2026年05月15日

【脚本添削SP2026】1: 応募原稿

さて、今年も始まります、脚本添削スペシャル。

応募原稿を見てみましょう。


今年の応募作品は、れおさんの一本のみでした。
うーん、最近少ないのが続くねえ。

ボコボコにされるのがみんな怖いのかしら。
それとももうみんな卒業して、
プロとして頑張っているのかしら。
レベルに応じて添削するので、
気軽に送ってくれてもいいんだけどなー。
それとも、
「完成させることが出来るのは、全体の1割以下」
の法則があるのかしら。


まあ、ということで、
完成させる人は少ないのだとしたら、
その人を鍛えたほうが全体の幸せになるかもしれないので、
今回も一本組手をやりますかね。

と思ったら、空手ものでした。

いじめっこ矯正カラテ道.pdf


結構読むのがしんどかった。
なぜなら、僕は武術に詳しいので、
「これは空手を取材していない」と分ってしまうから。

漫画などで適当に読みかじった空手やカンフーや格闘技などの何かが、
区別できずに混じっている感じでしたね。

全体にも漫画っぽくて、
実写映画想定だと考えると、
解像度が低いなーと感じました。


もっとも、
空手の流派や組手は多岐にわたるので、
知らない人が調べるのはかなり難しいジャンルになっています。

一応こういうものは、
実在する何かをそのまま使うか、
ファンタジー空手にするかの二択があります。

ファンタジーにする線引きの度合いにも色々あり、
まともに拳が顔面に入ったけど血一つ流れないものから、
波動拳が撃てるものまで作りえます。
(例、ドラゴンボールの天下一武道会)

ただ一応「空手」と名乗るならば、
現実にある空手を知ってから、
嘘をつくべきでしょう。


一応現実の空手の流派や組手ルールを分類してみます。
試合形式は大きく4つ。

伝統空手(糸東流、松濤館、剛柔流、和道流)
 寸止めルール
 防具付きフルコンタクト
フルコンタクト空手(極真会館、正道会館、白蓮会など)
 裸拳フルコンタクト(顔面禁止)
 グローブ空手(キックボクシングと同等)


まず有名なフルコンから。

フルコンタクト空手は伝統空手から別れた、
キックボクシングの影響を受けた空手です。
ローキックを主体に攻めます。
裸の拳の状態なので、
危険な顔面パンチは禁止、腹のみ。
だから接近して腹を殴りあうか、
離れて蹴りを打つかのゲームです。
ノックダウン制。

おそらくこれをイメージしてるのかな。
でもフルコンやってる女子なんてほとんどいないよな。
女子ボクサーより少ないだろうな。

掴みあり、投げありの大道塾ルール、円心会館ルールなど、
さらに細分化されるけど、まあそこまではいいか。

顔面ありのグローブ空手は、
道着きてるけど、中身はK-1なので、
あんまり題材としては面白くないですね。


一方伝統派空手は、
寸止め試合と防具付き試合があります。

寸止めは裸拳の状態で、
全部ありで寸止めだけをします。
剣道のように間合いが重要で、
前後の動きが速く、フェンシングに近いです。
触れば勝ちなのもフェンシング同様です。
だからスピードはあるが打撃が重くないのでは?
という批判がありますね。

防具付き試合は、
透明のセーフ面、胴、拳サポーター(薄手のグローブ)をつけて、
実際に殴り合います。
防具付きでKOとかほぼないので、判定で決まります。
ただ、痛くないから滅茶苦茶な動きになりがち、
という批判があります。

ビジュアル上面白いのは、
近隣格闘技の日本拳法で、
柔道着を着て(空手の道着は薄いが、柔道の道着は掴みで破れないように厚手)、
剣道の面と胴とグローブをつけ、
フルコンタクトで殴り合い、
蹴りも殴りもありで、
しかも投げも関節も認められているものです。
自衛隊で訓練されている、
なんでもアリ格闘技の走りですね。
(このあとアメリカからグレイシー柔術と総合格闘技がやってくる)


ここまでがまず下調べの段階。
それぞれでYouTube検索すれば、
いくらでも出てくるでしょう。

伝統派空手 寸止め 試合
伝統派空手 防具 試合
フルコンタクト空手 試合
日本拳法 試合

などで調べてください。
どれも体格や動き方が全然違う事がわかります。
いずれも女子は男子に比べて、
ちょっとショボイことが正直にわかります。
こればかりは遺伝子の問題でしょう。
とはいえ、
どこにそのリアリティを持ってくるかを考えないといけません。

そもそもなんでこんなにややこしく分かれているのかというと、
「顔を直接殴ると危険だから」に尽きます。

グローブをつけて直接殴るか、
防具をつけて軽い布で囲って直接殴るか、
直接殴らずに他は当ててもよいとするか、
一切当てないか、
の4択ということです。

漫画などでは、
このへんを適当に嘘をついてごまかせますが、
実写なので、
どういうリアルにもとづいた、
どの空手なのかを詰める必要があります。


「空手の試合」と言っているからには、
どのルールの試合かを決めないといけません。
(もちろんこれら以外の試合ルールを設定することは可能ですが、
あまり現実的ではないでしょう)

寸止めルールだと直接加撃がないので、
恐怖心がなく、女子がやりやすいと言われます。
しかし実際に加撃しないと、
勇気や地力が養えないので、
防具付き組手が推奨されます。

ただ、ある程度の実力がないと、
防具付きは単なる滅茶苦茶な喧嘩みたいになり、
空手の動きになりにくいという説はあります。

今回の、
乱暴な動きのヒビキと美しいさと子の組手は、
この防具付きの組手が妥当かと思います。

ただ、フルコン女子の友情、
という方がキャッチーかなー、とも思えます。
どっちもあるか。(役者がいなさそうだけど)


展開を考えます。

さと子の主張(テーゼ)であるところの、
「形がきれいなほうが良い」
というのは、
伝統派でこそ生きる主張ですが、
フルコンでそれを体現している人は少ないので、
映画にするなら、
それくらい現実から飛ばないと、映画として面白くないかもしれない。

あるいは、
リアリティある短編ということならば、
防具付き組手も部活青春ものというジャンルにもなりえる。

形と組手は両輪だから、
フルコンだとビール瓶で脛を叩いていじめるのは普通なので、
そういう過激な絵をよしとするかどうかですかね。


「美しさ」という点では、
手刀を持ってくるかな。
フルコンで手刀を実際に使っている人はいないので、
わりと面白い武器とビジュアルになるかもしれないです。
(フルコンルール上はOK、ただし中段のみだから効かなさそう)

背刀(手刀の裏の部分)を使って、
防具付き組手で勝ち上がっているのは見たことがあるので、
受け慣れていないマイナーな攻撃は、
逆に有効だったりします。
弧拳(手首の甲部分)とかマイナーで好きなんだけど、
マニアックすぎる題材。笑

なんで手刀?かというと、
ラストのハイタッチに使えるかなー、
と思ったので、このへんが妥当かしら。


ここまで考えて、
空手のリアリティ的に変なところを一個一個チェックすることにしますかね。
赤をまず入れます。
いじめっこ矯正カラテ道_空手の赤.pdf
だいぶ入ってるのが分るでしょう。
これらは、
ピアノを弾く人がピアノ映画に関して抱く疑問に似ているかもしれないです。
これだけ疑問符が湧いてしまうので、
ストーリーが頭に入ってこないんですよねー。
たぶん、「成立していない」と思えるレベル。


一端この空手的なリアリティを忘れて、
あとで再構築することにして、
じゃあ、どんなドラマがあるの?
ということに入っていきましょう。

空手がガワだとしたら、ドラマが中身になるはず。
posted by おおおかとしひこ at 08:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
待ちに待った脚本添削SPありがとうございます!!
今年も添削よろしくお願いいたします!!

私も他の方の脚本や添削を見るのが好きなので、もっと盛り上がって欲しいですねー……
Posted by 自称弟子のれお at 2026年05月15日 14:29
>自称弟子のれおさん

そうですねー。
相当レベル高いことをボランティアでやってるので、
もっと利用すればいいのに。

打たれ強いのもプロとして必要なので、
こうして鍛えてないとどこで鍛えるんだろ?
と思ってしまいますね。

ということで今年も本気出してます。
Posted by おおおかとしひこ at 2026年05月15日 14:35
空手って実際に殴り合わないものがあるんですね…初めて知りました
Posted by kyky at 2026年05月19日 20:51
>kykyさん

古くは剣術でも竹刀が発明される前までは、
木刀による型稽古が中心でした。
「それで強くなるの?」
という疑問はあったろうけど、日本刀で切り合うわけにいかないし。

空手においては、
FRPという軽くて丈夫なプラスチックの発明がなければ、
まだ型稽古中心だったんじゃないですかね。

総合格闘技でも、
ブルースリーの発明したオープンフィンガーグローブがなければ、
まだ顔面パンチ禁止でやってたかもですね。
(UWFは掌そこそこのみ認めてた)

「安全に試合する」は、道具の発達と関係がありますね。
元々ボクシングだってグローブ発明前は素手でやってたんだし。
(だいぶ死人や不倶者が出た)
Posted by おおおかとしひこ at 2026年05月19日 21:14
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