「qwertyを離れて最適化された配列へ変えよう」
という話のときに、
多くの人のイメージには、
「唯一最高の最適解がある」になりがちではないか。
地獄を救うのは完璧な神、みたいな構図。
実際はそうではない。
100%完璧な神はいなくて、八百万の、
凸凹の神たちがそれぞれを救うみたいな構図になっている。
なぜか。最適解について考えよう。
大きな話で言うと、
1gramと2gramが矛盾するからだ。
1gramの設計理論では、
1文字単位の出現頻度を調査して、
キーボードの打ちやすさを数値化して、
そこに並べれば良い。
キーボードの打ちやすさが人によって異なるので、
そもそもこの時点で最高の最適化は存在しないことがわかる。
私の指にとっての最適化と、
あなたの指にとっての最適化は異なる。
バリエーションA、B、Cなんて生まれたら、
それはすでに○○配列ではなくなっていく。
それでも平均を取るなどで、
被験者が多ければ確率的に最適配置はできるかもしれない。
だが平均の罠があり、
「人類の平均の金玉は1であるから、
金玉1が収まるパンツが最適である」
という間違った結論になりやすい。
クラスタがはっきり分かれているなら、
その平均を取ることに意味がない。
それは今のところ大規模調査がないのでわからない。
世間を見る限り、
素人のそれ(A小指なんて打てるかよ!)から、
タイパーのそれ(全ての指は自由)まで、
ばらつきはかなり多そうだ。
そして、これと2gram設計は矛盾しやすい。
統計的2連接を調査し、
それを「打ちやすい2キーの組み合わせ」に順に当てれば、
原理的にはつくれそうだ。
だが30×30キー=900の組み合わせは、
全員同じか?傾向は同じか?
いくつかのパターンに類型化されるか?
については何もわかっていない。
人によって異なるだろうし、
もう物理キーボードが変われば、
たとえばロウスタッガードとコラムスタッガードで、
全然変わってしまうだろう。
30×30の調査でも大変なのに、
40×40とかどうすんのよ。
仮に「平均」がわかり、
その順に統計的2連接を当てれば、
数学的最適化か?
ここで1gramと2gramは矛盾する。
たとえばカナ配列でいえば、
一番出るのは「ょう」だ。
しかし「ょ」は1gram頻度で言えば1.4%、27番目のカナである。
1gramでは30キーの単打のギリ、
はしっこのほうで構わないワースト3、
たとえばZXCやPQ/あたりが妥当。
だが2gramではトップ1、
たとえばJKやJIになる必要がある。
この矛盾をどう解決するか?
が、カナ配列の設計だ。
トップ1はJKあたりにするとしても、
微妙頻度をどうする?
そして指は何を基準にする?
という話だ。
初心者基準とタイパー基準、
物書き基準と事務仕事基準で、
全く変わってきそうだ。
この矛盾やばらつきがあるおかげで、
「ここを落としどころとする」
と決めなければ決定できない。
あらゆる配列は、
基本的には自分が使う為に設計したものだ。
だから、似た人には絶賛されるが、
遠い人ほど批判点があると思う。
僕は親指シフトに批判的だが、
それなしでは生きていけない人もいる。
僕は素人の指だけど、
タイパーの為の配列もあろう。
薙刀式は長文、
たとえば1か月で10万字の本を創作することを想定しているが、
実務でそんなに書く人はライター業以外いないだろうし、
短距離の競技レベルのことは何も考えていない。
また事務仕事では定型文が多かろうが、
創作という世界は、前に使った語は使わない、
というルール(マナー?プライド?)でつくられるものだ。
だから、あなたはどの神様を信じますか?
という、八百万の神の状況になる。
唯一絶体神がいて、
この神だけ信じてれば良い、
というのなら話は分かりやすかった。
それが競技タイピングで1位を取り、
皆これに宗旨変えせよ、
だったら分かりやすかった。
だけど、人の手も、連接も、目的も違うものは、
バラバラの神を信仰するしかないと僕は思う。
最適化と言う人は、
数学の最適化問題について詳しくない人が多いのでは?
と思う。
現実の問題をよく表現する方程式について、
境界条件を与えて、その最大値または最小値を求める問題が、
最適化問題だ。
境界条件(前提条件)が変われば最適解も変わる、
ということを知らない人が、
唯一絶体神を求めるのではないだろうか。
創作文専用、競技専用、
長距離専用、短距離専用、中距離専用、
○○キーボード専用、
○○な手の人専用、
○○な文章を書く専用、
など、
色々あるべきだと思う。
だからこそ僕の主張は、
唯一絶体神はいないし、
qwertyを全員に強制するべきではない、
ということになる。
配列の設計の具体論はそれぞれある。
それも唯一絶対の方法ではないと思う。
機械計算するなら、
その評価関数の計算式と計算結果が妥当かどうかの評価もするべきだ。
(そして多くの機械計算配列では、
この計算式では最大値だった、しかない。
たとえばKLA最大値が唯一絶対の基準ではないと、
みんな薄々思ってるのにね)
そしてその評価の基準はなに?
が大事だと思う。
薬指が中指より長い人と、逆の人がいる以上、
その違い(発生時の羊水のホルモンバランスで決まるそうです)は、
配列の違いになると僕は思うのだが、
そんな議論すらされてない。
まあそれもこれも、
大規模調査できない、してないからよね。
そういう細かい、
しかし大局から見た議論があまりなされてないので、
「最適化しました!」で、
説得される人がたくさんいそうだ。
人は絶体神にすがりたがる(阿弥陀信仰)。
考えたくないからだ。
僕は、新配列が沢山生まれて、
「最強の配列はまだ決まっていない」というのが、
もっとも幸福な状況だと思う。
2026年02月23日
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