かなりの良作。相当つくりとしてしっかりしている。
脚本技術的に勉強になるので見たほうがいい。
ただしタイトルが悪い。
知らなかったら絶対見ない。
「オッ、『ウインドリバー』ってかっこいいな、
内容はしらんけどおもしろそう、見たろ!」
っていう人は、日本に一人もいないと思う。
せめて「ウインドリバー地区」「ウインドリバー居住区」「ウインドリバー村」
と、ネイティブアメリカン居住地区の話であることを明示するべき。
しばらくネタバレなしで続けます。
風の川というのはネイティブアメリカンの名付けた村の名前だ。
風も川も、この映画にはまるで関係ない。
(ほんとうは風の川のような素敵な土地から、
無理やり移住させられたのだろうか?
繰り返し語られる詩や、追い詰められたネイティブたちの表情から、
隔離地区に追いやられているような気がしたが、
これも本編にはあまり関係ない)
日本に置き換えれば、
北海道の北の方、網走とか、
東北のうら寂しいところがイメージだね。
それとウインドリバーが逆の意味で皮肉である、
というほどでは本編内ではなかったので、
このタイトルは不適切だ。
(アメリカの文脈では理解できても、
世界での文脈では不適切なタイトルであろう)
「ウインドリバーの悲劇」とか、
「氷の村」「白い村」
「沈黙の村」とか、
「白き狙撃者」とか、
「足跡が消える前に」とか、
本編に即したタイトルにしないのはなぜだろう?
僕は、配給側が無能だからだと考えている。
こんな良作を、
タイトルで惹かれないという理由だけで見られないのは、
ほんとうにもったいない。
「雪の中のネイティブアメリカンの村の殺人事件が胸糞だった件」
でもいいくらいだ。
とくに主役のジェレミー・レナ―のハンターぶり、
スナイパーぶりがすごい。
静かな役なのがとてもよくて、
のちのマーベルでホークアイに抜擢された理由は良く分らないんだけど、
この映画をみれば、その抜擢理由は分る。
スナイパー役がとてもいいからだ。
雪国を舞台にした犯罪劇といえば、
「ファーゴ」だけど、
たいてい「人には隠している裏側がある」
をモチーフとしている。
雪は静かに降り、
人々は家にこもるしかなくなる。
そこで秘密が生まれる仕組みだ。
それを殺人事件と謎解きだけに集中した、
ちょうどいい塩梅のチューニングだった。
落ちを見る限り、
これは法と正義に関する映画だともいえる。
以下ネタバレ。
過酷な自然がつねに逆境になるようにしてある。
雪国の人たちは寡黙だ。
口を開き、大げさにしゃべると、肺が凍るからだ。
(これはのちに使われる伏線になる)
だから何を考えているか分らないのか。
それとも、ただ黙して生きてるだけなのか。
それが分らないのが、この映画の魅力になっている。
主人公サイドにもつらい過去を設定して、
それを利用するのはこうした映画ではよくあるとだが、
ネイティブアメリカンの父とのラストシーンの静かな「友情」は、
とても良かった。
静かだろうが、激しかろうが、
それは人間なのだ、
というラストが胸を打つ。
とくに犯人を追い詰めたときに、
犠牲者と同じ処刑をしたのが印象的だったね。
目には目を、歯には歯を、という西部劇のような処刑だったのが、
とても良かった。
法では制御できないへき地の、
まだ人間が法を持つ前の法が良かった。
そういう意味ではダーティーハリーだよなー。
ネットが全地球を結んでしまってから、
こういう「正義」は通用しなくなっているからねえ。
脚本的には、
犯人の居住地に踏み込んでいくとき、
ノックしてから撃たれるまで、
「実は何が起こっていたか」
の回想インサートを延々やるのが新しかったね。
脚本上でこういう構成だったのか、
それとも編集でこうしたのかは不明だが、
秀逸な構成だったと思う。
そういえば主人公の妻の話、
どうなったんや。使っていない伏線だな。
あったけどカットしたんだろうな。
ネイティブアメリカンの区別がつかなくてさ、
殺された彼女と妻が一瞬区別つかなくてねえ。
まあ、回想シーンがわかればそれでいい、
という構成だったから助かったけどね。
そのあとの銃撃戦、遠距離からのスナイプが、
この映画の白眉であろう。
姿なき狙撃者の恐ろしいこと。
そしてそれがヒーローであるという瞬間は新しかった。
ホークアイに抜擢されるわけだよな。
脚本的な技術のもうひとつは、
コントラストだ。
セックス、どこに住む?真夏のクリスマスの話、そこに住みたい、
という最高の瞬間からの、
男たちが帰ってきてからの惨劇。
銃を構えあう緊張感から、
一回リセットしてからの、
最悪の銃撃戦。
このへんが抜群に上手くて、
こっちの感情が揺さぶられているのがすごい。
それもこれも、
静かな雪の場所、
というのがスパイスとして効いているわけだ。
静かから一転轟音になるのをうまく効かせている。
実話をもとにした話とはいうものの、
ネイティブアメリカン居住区と、
レイプのデータだけが事実で、
あとは創作であろう。
いくつかのレイプ事件を合成していたり、
居住区の様子は取材しているかもしれない。
広大な土地に警官6人ってやべえよな。
救急車が1時間かかる、
というのもリアルに怖かった。
撃たれたヒロインの、死の覚悟が胸に迫ったなあ。
(あそこがボトムポイントです)
生きててよかったけどさ。
その冗談もうまいよね。緊張と緩和が、
うまく描かれていたと思う。
こうした技術の吸収に、
とても良い映画です。
ファーゴより全然いいでしょ。
2026年01月28日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック

