっともらしい動きをつけるはずだ。
それを、モーションキャプチャで安心していて、
気づいていないのがとても気になった。

たとえばドラゴンの背に乗っているときは、
風を受けた動きになっていないことも気になった。
羽だけバタバタ風に揺られているくせに、
上に乗っている人は、
風の抵抗が一切ないような気がしたね。

立ち上がったら風にあおられてひっくり返るから、
なるべく低くする、みたいなことも描かれていなかったね。
だから、せっかくドラゴンの背中に乗っているのに、
風を感じなかった。
宮崎アニメならもっとうまくやるだろう。
それに劣るってどういうことよ。
きっと人馬一体の、姿勢を低くしてなるべくドラゴンの背中に張り付く、
素晴らしい動きを見せてくれそうだ。

たとえば長いものを横に持ったら羽とぶつかるから、
ドラゴンライダーは決してそういうことをしないのだ、
みたいなことも描かれていなかったね。

馬上の槍は、取り回しがいいように、
地上の槍よりも短い。
そんな知恵がドラゴンライダーにもあるはずだが、
まったくそんなことがなくて、
ただCGモデルがCGモデルの上に貼りついているだけになっていた。
空中海賊に襲われたシーンもそうだね。
全然重さを感じない、へんてこな演出だったなー。


モーションキャプチャができているところはリアルな動きなのに、
モーションキャプチャができないところがまったくリアルじゃないどころか、
アニメーションとしても変なのが、
格差がありすぎるだろ、って思ったな。
想像力が一番大事だろ。ものづくりってさ。


こういうリアリティのなさが、
没入感をどんどん減らしていくんだよね。
きれいなスクリーンセーバーってそういうことよね。
眺めるだけで、中に視点が入っていかないわけよ。


あ、あとスパイダーを殺そうとして、
森の中へ連れてゆき、
膝まづかせるカットも変だと思った。
岩の上に膝まづかせるんだけど、
あんな膝の折り方したら膝の皿割れるやろ、という勢いだった。
そういうところよ。
posted by おおおかとしひこ at 01:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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