以下、全部男だとして考える。話がややこしくなるので。
あなたが超絶イケメンな俳優だったとしよう。
ある脚本を渡された。
どの役をやりたいと思うか?
演技しがいのある、人間の本質に迫った役どころをやりたいだろう。
それこそが役者を人生の選択肢に選んだ理由だろう。
それが主役じゃない場合、その脚本は弱いのでは?
という話をする。
仮にあなたが超絶イケメンで、
スターウォーズ1(現在のエピソード4)の脚本を受け取ったとしよう。
顔出しがないにしても、
ダースベイダーの役をやりたいと思うんじゃない?
ルークスカイウォーカーの役をやりたいと思うかなあ?
まあ目立って主役だけど、
ダースベイダーのほうが役としてはおいしいんじゃない?
どっちが歴史に残るか考えたら、
あのシナリオでは黒騎士のほうでしょ。
ルークに一応見せ場はある。
二重太陽を見てたそがれる、序盤のシーンだ。
これをやりたいならルーク役は悪くない。
しかしそれ以降、中盤、終盤、
あまりルークは人間的な深みを感じない。
となると、ダースベイダーの顔出しを条件に、
あなたはダースベイダーの役を望むと思う。
スターウォーズ1ならまだ迷うかもしれないが、
2や3(現在のエピソード5と6)の脚本ならば、
ルーク役はやる気がしなくて、
ハンソロかダースベイダーだろうね。
つまりスターウォーズの脚本は、
主役に魅力がない、ということを言おうとしている。
もしあなたが超絶イケメンの役者ならば、
「機動戦士ガンダム」のどの役をやりたいと思う?
どう考えても主役のアムロだよね。
次点でシャアだろうけど、
アムロがもっとも人生の深くにいるからだ。
この深さに到達したい、とどの役者も思うに違いない。
ルークは浅い。人生に到達していない。
子供向けのヒーローにすぎず、
役者人生を賭けるには値しない。
あなたの脚本はどっち?
悪役のほうが主役より魅力的になってしまっている?
それとも、主役のほうが悪役より深く人生に到達している?
それを判定する方法として、
あなたが思い描く最高の、
それ以上の超絶イケメン俳優だと仮定して、
「どの役をやりたいか?」で判定するとよい。
話を分りやすくするために全部男を想定した。
超絶美人女優が、どの女の役を選ぶか?
で考えてもよい。
たとえばラブストーリーで男と女のダブル主人公だとしたら、
あなたが超絶イケメン俳優かつ超絶美人女優だと仮定して、
どっちの役をやりたいか?という想像をしてもよい。
つまりこれは、
脚本が誰を一番深く掘っているか、
を判定する方法だ。
脚本の出来を見る方法なわけ。
もし主人公の掘りが浅く、
敵役であるシャアのほうをやりたいのなら、
それは失敗した脚本である、ということだ。
アムロがルーク並みにしょぼくしか描かれていないぞ、
ということである。
(そういえば実写「あしたのジョー」は、
敵である力石のほうが魅力的だったね。
これは失敗脚本である)
実は敵役を描くほうが技術的には簡単だ。
破壊的で刹那的で、つじつまが合わなくてもいいからだ。
主人公のほうが技術的に難しい。
首尾一貫して、テーマまで背負い、
かつ人間的に魅力的に見えなければならない。
秩序が無秩序に勝利することを描くのは難しい。
無秩序が秩序を踏み倒していくのを描くほうが、
簡単なんだよね。
だから、主人公はなかなか魅力的になりにくい。
以前「シグルイ」の例を挙げた。
敵役であるところの伊良子のほうが、
主人公であるところの藤木よりもかなり魅力的に見えてしまっている。
だからラストは絶望的に終わるしかない、
かなりバッドエンドな後味の悪い作品だ。
これはこれでひとつの完成形だけど、
僕らが見たいのはこれではない。
王道を見たいのであり、邪道は人気が出ないのだ。
もちろん、文化として邪道は存在してよいが、
映画は王道くらいの観客を得ないと儲からないのである。
(もし漫画くらいコストが下げられるなら、
邪道映画はたくさん出る可能性がある。
ネットフリックスでつくられるオリジナル映画は、
今のところ邪道で目立つ戦略性で、
王道の映画館の牙城を崩す感覚だろう。
本来邪道では稼げないだけの予算を使って作られているが、
これは世界規模なら儲かる、という読みであろう。
あるいは、
同じテイストばかりになるのを避けて、
作品単体では損して、全体としては得を取る戦略かもしれない)
マスが見たいのは、
王道の主人公が、王道で世界を王道にするさまである。
邪道の主人公が、邪道で世界を邪道にするさまは見たくないのだ。
なぜなら、おそらく世界が邪道な部分が多いからだろう。
それは現実でたくさん経験しているので、
フィクションは王道であってほしいという無意識があると思う。
さて。
あなたが超絶イケメン俳優グループという複数人格だとして、
あなたの書いたストーリーのどの役をやりたいと思う?
みんな主人公をやりたい、と思わないといけない。
2026年02月20日
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