2025年12月25日

感情移入を整理してみる(「アバター3」評5)

それぞれのキャラクターを整理しよう。
当然ネタバレ全開です。


弟:
トップシーンが兄弟から始まるので、
今回の主役は彼のはずだ。
たしかにトップシーンは掴みとしてとても良かった。
兄弟でキャッキャやったうえで、
「なんで俺は死んだんだ?」
と急に言うシーンはすごくよかった。

だけど、この何故に関する答えは用意されてないのよね。
「俺が勝手な行動をとったからだ。
だから君を死なせた」と、
彼が自認してるかどうかは、最後まで曖昧なままだ。
これは父に言われた言葉の、
内心忸怩たる思いの表情からしかわからない。

空賊に襲われたとき、
勝手な行動したんだっけ。
無線機をうっかり焼かれただけで、
勝手かどうかまではよくわからなかった。

だから彼のテーマがわからない。
「勝手な行動をすることを改めて、群れに従うこと」
ではなさそうだ。
なぜなら後半また勝手に旅に出て、
鯨を見つけてくるからだ。

だから、
「かつて勝手な行動をして兄を死なせたが、
今回の勝手な行動は一族を救った。
勝手になることが一人前になることだ」
というテーマなのかと思いきや、
そうもなっていない。

クライマックス、足を負傷した父のフォローをするのだが、
ここから彼の影が消える。
なんでラストの決闘にいないのか、意味がわからない。

続編で、実は飛び降りた宿敵を助けた伏線?

脚本を直しまくって、
こういう「ストーリーラインのしっぽが消える」は、
わりとよくあることなので、
単にそういうミスだと指摘しておきたい。

トップシーンの、
「兄を死なせたのはなぜか」の答えが出ていない。
「また誰かが死ぬかもしれないが、
勝手な事をしないと助けられないのだ」
という反転になるシーンがなかったよな。
鯨を探しに旅に出るシーンは、
単に弓矢の修理をしただけだったし。
兄の死と関係ないんよな。

ふつうはこれにけりをつけるシーンを描いて、
彼の成長こそが今回のテーマである、
などのようにするものだけど、
そうもなっていない。

そういえばまだ童貞なのかしら。
恋は始まってそうだけど。


父:
周りが勝手に盛り上がってる割には、
主役になっていない。
息子との葛藤は父の強権でおさえつけるだけで、
「俺が間違ってるのか?」と問うシーンはあるものの、
「ごめん俺が間違ってたわ」とはならないんよな。
なので感情移入もドラマも一番薄かったのでは?
人質になったりドラゴンに再び乗ったり、
宿敵にずっと追われているのに、
まったく彼の中にドラマがない。

母:
弓矢の点でドラマが少しあった。
父を救いに行く後半の活躍は拍手ものだけど、
とくにドラマはなかったですね。
ずっと嫌いな?一族の母的な人の出産を手伝ったところは、
大変良かったけれど、
そこ単独でやられてもねえ、という感じ。
唐突すぎるよね。
あとその彼女、妊娠してるのにバトルに出るの?
って変さもあったよね。

妹:
出生の秘密は全く思い出せないので、
単為生殖なのだといわれてもさっぱり驚かない……
スパイダー(モンキーボーイ)との恋愛話が、
ちょっとよかったね。
ただ彼女に最初から感情移入するわけでもないなー。
エイワに祈ってスパイダーに菌糸をめぐらせるのは、
かなり無理矢理なのでいまいちでした。
あと、つくづくキャメロンはデカい女が好きなのね。
キスシーンを見てそう感じた。

あと、なぜかエイワに頼みに行くシーンでは、
スパイダーと同じ身長なんよな。
わざとなのかなー。
イデアの世界ではみんな平等みたいな設定かしら。


宿敵:
カーネル(大佐)っていってたけど、
なんで主人公を追うのか全然覚えてないのだが、
まあT-2000みたいなもんかと見てればよし。

今回はスパイダーとの父子話と、
ファイヤー一族のエロ姉さんとの話があったので、
持ったかな。
しかしメインプロットである主人公との、
海兵隊時代の話が全然出てこないので、
なんのためにこの人は戦ってるのか全然わからんので、
たのしくなかったね。

エロ姉さんにクスリを盛られて、
「魂を見る」とか言われたのに、
何を見られたのか全然わからんのが、
脚本が下手だなーと思って見ていた。

たしかこのおじさん、
海兵隊で死んだ後に記憶をクローンに移植されたんじゃなかったっけ。
なぜお前は魂がないのだ?
俺にはないのさ、
というシーンがあってしかるべきだったのでは?
あるいは、
最初はなかったのだが、
生きてるうちに少しずつ魂が生まれている、
みたいにすればよかったのに。

稀代の悪役になりきれてないのでつまらん。
まあ全部T-2000と比較されちゃうからねえ。


エロ姉さん:
アフリカのズールー族みたいな一族の頭領のエロ姉さんは、
銃火器で興奮してるところがエロかったです。
しかしあの一族、どこで飯食ってるんだろう。
そしてなんで統率が取れてるんだろう。
そういう生活感がいまいちで、
エロ姉さんが一番エロかったのはファイヤーダンスの武器踊りだったので、
あの一族に女いなくね?
なんて思いながら見ていた。

クローンと青い肌の一族が交わるとどうなるんかね。
その青い肌の息子が4とか5に出るのかしらねえ。
なんか出てたけど出てただけみたいな役柄でした。

感情移入に値する物語はなかった。


スパイダー:
唯一の人間が感情移入に値する物語を持つ皮肉よ。
なんだかんだ息が止まって苦しいのは原始的だし、
それでもここにいるのはやめて、
人間のキャンプに帰るべきというのは劇的だし、
(その後の空賊に襲われる展開は、
展開のための展開でおもしろくないが)
宿敵の息子というのもドラマチックで、
首に下げた軍人のタグをもらって、
それで脱出口をつくるのも良いアイデアだったし、
第二ヒロインとのラブストーリーもあるしで、
一番美味しい役回りだ。

ただ、オープニングから考えて、
主人公の息子(弟)が今回の主役になるべきなのに、
完全に食ってしまったという、
バランスの悪さがあった。
トップシーンを切って、
マスクの息切れからはじまれば、
実はそれでよかったのかもしれない。


ずっと気になってる「モンキーボーイ」とか「少年」が、
とかいう設定なんだけど、
もういいオッサンじゃね?
あと体をつくりすぎてて、ゴリマッチョなのも気になるよな。
少年だったらジャニーズみたいに細い身体にしないと、
意味なくない?
たとえばT2のジョンコナーくらいならわかるけどさ。
これは役者と監督の問題だけど。



かように、
感情移入に値する太い話がなく、
単発のバラバラのエピソードが、
ただ羅列されるだけであったので、
なんだかまとまりのないものを見たなー、
という印象しかない。

すべてが有機的につながり、
怒涛のクライマックスへむけて収束していくべきでしょ。
最後の一撃を決めるのは、弟であるべきで、
それも勝手な行動の結果であるべきで、
父の判断を越えた何かをしてはじめて意味がある。
俺は間違ってたと言わせないと意味がない。

なんでそうしなかったのかは全然分からない。
エロ姉さんに夢中だったからかもしれない。
posted by おおおかとしひこ at 14:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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