効率化というと、
今のものに無駄があり、それを突き詰めようというニュアンスになる。
しかし、
今のもので十分で、そんな細けえところに汲々とするのは大局的に意味がない、
という反発を招く可能性もある。
(反効率化の心理)
僕は、効率化をしたかったのではない。
手の一部になってないものを、
手の一部にしたかったのだと言える。
まず現在の僕のキーボードを見ればわかる。
キーが丸い。
パッと見碁石みたいになってるが、
碁石より柔らかめの素材でできている。
(ナイロンガラスビーズ入り。PA12GBによる3Dプリント。
DMM.make製。やわらかすべすべ)
これは、
キーの表面を、指を寝かせて指紋の部分でなでなでするためである。
人間の指の中で一番神経の細かいところは、
指先ではなく指の腹だ。
そこで触るのが手の一部としてキーボードを使うための、
必要条件と考えた。
こうやって撫でるように打つことを撫で打ちという。
打鍵は垂直に指を落とすのではなく、
絵具を指につけて絵を描く時のように、
水平に、まるく、撫でることへ変えるべきだ。
ちなみにこの時のスイッチの押下圧は30gに改造してある。
撫でるような繊細な動きに、
通常のキーの押下圧、55〜60gは強すぎる。
そして長時間打つのに向いてない。
そもそもこの押下圧に決まったのは、
ピアノが55〜65g程度にチューニングされてるからで、
ピアノを弾くときは腕の重さを使って、
ハンマーを叩き下ろさなければならないからだ。
デジタル装置であるキースイッチの中に、
重たいハンマーはない。
小さな金属切片が電気のオンオフかを検知すればいいだけだ。
腕の重さを使って文字を書く人はいない。
55〜65gのスイッチ
(多くのメンブレン、パンタグラフキーボード)
を使う人は、まず書くことの本質からはずれた、
べらぼうな錘をつけた道具を使わされている。
30gの軽さは、
リアルフォースの30gモデルで体験できる。
ヨドバシなど大きめの店に置いてあるかもしれない。
「文字を軽やかに書く」ことは、
まずこれくらい軽い筆圧を使うべきである。
次に注目するポイントは親指の三角のキーだ。
ななめ側面に丸みが突き出している特殊な形をしている。
これは、4本の指に対して横についている親指が、
撫でる角度に調整されている。
親指の側面、爪の横部分でしか、
今のキーボードは打鍵することができない。
これは親指の機能を十分に使っていない。
親指の最も神経の繊細な部分は、
側面ではなく指紋部分だ。
だからそこで撫で打ちできるように調整されている。
なお親指キーは30gより軽い、12gに改造されている。
スペースキーのホールド(SandS)を多用する、
薙刀式専用だ。
この形は、
ことばを線でつなぐ薙刀式を、
手の流れで360度方向を、
撫でるように打てる為の流線型である。
車や飛行機の流線型は前に進む為に空気で削られた形をしているが、
手の一部になったキーボードは、
360度方向に手の動きで削られた形になっているべきだ。
これがこの、
指紋部分で撫でる形をしたキーボードである。
さて。
僕のキーボードは36キーしかない。
薙刀式の30キーとスペースキー(左右の親指に両方ある)と、
残り4キーの構成だ。
薙刀式専用の最小限キーボードといっても過言ではない。
(残り4キーはモデファイアとレイヤーキー。
ちなみにWinとAltは捨てている。
様々な操作は、薙刀式に入っている編集モードでほぼ事足りる。
プログラミング用記号など、日常文で使わない用途に、
残り3キーを使う。残り1は現在研究中の漢直用)
格子配列である。
幾何学的配置のため、標準運指が取りやすい。
ロウスタッガードは横方向に歪むし、
コラムスタッガードは縦方向に歪むので、
キーの空間関係が取りづらい。
言葉に対して線を撫でるように使う薙刀式に、
360度対応するには、
格子配列が幾何学的で扱いやすい。
左右分割である。
写真は分かりやすさのため左右のキーボードを寄せているが、
実際は肩幅に開いて、ややハの字に置く。
自然な位置で使うためである。
手の一部になるまで、
極限の形をしていなければならない。
それは、
薙刀式がことばを線でつなぐ、
一筆書きのような運動をする配列だからだ。
点をロールオーバーしていく従来の論理配列と異なり、
薙刀式はアルペジオを撫で打ちし、
左右交互打鍵でも撫で打ちの感覚で取る。
だから、両手で一筆書きでことばを書く感覚になる。
すべての要素はこのためにある。
このキーボードと薙刀式が一体化して、
一筆書きという運動を導く。
そこまでして、ようやくデジタル入力は、
手の一部になりえる。
もちろん、手の内が異なれば、別の形がありえる。
あなたの手の内は極限まで突き詰めているだろうか?
その形にキーボードは極限まで合ってるだろうか?
あなたの手の動きの流線型に収束しているか?
僕は突き詰めた。
なぜならタイピングが下手だから、
なるべく楽をしたいからだ。
僕のqwertyローマ字はめちゃくちゃ遅い。
530字(変換後)/10分だ。
僕はタイピングが下手なのだ。
だから、この手を十分に使って、
極限まで楽をするために、
ここまで流線型(物理的形状、軌跡の最小化)を、
つくってきた。
結果、1500で文章を書いている。
これは効率化ではない。
やってもやらなくても現状は変わらないが、
やるとハックになるというものではない。
手の一部をつくりだすことだ。
手が日本語を書けるようにすることだ。
この形になるまで10年近く磨いた。
最近、やっと手の一部に吸い付くようになってきた。
筆や、車や、飛行機のようなものは、
淘汰を経て今の形になっている。
キーボードは誰かが形をロックしたので、
流線型になる淘汰を経ていない。
物理形状も、動線軌跡もである。
だから僕が自分の効率を3倍になる程度に、
削りとってやった。
他の人の手の内のことまでは分からない。
だけどあなたの手の内に、
それは本当に吸い付くレベルで合ってるのか?
このキーボードは、
来る6/6の天下一キーボードわいわい会(@六本木)という、
自作キーボードに興味のある人たち300人が集うイベントで、
自由に触れるようにしておきます。
興味のある方は探してください。
例年、入って左の奥の方にいます。(当日場所取りなので不定です)
この時にノートPCつないで薙刀式体験会もやりますので、
ぜひ触った感触を体験してください。
キーボードは手の一部になるべきだ。
筆や刀やバイクが、
体の一部になる形をしているように。
2026年05月12日
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