僕がこの長い長い小説の上巻を読み終えたときに、
おもしろすぎてつい手を合わせて漏らした言葉。
下巻を読み終えて、同じ言葉を漏らした。
ラストの怒涛の展開、たまらんかったよ。
極上のSF小説だ。
「三体」(読んでないけどおもしろいらしい)に匹敵する、
という評だけを頼りに、
ちょっと久しぶりに小説読んでみたろ、
と思って読んでみた。
最高だ。
今の日本映画にこれを実現する力はない。
今月末ハリウッド映画になるそうだ。
同じ原作者の「火星の人」の映画化に関わった脚本家だそう。
見に行くしかねえよな。
ネタバレなしで続けます。
上下巻で、
900ページくらいの大長編だ。
だけどよくよく考えてみると、
三幕構成になっていることに気づくだろう。
というか、あー、ここは重要ポイントだな、
と思った箇所は、
どちらも上下巻のちょうど真ん中あたり。
つまり、
第一ターニングポイント、
ミッドポイント、
第二ターニングポイントが、
しっかりある話になっている。
ネタバレを避けてそれを書き出すと、
第一ターニングポイント: ブリンプA
ミッドポイント: 船内を片付ける(上巻のラスト)
第二ターニングポイント: タウメーバの実験成功
といえる。
このことにより、とてもメリハリの効いた話になっている。
僕は大人になってから、
こんな長い小説を読んだ事がなかったけど、
体感としては3時間の映画を見たような感覚だった。
そうだな、RRRと同じくらいの、
おなかいっぱいの満足感だね。
ボトムポイントもしっかりあって、
最大の危機を乗り越えてからの第二ターニングポイントは、
拳を思わず握らざるを得ない。
そして最後の決断は涙なくしては語れない。
もう完全にハリウッド映画の構造をしてるんだよね。
でも「火星の人」の映画版はおもしろくなかった。
(公開タイトルは「オデッセイ」だったが、
僕はこれはクソタイトルだと思うので、
「火星の人」表記とする)
たぶんだけど、
小説「火星の人」(未読)のおもしろさって、
「1人ダッシュ村」のところだと思うんだよな。
(映画版でも一番面白かったのは、
じゃがいもをどうやって栽培するか、だったもの)
だってこの小説で一番面白かったのは、
「科学をどうやって宇宙探検に使うのか」
という工夫パートだったからだ。
いや、パートどころではない。
全編科学実験のおはなしだといっても過言ではない。
「数学や物理や科学を何に使うのかわからない」
なんてバカな事を言ってるやつは、
宇宙で冒険しないやつだ。
科学はこうやって使うんだ、
というのが行間全てに溢れてていて、
それが科学男子を夢中にさせる。
これこそアドベンチャーだ。
科学実験の真の楽しさがわかる、極上のエンターテイメントだ。
だから映画「火星の人」は失敗した。
その、1人ダッシュ村にもっと尺を割くべきだったのに、
1人がずっとそれをやっているのを怖がったのだろう。
この小説の映画化では、
下手なカットなく、
「全編ミッションクリアのための、科学実験という冒険」
という映画になってほしい。
知性による工夫の部分が、ほんまたまらんよな。
さて、相変わらず邦題を非難しておこう。
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の、
日本人にとっての情報量が0だ。
「TPC」(今適当にアルファベット3文字を並べた)と、
同じ情報量である。
もちろん内容を読んだ人には、
そうとしか言いようがないタイトルだとわかるんだけど、
未読の人にとって情報量0を投げるのはバカだ。
ちなみに「ヘイル・メアリー」はアメフト用語。
バスケにおける「ブザービート」と同じで、
時間ギリギリにダメ元で投げるロングパスのことだ。
ロングパス、ラストロングパス、
くらいにはうまく意訳して欲しかった。
僕なら、「16光年のロングパス」と、
SFであることを強調するかな。
「行ったきり帰ってこれない、
片道切符の16光年離れたタウ星へ派遣された、
宇宙船『ヘイル・メアリー』号。
地球滅亡の危機が迫っている中、
タウ星にそれを救う可能性があることがわかった。
主人公はその秘密を宇宙船内のラボで研究し、
成果をカプセルに入れて地球に返送しなければならない。
片道16年。
地球の科学の粋を集めても、
片道分の燃料と食料しか積めなかった。
それでも主人公はたったひとりで、
タウ星の研究をしなければならない。
人類を救うために」
という話だ。
その全体の人類的プロジェクト名が、
プロジェクト・ヘイル・メアリー。
だから本書はそれをタイトルにする気持ちもよく分かる。
アメリカ人ならみんな、
ヘイル・メアリーを知ってるから、
ラストギリギリのダメ元ロングパスであることはわかっている。
しかし日本人はそれを知らないのだ。
その、文化差を吸収するタイトルにするべきだろう。
この物語の面白さは、
実は第一ターニングポイント以降にあるんだけど、
重大なネタバレになるため、
このストーリーを楽しむ人のために伏せておく。
もう、ワクワクしてしょうがなかったよ。
科学ってほんとうにいいものですね。
あー、ひさびさにたのしかった!
読むのに4日かかったけど、
そんなの関係ねえよ!
できれば一気読みしたかった!
今人類につくれる、最上の物語の一本。
ぜひネタバレなしで読まれたい。
映画の予告編も見ないこと!
しょうもない日本映画とか、
しけたもん見てる場合じゃねえぞ。
2026年03月14日
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